未経験でも性への好奇心は強かった…いないことにされてきた「48歳で初体験をした私」が今思うこと

 未経験でも性への好奇心は強かった…いないことにされてきた「48歳で初体験をした私」が今思うこと
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女性向けセルフプレジャーアイテムやデリケートゾーン用ケアアイテムを展開している「iroha」。公式アンバサダーである「iroha部」では、レビューのSNS投稿やファンミーティング、iroha取り扱い店舗を訪問し、レポート記事を制作するなどの活動を行っています。iroha部2期生のみるさんにiroha部の活動の振り返りや、考えの変容について伺いました。

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ずっと性の話をしてみたかった

——iroha部に応募した理由をお伺いします。

私は今50代で、お堅い家庭で育ったことや、年代的なこともあって、性に関して興味があったものの、ずっとオープンに話すことができませんでした。地元は田舎で、周囲のヤンキー界隈は性に関してわりとオープンだったのに対し、自分はオープンにしたいのにできなくて、羨ましさと苛立ちの感情が入り混じっていました。

もうすぐ50代を迎えるころになり、性に関する話をしたくて今のSNSアカウントを作成したものの、iroha部に入るまでほとんど発信はしていなくて。iroha部を見つけたときは、性についてオープンに話せる場があることが衝撃的でした。2期生の募集が始まる情報を見て、性についてポジティブに考えたり伝えたりする場を求めていたのと、自分も発信したいという思いから応募。私の場合、48歳まで処女だったという少し特殊な状況でもありましたので、iroha部で発信することで 高齢処女の悩みを持っている人にアプローチしたいとも思っていました。

——iroha部の活動で印象に残っていることはありますか?

プライベートでは、家族にも仲のいい友達にも性の話をすることは皆無だったので、「性に関して話したい」という同じ思いを持った人たちと出会えたことが大きいです。特に最初のファンミーティングで、みなさん躊躇なく楽しそうにセルフプレジャーやセックスの話をしていたのが衝撃的で……。今まで全く想像のつかない世界だったので、強く印象に残っています。

——他の活動はいかがでしたか?

毎月irohaのアイテムが送られてきて、SNSにレビューを書くのですが、伝え方で大変さを感じたものの、iroha部に入らなければ自分が手に取ることはなかったかもしれないアイテムに出会うことができて新鮮でした。

有楽町の「阪急メンズ東京」の中にある「TENGA STORE TOKYO」へ取材に行ったこともあります。周りにアパレル系のブランドが並んでいる中で、突如「TENGA STORE TOKYO」が現れるのですが、雰囲気に馴染んでいて、女性一人でも入りやすかったです。

お店の一角にirohaのコーナーがあって、おしゃれにディスプレイされているんです。ぱっと見アダルトグッズだとわからないので、手に取るハードルも下げられていると感じました。

あと、私が所属した2期生は「セルフプレジャーマップ」というワークショップも行って、セルフプレジャーで得たいものや、得られた満足感が一人ひとり違うことがわかりました。私自身がセルフプレジャーをしようと思うのは、なんとなく性欲が高まったときでしたが、ワークショップを通じて、寝つきをよくするためとか、人それぞれ違うことがわかりましたし、自分のことも他人のことも知ることができて楽しかったです。

——iroha部の活動を通じて、自身の考え方や心境に変化はありましたか?

私は48歳まで処女で、恋愛経験や性経験がないことをずっとコンプレックスに思っていたんです。悩み自体が恥ずかしくて、打ち明けられていなくて。今のアカウントを始めたときも、最初は48歳まで処女だったことをプロフィールに書けませんでした。

自分みたいな人は世の中にはほとんどいないと思っていたのですが、iroha部の活動を始めてから、20代から同世代まで、同じように処女であることに悩んでいる人がいることがわかりました。

iroha部で活動したことで、SNSで発信することのハードルも下がり、同じような悩みを持っている人に向けてメッセージを発信できたことで、自分自身を肯定することができました。自分の性や身体について、世間や他人の意見ではなく、自分で判断することが大事だと思えるようになったことも大きな変化です。

性経験がなくても、好奇心は強かった

——48歳で初体験をしたことについて、どのようなお考えだったかお伺いしてもよろしいでしょうか?

年齢的に一生性経験をしないままかもしれないと思っていました。でも性に関する興味はかなりあって、セルフプレジャーも好きで若い頃からしていたんです。セルフプレジャーとセックスの大きな違いは、人と肌が触れ合うことだと思います。なので、セックスはどれだけ気持ちいいのか、セルフプレジャーとどう違うのか興味はあって、知らないまま生涯を終えたくないなって。

同時に、高齢処女であることの恥の感覚があったのも事実です。でもそれよりも好奇心が強かったので、交際相手でも、恋愛感情があるわけでもない、セックスを目的とした相手と初体験する選択をしました。

「初めては好きな人とじゃないと後悔する」という言葉をよく聞きます。私も経験する前は「後悔するかもしれない」とは思っていたのですが、結果的には後悔していません。むしろ大きな荷物を自分から降ろせたような感覚でした。

それに、そのとき好きだと思っている相手と初体験をしたとしても、お互いに経験がなくてうまくできなかったり、アダルトコンテンツをお手本にしたような行為をされて思っていたのと違ったりと、必ずしもハッピーなものだと限らないとも思うんです。そういう話も、あまりオープンになっていないことですよね。夢見るような初体験なんて、もしかしたら漫画やドラマだけの世界かもしれません。

もちろん、様々なリスクを考慮し、危険な選択を避ける必要はありますが、自分の行動に責任を取れる年齢になっているならば、自分の身体や心のことは自分で決めたらいいと私は思います。

性経験がないけれども、性に対して好奇心の強い女性は実際にいるんです。でも女性がそういう風に思うことは「はしたない」と言われ、いないことにされていると思います。女性の性をタブー視する風潮から、本当はセックスへの好奇心があるのに、隠していたり、自分でも気づいていなかったりする人もいるかもしれません。

性体験
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——女性の場合、“処女信仰”がある一方で、ある程度の年齢までに性経験がなければ恥ずかしいとされる風潮があるように思います。

その二重の基準は男性主体の視点ですよね。「経験がないと恥ずかしいんだから、早く済ませておきなよ」=「俺なら協力するよ」と、若い女性とセックスしたい男性が言ってるんじゃないかって感じるときがあります。

最近は恋愛や結婚をしない選択肢も可視化されてきて、「性経験がないことは恥」という感覚は薄れつつあると思いますが、まだまだ残っています。それはもしかしたら私たち昭和世代の価値観のせいかもしれません。

女性側も興味があって、積極的に同意したうえでの行為ならいいと思うのですが、恥の感情だけでセックスをする必要はないと断言したい。するかしないか、いつどんな相手とするかは、コンプレックスを刺激されることによってではなく、自分で決めてほしいです。

以前、ヨガ教室へ行っていたのですが、先生から「自分が今感じていることを大事にしましょう」と言われていました。それと同じで、好奇心があるならその気持ちを尊重してあげてもいいですし、興味がないのでしたら、恥の感覚に影響されなくていいと思います。

——50代に入ってどのように性を楽しんでいますか?

私は独身で子どももいなく、特定のパートナーがいないので、他の同世代の多くの方とは状況が異なるとは思うのですが……実は48歳で初体験して以降は奔放に楽しんでいます。

でも当初は「してはいけないことをしている」といった後ろめたさもあって、性を楽しんでいる自分を受け入れられていなかったんです。でもiroha部で活動してから、自分の性を楽しみたい気持ちを肯定できるようになりました。

私のしていることに対して、色々と思う人がいるとは思うんです。私ぐらいの年代だと、性欲を持つこと自体が恥と見られることもありますが、性欲がある人はいる。自分自身と向き合い認めていくことが、50代からの性の向き合い方として大事なことなんじゃないかなって思います。そして、性に関する価値観のアップデートを、私たち世代から発信していくことが、若い人たちへのメッセージになるのではないかと思っています。

【プロフィール】

みる

iroha部二期生。「ランドリーボックス」と「コクハク」にて執筆中のライター。
いろいろ拗らせた50代前半独身。
“mirae.”というペンネームでは性に関するコラムなどで執筆活動中。
性に関しては奔放で貪欲で、アプリもアダルトグッズもアダルトな動画も大好き。好きなことをとことん追求したくなる所謂オタク。

●X(旧Twitter):@milch_honig_

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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