【こころ】春は怒りの季節|怒りの感情をなくすのは無理?臨床心理士が解説する「怒りの対処法」

 【こころ】春は怒りの季節|怒りの感情をなくすのは無理?臨床心理士が解説する「怒りの対処法」
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南 舞
南 舞
2021-04-19

東洋医学では春は『怒り』の感情が湧きやすいと言われます。入社や転勤、異動、入学、クラス替えなどの環境の変化により何かとストレスが溜まりやすいこの季節、怒りの感情との上手な付き合い方を臨床心理士がアドバイスします。今日は2回目、『怒りをコントロールするためのゴール設定は?』というテーマで一緒に考えていきましょう。

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怒りの感情をなくすのは無理!?

前回の記事で、怒りとの付き合い方で大切なことは『問題を知る』『現実的な目標を設定する』『対処法を実践する』というステップを踏むことであるとお話ししました。今回は2段階目【現実的な目標を設定する】について触れていきます。『怒りをなくしたい』『怒りをコントロールしたい』と、いろんな方法を試されている方も多いと多います。でも、ちょっと待って。『なくしたい』とか『コントロールしたい』って実はとても抽象的な目標です。『怒りをどのようにコントロールしたいのか』『怒りをなくすために何が必要か』など、もう少し掘り下げて考える必要があります。目標は具体的であればあるほど、取り組みやすいし、ゴールにも近づきやすいですよ。

怒りの対処には具体的な目標を

怒りの時間を短くする

前回、怒りを記録し、怒りを客観的に見てみるという方法を紹介しました。その記録を見て、『けっこう怒っている時間多いかも』と感じた方は、まずは怒りの時間や回数を減らしていくことを目標にしてみると良いかもしれません。例えば、平均して1日5回ほど怒っているのだとしたら、それを2〜3回にする、段々と減り始めたら怒りの回数を1回にするなど今の自分の状況に応じた目標設定をしてみましょう。

怒りの時間を別のことに置き換えられないか考える

記録をもとに、1日の中で怒っている、イライラしている時間がどれくらいあるのかを見つけたら、その時間で何ができるか、その時間を何に使いたいか考えてみましょう。自分の好きなことをする、家族や友人と楽しいことをする、以前から興味のあった習い事に行ってみるなど、意外といろんなことができるかもしれません。

人間関係の見直しをする

怒りの原因が人間関係の中で起こる、あるいは特定のコミュニティにいると怒りが増幅するようであれば、『この人と付き合うのは自分にとってどうなのか』『このコミュニティは自分にとって必要なのか』と1度見直しても良いかもしれません。完全に離れるのが難しくても、今まで会っていた頻度を減らしていくことで、距離を置いてみると、怒りに対する見え方も変わっていくでしょう。

怒りって実は大切なもの?

怒りの対処を考える上で大切なことは、『怒りはなくすものではなく、うまく付き合っていくもの』という視点を持っておくことです。怒りと聞くと、『なくす』『悪いもの』『敵』など、ネガティブワードが浮かびがちですが、実は大切な感情のひとつ。怒りの感情があるからこそ、自分にとって怖いもの、脅威になるものを目の前にしたときにはセンサーが働き、行動することで自分の身を守っています。なので、怒りを排除するというよりも、『怒りは自分の生活の一部であり、今もこれからも共に生きていくもの』と考えていくことの方が、感じるストレスが少なくてすみますよね。次回は、怒りに対してできる、具体的な実践法をご紹介します。

参考文献 Ronald T. Potter-Efron, Patricia S. Potter-Efron著 堀越勝,樫村正美 訳(2017)『30分でできる怒りのセルフコントロール』金剛出版

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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