脊柱・仙骨…適切な姿勢で「背面」を守る|ためになる解剖学的知識

 脊柱・仙骨…適切な姿勢で「背面」を守る|ためになる解剖学的知識
Michele Graham 
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動いてみよう

正しい姿勢を理解できたら、ポーズを行うときに2つの重要な問いかけをしよう。「体のどこかに空間を必要としている部分はあるだろうか」「支えを必要としている部分はあるだろうか」。両方とも必要なこともあるだろう。

最初に空間をつくり出してみよう。動きを小さくして、ポーズを小さめにするのだ。座るときに背面を真っ平らにしたり丸めたりすると、背面を伸ばしたときによく痛みを感じる。これは立っているときに脊柱が正常な曲線を描いているだけで後屈のように感じる可能性があることを意味する。このような人にはターダーサナがいつの間にか後屈になっている。

次に、体が支えを必要としている部分があるか確認してみよう。たとえばセツバンダーサナ(橋のポーズ)では、床から骨盤を上げずに、肩甲骨の下部から腰までをたたんだブランケットで支えてみるとわかる。姿勢が良くない人や脚と臀部の筋肉を使えていない人は、座位のポーズで背面の損傷を引き起こしやすい。腰痛や椎間板損傷がある場合は、座位のポーズを避けて、同等の効果を得られる別のポーズを行わなければいけない。

たとえば、ハムストリングを伸ばすには、パスチモッターナーサナ(座位の前屈)ではなくパーダーングシュターサナ(足の親指をつかむポーズ)を選ぼう。椎間板損傷や仙腸関節機能障害がある場合は、前屈とねじりを避けよう。特に座位のねじりのポーズは避けなければならない。立位にねじりを加えるほうがはるかに安全である。

たとえば、マリーチャーサナ(賢者マリーチのポーズ)は、壁に椅子の背をつけて座り、上体をねじって後ろの壁に手をついて練習できる。座位のねじりのポーズでは、ポーズの形を保とうとして仙腸関節を締めてしまう。

バーラドゥヴァージャーサナ(賢者のポーズ)は、骨盤が床に固定されないかぎりは安全な座位のねじりのポーズである。ゆるやかな後屈によって、椎間板の痛みと機能障害が緩和する可能性がある。シャラバーサナ(バッタのポーズ)は、背面を強化して腰への負荷を軽減するのに役立つかもしれない。徐々に力をつけていくために、このポーズを非対称に練習してもよい。

脊柱の主要な構造

脊柱の主要な構造に注目すれば、首と背中と腰の動き方がよくわかる。

椎間板と椎間関節 (図の緑色の部分)が、可動性のある各分節を隔てている(ただし、第1頸椎/第2頸椎は除く)。椎間板は椎体と椎体との間に空間をつくり、可動性を生み出している。一方、面関節である椎間関節は、動きの方向性を支配している椎体どうしを結びつけている。一般に、椎間関節の垂直の方向性が高くなるほど、側屈と回転の可動域は小さくなる。椎間関節には、脊柱の部分ごとに特有の方向性がある。

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illustration by Michele Graham 

頸椎

椎間関節はほぼ水平。この方向性のために頸椎(首)の可動性が高くなる。そのために首は、独立した動きとしても連動した動きとしても、屈曲、伸展、側屈、回旋が可能になる。

胸椎

椎間関節はほぼ垂直。この方向性のために回旋性が高くなるほか(回旋を制限しているのは胸郭)、屈曲と若干の伸展も可能になる。

腰椎

椎間関節は垂直。この方向性のために屈曲性と伸展性が高くなり、側屈性と回旋性が低くなる。頸椎、胸椎、腰椎、仙椎のそれぞれの境目(第7頸椎/第1胸椎、第12胸椎/第1腰椎、第5腰椎/第1仙椎)では、隣接する上の面関節と下の面関節の方向性が異なるため、ほかの部分よりも方向的な可動性が高くなって、損傷しやすくなる。

レッスンへの応用

生徒と講師が向き合って話すことが、背面の損傷の予防につながる。

生徒ができること

椎間板ヘルニアの診断を受けている人や、放散痛、しびれやチクチクする感じ、または慢性的な筋肉の張りを感じる人は、レッスンを受ける前に講師に伝えておこう。「第5腰椎と第1仙椎の間の椎間板が膨張している」というように、問題のある位置を確認しておくとよい。しびれとチクチクする感じは、神経の損傷を示していることがあり、体の機能に影響が及ぶ可能性もあるため特に注意が必要だ。

いつから症状があり、いつ資格のある医療従事者に診断を受けたのかも伝えよう。診断を受けていない人は、ヨガの種類を問わずレッスンを受ける前に医師の診察を受けよう。特に、痛みが激しい場合や3カ月以上続いている場合は受診が欠かせない。ヨガの講師が正式な医療従事者でないことを覚えておくべきだ。ヨガを指導している医療従事者は、医療行為の倫理的かつ専門的な境界線を守っており、マットの上で診断を下すことはない。

講師ができること

自分の生徒が痛みやしびれやチクチクする感じがあると伝えてきたら、その言葉どおりに受け取ろう。どう進めていくべきかわからなければ、自分が知っていることを教えたうえではっきり丁寧にレッスンへの参加を断るか、ポーズに基づく治療に詳しい経験豊富な指導者にその生徒をゆだねなければならない。いずれにしても、解剖学と運動学とポーズに基づく治療について学び続けよう。「教育は人に力を得る」。とことん学ぼう。

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by Mary Richards
photos by Christopher Dougherty
illustrations by Michele Graham
model by Olivia Hsu,Rob Loud
translation by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.68掲載



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