「何を着るか」には、その人の本音が表れる?心理師が解説する服選びと自己理解の関係
何を選んで身につけるかには、そのときの自分が映し出されています。心理師が自身の服の選び方の変化を振り返りながら、ものを選ぶ行為と自己理解の関係を考えます。
服の好みは自分を映す鏡
どんな服を選ぶかには、そのときの自分が求めているものや大切にしていることが表れます。私自身も、時期によって服の選び方が大きく変わってきました。振り返ると、中学生の頃は友人と似た服を着て、仲間と一緒にいる安心感を求めていました。高校から大学にかけては、周りとは違う服を選び、自分らしさを出そうとしていました。20代からは、自分の生活や体になじむ心地よさを重視するようになりました。そして今は、大量生産の服を選ぶことに抵抗を感じ、丁寧に作られた服を選びたいと考えています。デザインや素材に加えて、生産地等を見て選ぶようになりました。
持ち物は「自分の一部」になる
消費者研究者のラッセル・ベルクは、人が持ち物を自分の一部として捉えることを「拡張自己」と呼びました。人は持ち物を通して、自分を表現することがあります。特に思春期は、自分が何者かを模索する時期です。どのグループに属しているのか、誰とどう違うのかを、服を通して周囲に示すことがあります。友人と同じ服を着ることも、あえて違う服を選ぶことも、自分の立ち位置を表す行動です。年齢を重ねて自分がどういう人間かが分かってくると、周囲にどう見せるかより、自分が心地よいか、納得できるかが選ぶ基準になっていきます。
手間をかけて作られたものを大切にしたくなる理由
手作りの製品には作り手の愛情がこもっていると感じられ、同じ製品でも大量生産品より価値が高く評価されることが、マーケティング研究で示されています。これはハンドメイド効果と呼ばれています。また、愛着のあるものほど、人は丁寧に扱い、長く使い続けます。手入れをするほど愛着が深まり、愛着があるからまた手入れをする、という循環が生まれると考えられます。誰かが手間をかけて作った服ほど、洗い方や保管の仕方に気を配り、丁寧に扱っている人もいるのではないでしょうか。
価値観に沿って選ぶ
心理学者のティム・カッサーらは、人生の目標を内発的なものと外発的なものに分けて研究しています。お金や外見、社会的な評価を重視する外発的な目標より、自己成長や人とのつながりといった内発的な目標を重視する人の方が、心の健康が良好な傾向があります。ものを選ぶときも、人からどう見られるかを基準にするより、自分が大切にしていることを基準にした方が、選んだものに納得しやすいと考えられます。私が服の作られ方を気にするようになったきっかけのひとつに、大量生産の服の製造過程で強制労働の問題が報じられたことがあります。自分の価値観と矛盾しないように、選ぶ基準を変えていく場合もあります。
選ぶことで、自分が見えてくる
ファストファッションには、ファストファッションの良さがあり、どんな服を選ぶかに正解はありません。大切なのは、自分が何を選び、何を選ばないかに目を向けることです。その積み重ねには、自分が何を大切にしているのかが表れています。次に何かを買うとき、なぜそれを選ぶのか、なぜ別のものを選ばないのかを考えてみると、自分の基準や価値観が言葉になっていきます。選ぶ基準が変わってきたと感じたら、それは価値観が変わってきているサインかもしれません。ものを選ぶ行為は、自分を知るための手がかりになります。
参考文献
Fuchs, C., Schreier, M., & van Osselaer, S. M. J. (2015). The handmade effect: What's love got to do with it? Journal of Marketing, 79(2), 98–110.
Kasser, T., & Ryan, R. M. (1996). Further examining the American dream: Differential correlates of intrinsic and extrinsic goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 22(3), 280–287.
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