「ダメな親と思われたくなくて叱っていた」フクチマミさんが「叱る依存」を手放して見えてきた親子関係

『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)より
『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)より

「叱ることは子どものため」そう信じて悩みながら子育てをしてきた親は多いのではないでしょうか。『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)を描いたフクチマミさんも、かつてはそのひとりでした。効果的ではない「叱る」ことを手放して見えてきた景色について、フクチさんに伺いました。

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周囲の目を気にした「叱るパフォーマンス」

——本作の元となった村中直人さん著『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)(以下、元本)を読んだきっかけから教えてください。

書店に並んでいるのを見て気になっていたところ、ちょうど『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』(KADOKAWA)の中で叱ることについて描こうと思っていて「叱るはいいけれど、怒るは良くないよね」というトーンで描こうかと思っていたんです。ところが「する側として叱ると怒るを分けているつもりでも、受け手としてはそんなに違いがない」ということが書かれていて衝撃を受けて、考えを改めました。

——親としての立場、または叱られた経験の中で、今回描いたことと重なった部分はありますか。

「叱らないことを叱られる」という部分です。私が子どもに対して叱るときは、「ダメな親だと思われたくない」という気持ちが強くて、「この状態で叱っても意味がない」と思いつつも、「私は親としてちゃんとやっていますよ」と周りに見せるために、叱るパフォーマンスをしてしまうことに悩んでいました。

それから、ワンオペで追い詰められて余裕がなかったり、よその子と比べて不安な気持ちになっていたときに、八つ当たりのような叱り方をしていたこと。「助けて」とは言えないけれど「私、こんなにいっぱいいっぱいなのわかって」というヘルプの意味を込めて、大きな声で叱りつけていたことがありました。後から罪悪感として強く残るもので、苦しくて、どうにかしたいと常々思っていました。

ただ同時に「叱ることは子どもたちのためであって、叱らなくなったらこの子たちはどうなってしまうんだろう」という不安がすごく強かったんです。「叱ることを手放したら、子どもたちが無法者になってしまうかもしれない」という不安が強かったところに、元本で村中さんが「叱ることには大して効果がないから、本当に成長させたいとか、正しい行動に導きたいなら、別の方法もありますよ」と書いてくださっていて。はっきり言ってもらえたことに、すごくホッとしたんです。

叱り続けることをやめたら子どもが心を開いた

——お子さんとの関係はどう変わりましたか。

村中さんは「危機介入での叱ることは効果がある」とおっしゃっていて、でもその後に危険性を理解させるために叱り続けることは効果がないから、「叱ることをスパッとやめることが重要」とおっしゃっていたんです。その応用で、子どもに改善してほしいことがあるときに、「あなたはいつもそうなんだから、この間もこんなふうで……」と過去を持ち出して責め続けるようなことはせずに、「こうしてほしい」と端的に伝えて、あとはさっとその場から離れるようにしました。これを繰り返していくうちに、子どもが私の目を見て話してくれるようになったり、いろいろな話をしてくれるようになったんです。閉じていた扉が開いたような感覚でした。

当時は上の子が中学生、下の子が小学校高学年だったので「子どもたちが思春期になったから話さなくなったのかな」と思っていたのですが、それだけではなかったと思います。もちろん年齢的にお友達との関係が大きくなって、気持ちの共有相手としての親の比重は低くなってくる時期ではあったのですが、そのうえ私が「これをしなさい、あれをしなさい」とずっと言っている。そうすると「うるさく言われたくない」という理由で、「もうママには何も言わない」となっていた部分もあったんだと気づきました。しつこく攻撃はされないという安心感が子どもたちの中でしっかり培われると、こんなにも変わるということを実感しています。

——具体的にはどんな声かけを減らしたのでしょうか。

「宿題した?」「歯磨きした?」ですね。私が叱っているつもりがなくても、子どもたちにとっては「これやった?」「これしなさいよ」と言うのは、全部「叱る」に感じられてしまうみたいです。子どもたちからは「ママは本当にグチグチうるさいから」と言われました。子どもたちからしても、「わかっているけれど、今は気分じゃないから言わないでほしい」ということみたいです。それでもつい言ってしまうのは、「ちゃんと母親としての責務は果たしていますよ」と自分自身に証明して、自分の不安を解消するためだったんだと思います。

村中さんは「どこから来たのかわからない正義」という表現をよく使っていらして。「『子どもが宿題をちゃんとやらなくて先生に怒られたら、私がダメだと思われるかも』というのは私の不安であって、この子の問題ではない」と、「こうしなきゃ」と思っている枠の形自体を問い直せるようになると、「あれはもうやった?」「こうしなきゃダメじゃない」と子どもに言うことは、自ずと減ってくるんだと思います。

あと私が叱っているつもりがなくても、トーンによって子どもは叱られていると感じることもあると知りました。子どもから「語尾を可愛くして」と言われたので、「使ったコップを運んでピヨ」みたいな感じで話すこともあります(笑)。一緒に生活していて何も言わないのは無理なので、子どもたちが嫌な気持ちにならない言い方をヒアリングしています。

——一方で、本気で伝えたいときは、真剣なトーンで話すという使い分けもされているのですよね。

そうですね。本当に必要なことで、真剣に伝えたことに関しては、「○○して」と言っても罪悪感や後悔は残らないんです。自分の不安やイライラが乗ってしまっているときは、やっぱり罪悪感を覚えるので、自分の罪悪感を指標にして、あとから振り返ることも大事かもしれません。

『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)より
『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)より

「だから言ったでしょ」ではなく、後始末で支える

——伝えたことをお子さんがやらなかったときに、「だから言ったでしょ」と言いたくなる場面もあると思います。

「ほら、ママが正しかった」みたいにはなりたくないですし、目的は本人にその行動をしてもらうことなので、「言ったでしょ」と言うことが効果的だとはあまり思えないんです。

子どもをネガティブな気分にさせて行動を変えさせることをしないように、気を付けています。子どもは基本、自発的に「これをやろう」と思えたときにしかやらない、という認識になってきたので、「じゃあそのときを待つか」とか、「後押しするために何ができるか」という方向にエネルギーを使うようにしています。

たとえば娘たちに「歯磨きしなさい」と言ってもあまり聞かず、雑な歯磨きしかしなくて、虫歯がすぐできるんです。歯は一生物なので、本当はもっと意識高く頑張らせたほうがいいのかもしれませんが、それでも虫歯ができたことに対して叱ることはしていません。これは賛否が分かれるかもしれませんが、うちではそうしています。

「歯は大切だよ」とは伝えますが、本人たちが大切だと思えるまでは、歯医者を予約するとか連れていくとか後始末のサポートにエネルギーを使うようにしています。本人たちが「銀歯が嫌だな」「歯医者に行くのが面倒だな」とか、働くようになって「歯医者にかかるお金がもったいないな」と思うようになれば、自分で気を付けるようになると思うんです。

——頭ではわかっていても、望ましくない叱り方をしてしまうことはありますか?

完全に手放すのは難しいと感じることはあります。私自身、先日、子どもに痛いところを突かれて、久々に子どもを「叱る」というか、「怒って」しまいました。ただ、そこで「大きな声を出しちゃってごめんね。でも私はこう思ったんだ」と伝えられるといいのかなと思っています。「仕方ない」と終わらせるのではなくて、叱ってしまった後のコミュニケーションも含めて、トータルでどういう関係性を作っていきたいか考えていく。子どもにとって親は権力を持っている側ですから、なおさら意識したい部分です。

※後編に続きます。

 

『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)
『もう叱りたくないと思ったら読む本――子育て世代の新常識・マンガ〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)

【プロフィール】
フクチマミ

マンガ家・イラストレーター。
「わかりにくいものを、わかりやすく」をモットーに“実はよくわかっていないこと”を取材し紐解いて伝えるマンガを多数刊行。
共著に『おうち性教育はじめます』シリーズ、『マンガでおさらい中学英語』シリーズ(以上、KADOKAWA)、『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち』(バトン社)、著書に『マンガで読む妊娠・出産の予習BOOK』(大和書房)、『晩ごはん症候群』(主婦の友社)ほかがある。

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