【更年期ヨガ】思春期に匹敵するほどの強烈なホルモン変化「更年期」を快適にするヨガ

 【更年期ヨガ】思春期に匹敵するほどの強烈なホルモン変化「更年期」を快適にするヨガ
Jessie Ford
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ヨガを通じて変容を受け入れる

コヴニーは更年期の症状を感じ始めたときに、何年もかかる壮大な旅路に乗り出した。女性たちが自分の人生をコントロールする力を取り戻すのに役立つプログラムを生み出そうとしたのだ。マインドフルネスと認知行動療法に、アーユルヴェーダ、呼吸法、瞑想を組み合わせたプログラムである。ただ、そのような方法は、ホルモン補充療法を用いるかどうかにかかわらず、もっと大きな治療の枠組みの一部としてとらえるべきものであり、一人ひとりの症状と担当の医師らの提言に応じて実施すべきものであるとコヴニーは強調している。コヴニーは2020年に、自らが知るかぎりでは世界で初めて、更年期に的を絞ったヨガの指導者養成講座を立ち上げた。
コヴニーは更年期を、さなぎから抜け出たり羽が生え変わるような大きな変容の時であると見ている。そして、閉経に至る期間を冬眠にたとえている。女性は閉経という大きな出来事を迎える前の数年間に、消化の働きが鈍くなり、頭がぼーっとし、体重がゆっくり増加する。しかし、春を迎えた生き物と同じように、時が来ればお腹をすかせた状態で元気に眠りから抜け出すのだ。
女性はひとたびここを抜け出して閉経後の段階に入ると、それまで背負っていた多くの責任や期待から解放されたと感じるようになるとコヴニーは語っている。コヴニーはさらに、この変容を最大限に活かすためには、「直感的な自己と再び結びついて内面を観察し、自分自身の幸福と健康のためにならない思考、癖、行動を見極めて手放すべき」であると指摘してる。
コヴニーは人生の第三幕が約束している驚くべき出来事を女性たちに知ってほしいと考えて、更年期に的を絞ったヨガの指導者養成講座を丁寧につくり上げた。コヴニーはヨガのシークエンスを、更年期の時期に応じて違った形で現れるアーユルヴェーダドーシャと結びつけている(ドーシャについては下の「ドーシャ別の更年期ヨガ」を参照)。
コヴニーはワークショップの冒頭で、更年期に生じる生理学的変化に関する最新の研究結果を、女性を力づける観点から紹介している。そしてそのうえで、そのような変化と心の健康との関連を説明している。

つながることによって生まれる力

コヴニーの取り組み方は科学によってしっかり裏付けられている。数件の研究によって、更年期の女性がヨガのポーズと呼吸法を定期的に行えば、気分が高まり、うつ状態が解消され、明るい展望を抱けるようになることがわかっている。
また、ヨガでは不愉快な症状があるときに心拍数と呼吸を操ることを学ぶこともできる。これを知っていると、体がほてる前に起きる心の動揺が始まったときに役に立つ。前述の研究では、定期的なヨガの実践と生活の質の改善との間に正の相関関係があることが示されている。
女性が更年期を乗り越えるうえできわめて重要な助けになるのが、リストラティブヨガと呼吸法と瞑想である。さらに、集団でヨガを行えば、科学的な効果も得られるようになる。
コヴニーによれば、ヨガスタジオや更年期のワークショップに集まって互いの経験を語り合っている女性たちは、そこで単に会話をしているのではないという。人は互いにつながり始めると、愛情や幸福の感覚を促すホルモン、オキシトシンが放出されるようになる。私は世界中に感染症が蔓延しているなかでも、毎日ボート漕ぎをしてエンドルフィンによる幸福感を得ていたが、このとき同時に、同じ運動をしている世界中の同年代の女性とつながっていたのだ。中年以上の女性たちが集まるとオキシトシンの放出量が増加することから、女性たちは目に見えない愛情ホルモンを使って実際にお互いの不調を治しあっていると考えることができる。
女性同士のつながり、バンザイ!

HOT FLASH ヨガという解決法
更年期の女性がヨガのポーズと呼吸法を定期的に行えば、気分が高まり、うつ状態が解消され、明るい展望を抱けるようになる。

ドーシャ別の更年期ヨガ

更年期ヨガの考案者ペトラ・コヴニーによれば、ヨガとアーユルヴェーダは更年期の症状を緩和するのに役立つものであり、更年期の症状は(代謝のタイプを示す)3つのドーシャのバランスが崩れた状態であると見ることができるという。誰にも優勢なドーシャがひとつあって、この大きな変容に対する反応のしかたに影響を及ぼしている。栄養、運動、ヨガ、睡眠を軸にして定期的にドーシャのバランスをとることは、更年期の総合的治療のなかのひとつの有益な要素となる。

カパ(水/元素)

カパが過剰になると、無気力、気分の落ち込み、代謝機能の低下につながる。動的なハタヨガのポーズを10~30秒間ホールドすれば、筋肉と骨の力が維持され、気分の落ち込みが解消されてやる気が出るようになる。

ヴァータ(風/心)

ヴァータが過剰になると、不安、パニック発作、集中力の低下、疲労、打ちのめされた感覚につながる。ヴルクシャーサナ(木のポーズ)のような立位のバランスポーズが、心を集中させるのに役立つ。また、息を吸う、息を止める、息を吐く、息を止めるを同じ長さで繰り返す呼吸法(Box Breathing)のような呼吸法をしっかり地に足をつけて行えば、大地に根を下ろしていると感じられるようになる。

ピッタ(火/体)

ピッタが過剰になると、体のほてり、寝汗、怒り、攻撃性、いらいらにつながる。陰ヨガを試してみよう。陰ヨガは許すこと、感情を解放すること、変化に身をゆだねることを促す。プロップを使ってリストラティブヨガをするのもよい。体も心も支えられていると感じられるようになる。

文●レイチェル・スレイドは、ボストン在住の作家、編集者。ベストセラー小説『Into The Raging Sea』(Ecco,2018)の著者。同著は米紙『ニューヨークタイムズ』の優れた本に選ばれ、同じくアメリカの雑誌『アウトサイド』では2018年夏のベストブックスの一冊に挙げられた。

イラスト●ジェシー・フォードは、イギリス人のイラストレーター。色鮮やかな作品が、オリオンブックス、ランダムハウス、米紙『ウォールストリートジャーナル』、英紙『ガーディアン』などに掲載されてきた。イギリス、ホヴの海岸沿いに位置する日当たりのよいスタジオで、作品の制作を楽しんでいる。

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by Rachel Slade
illustrations by Jessie Ford
translation by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.78掲載

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