「こめかみがピクピク動く…」大丈夫?こめかみ・首筋の動脈拍動異常が教える脳循環リスク|医師解説

「こめかみがピクピク動く…」大丈夫?こめかみ・首筋の動脈拍動異常が教える脳循環リスク|医師解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-10-22

鏡を見ていて、ふと「こめかみがピクピク動いている」「首の横の血管がやけに浮き出ている」と気づくことはありませんか?実はこれ、単なる“ドクドク感”ではなく、血管の状態や血流の勢いを映す重要なサインなのです。医師が解説します。

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こめかみ・首筋を走行する動脈拍動について

こめかみのあたりには「側頭動脈」、首筋には「頸動脈」という、頭や脳へ酸素と栄養を送る大事な血管が通っています。

とくに頸動脈は“脳の大動脈”ともいえるほど重要で、ここを流れる血流がスムーズでなければ、脳に十分な酸素が届かなくなります。

通常、健康な人でも拍動自体は感じ取れることがありますが、最近になってやけに強くなった、左右差がある、脈打つ部分がしこりのように盛り上がっている――こうした変化には要注意です。

これは単なる血流の変動ではなく、「血管の硬化」や「血流の乱れ」、あるいは「動脈瘤(どうみゃくりゅう)」などが関わっている可能性があるからです。

また、ストレスや緊張、カフェインの摂りすぎでも一時的に拍動が強くなることがありますが、休んでも収まらない・痛みを伴う場合は、何らかの血管異常のサインかもしれません。

体の“表面”で感じる拍動は、体の“内部”で起きている変化の小さなヒント。

見逃さずに耳を傾けてあげることが大切です。

こめかみ・首筋の動脈拍動異常が教える脳循環リスク

動脈の拍動異常は、実は脳の血流に関わるトラブルの“前触れ”であることがあります。

たとえば、側頭動脈炎
これは血管の炎症で、こめかみに痛みや腫れ、熱感を伴います。
放っておくと、視力障害や脳梗塞を引き起こすこともある怖い病気です。

また、頸動脈の狭窄(きょうさく)も要注意。
これが進むと、一時的に脳への血流が止まる「一過性脳虚血発作」や、本格的な「脳梗塞」につながるリスクがあります。

「最近、片側の首だけドクドクする」「首を押さえると拍動が強くて違和感がある」と感じる人は、一度頸動脈エコー検査を受けてみるとよいでしょう。

これは、超音波で血管の厚みや詰まり具合を調べる検査で、痛みもなく数分で終わります。

首
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さらに見落とされやすいのが、高血圧や動脈硬化による拍動異常
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に負担がかかり、徐々に硬くなります。その結果、拍動が強く感じられるようになったり、血管が浮き出て見えるようになったりします。

「最近、頭が重い」「顔がほてる」「目の奥がズキズキする」などの症状も一緒に出ている場合、脳の血流バランスが崩れているサインかもしれません。

脳は、体の中でもっとも酸素を必要とする臓器。
少しの血流の乱れでも、疲れやすさや集中力の低下、記憶力の衰えといった変化が出ることがあります。

つまり、「拍動の違和感=脳のSOS」というケースも珍しくないのです。

まとめ

こめかみや首筋の拍動は、誰にでもある自然な生理現象ですが、その“リズム”や“強さ”に変化が出たときは、体が何かを訴えているのかもしれません。

  • 拍動が左右で違う
  • 痛みやしこりを伴う
  • 脈が強く、見た目にも分かるほど浮き出ている
  • 頭痛やめまいを伴う

こうした場合は、自己判断せず、早めに脳神経内科や循環器内科を受診するのが安心です。

血管の健康は、見た目や感覚に現れることがあります。

こめかみや首筋の“ドクドク”は、単なる血流の音ではなく、脳循環のバランスを映すサイン。
放置せずに、小さな違和感のうちに気づくことが、重大なトラブルを防ぐ第一歩です。

予防
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生活の中でできる予防もあります。

  • 塩分を控え、血圧を安定させること。
  • タバコをやめ、適度な運動を取り入れること。
  • ストレスをためないこと。

どれも基本的なことですが、血管を若く保つためには欠かせません。

「最近ちょっとドクドクが気になるな」と思ったときこそ、体を見つめ直すチャンスです。

沈黙のうちに進む血管トラブルを、拍動のリズムがそっと教えてくれているのかもしれません。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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