便秘や血中コレステロールの高さが気になる方へ。今話題の「発酵性食物繊維」について管理栄養士が解説

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「便秘がなかなか改善しない」「血中コレステロールの高さが気になる」という方には、発酵性食物繊維が役に立つかもしれません。名前は聞いたことがあっても、発酵食品や一般的な食物繊維との違いがわからない方も多いでしょう。そこで今回は、発酵性食物繊維とは何かを管理栄養士が解説します。食物繊維の種類まで意識して、体の内側から健康をサポートしていきましょう!

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発酵性食物繊維ってなに?

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腸内環境を効率よく整え、健康を支える成分として近年注目されているのが「発酵性食物繊維」です。発酵性食物繊維とは、腸内細菌の働きによって発酵する食物繊維のことを指します。

食物繊維と一言で言っても、ペクチンやイヌリン、βグルカン、アラビノキシランなど、その種類は多種多様。食物繊維は胃や小腸で消化吸収されずに大腸まで届き、体にさまざまな影響を与えることが知られています。そのひとつが、腸内細菌のエサになることです。

とくに腸内細菌に利用される過程で発酵し、「短鎖脂肪酸」が作り出されるものが発酵性食物繊維と呼ばれています。

発酵性食物繊維と発酵食品の違いは?

私たちの身のまわりには、味噌や醤油、納豆、ヨーグルト、チーズなど、さまざまな発酵食品があります。発酵食品とは、微生物の働きによって成分が変化し、味わいや保存性、栄養価が高まった食品のことです。

発酵食品のなかには、腸内で善玉菌として働く乳酸菌やビフィズス菌を含むものがあります。これらの発酵食品を食べて菌を直接摂取すると、腸内の善玉菌が増える可能性があります。

一方で、発酵性食物繊維は善玉菌のエサとなる成分のこと。発酵食品と発酵性食物繊維はどちらも善玉菌の増殖をサポートする点で共通していますが、そのアプローチが異なるといえます。

一般的な食物繊維と発酵性食物繊維に違いはあるの?

食物繊維にはいくつかの種類があり、その働きに応じて分類が可能です。腸内で発酵しやすいかどうかという観点で考えると、発酵性と非発酵性(難発酵性)に分けられます。

非発酵性食物繊維に分類されるからといって、決して体の役に立たないわけではありません。たとえば、非発酵性食物繊維であるセルロースには、便のかさを増やして腸を刺激し、便通を改善する作用が期待できます。

食物繊維とは、消化吸収されず大腸まで届く成分の総称です。とくに、腸内で発酵しやすい性質をもつものを発酵性食物繊維と呼んでいるのです。

発酵性食物繊維が体にもたらす作用

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発酵性食物繊維には、次のような働きが期待できます。

・腸内環境の改善
・腸管のバリア機能の維持
・血中コレステロールの低下

発酵性食物繊維は善玉菌のエサとなり、腸内環境を整え、便秘などお腹の不調を改善することが期待できます。さらに、発酵性食物繊維をエサとして利用する際に作られる短鎖脂肪酸にも、腸内を酸性に傾け、悪玉菌が増えにくい環境にする働きがあります。

短鎖脂肪酸の働きは、それだけではありません。短鎖脂肪酸の一種である酢酸は、体内に侵入した病原菌やウイルスを排除する「抗体」の産生を促すと考えられています。その働きにより腸管のバリア機能が整い、感染症にかかりにくくなることが期待できます。

また、血中コレステロールを低下させることも、短鎖脂肪酸の働きのひとつです。短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸は、肝臓でのコレステロール合成を抑制する作用があり、結果として血中コレステロールが改善されると考えられています。

現在、短鎖脂肪酸とさまざまな病気との関係についても研究が進められています。発酵性食物繊維とそれをもとに作られる短鎖脂肪酸は、健やかな体づくりに役立つ成分といえるでしょう。

発酵性食物繊維が多く含まれる食品

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発酵性食物繊維は、次のような食材に多く含まれています。

・穀物(オートミール、大麦、全粒粉など)
・豆類(あずき、大豆など)
・いも類
・きのこ
・海藻類
・野菜
・果物

腸内細菌は、種類ごとにエサとなる発酵性食物繊維が異なります。そのため、特定の食材だけでなく、さまざまな食材を組み合わせて食べるのがおすすめです。

ただ「食物繊維を摂る」のではなく、もう一歩踏み込んで食物繊維の種類まで意識してみると、より効率的に体調を整えられるかもしれませんね。発酵性食物繊維を活用して、腸から健やかな体をつくりましょう。

【参考文献】
内藤裕二. 健康の土台をつくる 腸内細菌の科学. 日経BP. 2024.
近藤しずきなど. プロバイオティクス細菌による血中脂質改善作用. 腸内細菌学雑誌, 24巻, 4号, 2010.
原博. プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果. 腸内細菌学雑誌, 16巻, 1号, 2002.

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