膝の「過伸展」とは?理学療法士によるアーサナ過伸展チェックポイント
女性の柔軟性と競技特性
一般に、男性より女性の方が関節が柔らかいとされています。一説によると、ホルモンが関与しているとされており、月経周期の一部の時期において関節の不安定性が高まるとの報告もあります。確かに、女性の妊娠後期にはリラキシンというホルモンが分泌されて、分娩に備えて関節や靭帯が緩みます。このことからも、月経周期のホルモン変動によって関節の柔軟性に影響を与えることは不思議ではありません。
また、水泳選手やバレリーナ、新体操選手に膝の過伸展が多く見られます。水泳の場合、繰り返されるキック時のフィン動作で、膝は常に完全伸展し、その伸展方向への過剰なストレスが積み重なることで、膝の過伸展が強くなっていくのです。この過伸展は、競技にはプラスでも、傷害発生の観点からはマイナスになります。膝周囲の筋力不足や疲労が起こり、また老化などにより関節の異常な可動域による防御力・適応能力が低下した際には、逆に傷害を起こす可能性が高くなってしまいます。
「膝」の過伸展
では、ヨガの時の膝の過伸展についてお話します。膝の過伸展は、「反張膝」(はんちょうひざ)ということもあります。膝が後方に反ってロッキングしている状態のことをいいます。膝の参考可動域は、屈曲130°、そして伸展0°です。この伸展0°よりも膝が反った状態が過伸展です。膝の過伸展の状態を続けていると、下記のような状態を引き起こす可能性があります。
・膝の靭帯や半月板の損傷
・膝関節の脱臼や変形
・膝の痛み
・股関節や足関節の機能低下(膝の不良アライメントが、隣接した関節への負担を増大して、股関節や足首の不調へと波及します)
・立位でのバランスが取りにくくなる
・体幹機能が低下して姿勢が崩れる
・脚の筋力低下
・血行が悪くなり疲労やむくみが起こる
まず、自分の膝が過伸展かどうかをチェックしてみましょう。ダンダーサナ(杖のポーズ)で膝をしっかりと伸ばそうとしてください。その時に踵が床から浮いたら陽性です。
これではちょっと判断しにくい方は、紐(ヒモ)を使ってチェックします。ヨガベルトでもメジャーでも何でも構いません。写真のように片脚を椅子や台に乗せて、その膝をしっかり伸ばしつつ、そけい部から足首の正面にかけて、紐をピンと張るようにあてます。膝が紐に触れずに、写真のように離れている場合は陽性です。
ちなみに写真のモデルの私は少し過伸展気味なので、過伸展の例としてちょうど参考になると思います。ヨガのアーサナでは特に、
・ウッティタートリコナーサナ(三角のポーズ)
・パールシュヴォッターナーサナ(側面を強く伸ばすポーズ)
の2ポーズで注意が必要です。これらのポーズのように、立位で膝を伸ばした状態で前の脚に体重が乗りやすいポーズは、より過伸展を起こしやすいです。ポイントは、前脚だけでなく後ろ脚にも体重を半分ずつ分けて乗せる意識で、かつ前脚の膝を少し曲げたポジションで保つことが重要です。
・ウッティタートリコナーサナ
・パールシュヴォッターナーサナ
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