子どもの「好き」が学びにつながる場所|熊本市にあるオルタナティブスクールCHITTAの実践


2025年春、熊本市北区に誕生したオルタナティブスクールCHITTA(チッタ)。「まなぶをえらぶ。」をコンセプトに、子どもの興味や好奇心に寄り添った教育を実践しています。午前は基礎学習、午後は選択型の習い事というユニークな構成で、子どもたちの「やりたい」を尊重するCHITTAの学びのスタイルを紹介します。
「まなぶをえらぶ」──CHITTAの教育理念
CHITTAは、学校に通いづらさを感じる子どもや、既存の教育の枠に収まりきらない子どもたちに向けて、「自分らしい学び」を実現できる場として設立されました。
理念はシンプルで力強い。「まなぶをえらぶ。」。学びは与えられるものではなく、選ぶものだという考え方です。
公式サイトではこう記されています。
「子どもが自分の気持ちや興味に正直になり、学びを“自分ごと”として捉えられるようにしたい」
この想いのもと、CHITTAは子ども一人ひとりの「やりたい」という気持ちを起点に、学びを組み立てていきます。
午前:基礎学習
CHITTAの午前中は、国語・算数(数学)・英語・理科・社会という5教科の基礎学習を行う時間です。学年の枠に縛られず、子どもの進度や理解に合わせて学びをサポートしていきます。
使用する教材は、教科書だけに限りません。生活の中にあるテーマや、子どもの関心に基づいた探究学習も取り入れられています。
「たとえば“お金”をテーマにした回では、社会・算数・家庭科など複数の視点を横断しながら学習を進めます」(スタッフ談)
答えを覚えるだけの学びではなく、「なぜ?」「どうして?」と問いを立てる力を大切にしているのがCHITTAの特徴です。
午後:「やりたい」に応える習い事プログラム
午後になると、CHITTAの空気はがらりと変わります。子どもたちはそれぞれの「やりたいこと」をもとに、選択型の習い事プログラムに取り組みます。
プログラムは、ギター・ヨガ・ダンス・農業体験・ボードゲーム・ファッション研究・プログラミング・アートなど、多岐にわたります。
子どもたちは、自分だけの時間割を作って活動していきます。好きなことをとことん追求できるこの時間が、CHITTAの最大の魅力だといえるでしょう。
「『失敗してもいい』という空気の中でチャレンジする子どもたちの姿は、本当にたくましいです」(運営スタッフ)
自由であることは、決して放任ではありません。スタッフは「選ぶこと」「続けること」のサポート役として寄り添いながら、子どもたちの「自分で決める力」を育んでいます。

スタッフに多様性を。ロールモデルとの出会い
CHITTAでは、スタッフの多様性も大切にしています。教員経験者だけでなく、デザイナー、エンジニア、ミュージシャンなど、異なるバックグラウンドを持つ大人たちが学びを支えています。
この多様性は、子どもたちにとっての“将来のヒント”となります。
「昔はサラリーマンだったけど、今は農家をやっている」 「音楽が趣味だったけど、今は子どもと一緒に作曲している」
そんな人生の歩き方を間近で見られること自体が、生き方の“教材”になっているのです。
保護者とともにつくる「第三の居場所」
CHITTAは、「家庭」「学校」につづく“第三の居場所”を目指しています。そのため、保護者との連携も非常に丁寧に行われています。
入学前の個別面談に始まり、定期的なフィードバックや保護者参加のイベントも開催。単なる学習支援にとどまらず、家庭とCHITTAがチームとして子どもの成長を見守る体制が整えられています。
また、将来的な進路や資格の取得も柔軟に支援しています。
「“この子はこのままで大丈夫だ”と思える場所を見つけてもらえたら嬉しいです」(運営代表)

地域とつながる学び
CHITTAは地域とのつながりも重視しています。イベント出店など、教室の外での実践的な学びも豊富です。
こうした活動を通じて、子どもたちは社会との関わり方や、他者との関係性を自然と身につけていきます。
「学校」という枠の外にあるリアルな世界とつながることで、学びはより“自分ごと”になっていくのです。
おわりに
子どもたちの個性が尊重され、好奇心がそのまま学びへとつながる場所──それがオルタナティブスクールCHITTAです。
CHITTAでは、「学ぶことが楽しい」「失敗してもまたやってみよう」と思える環境が日常として存在しています。それは、決して特別なことではなく、「子どもを信じて任せる」という当たり前の営みによって支えられています。

既存の学校に合わなくてもいい。自分のペースで、自分のやり方で、生きていける。
そんな安心感が、CHITTAという居場所には満ちています。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く