「年のせい」と「認知症」はどう違う?医師が教える、家族が気づきやすい“初期サイン”
「さっき聞いたことを、また聞いてくる」「約束した予定をすっかり忘れている」——親のそんな姿に「もしかして認知症の始まり?」と心配になることはありませんか? 実は、年齢による自然な物忘れと、認知症による物忘れには、いくつかの違いがあります。さらに、認知症の初期には物忘れだけでなく、料理やお金の管理、性格など日常生活のさまざまなところに変化が現れることも。家族が見逃したくない初期サインについて、医師が解説します。
「年のせい」で片づけていい物忘れ、ダメな物忘れ
「最近、人の名前が出てこない」
「何を取りに来たのか忘れてしまう」
「昨日の夕食が思い出せない」
年齢を重ねると、こうしたことは誰にでも起こります。
実際、物忘れが増えたからといって、すぐに認知症というわけではありません。
大事なのは、「忘れること」そのものよりも、忘れ方です。
例えば、知人の名前が出てこなくても、しばらく考えて「ああ、○○さんだった」と思い出せるなら、加齢による物忘れの可能性があります。
一方で、知人に会ったこと自体を忘れてしまう、同じ話を何度も繰り返す、忘れたことそのものに気づかない。
こうした変化が増えてきたら、少し注意が必要です。
認知症は「記憶」だけの病気ではない
認知症というと、「物忘れの病気」というイメージが強いと思います。
でも実際には、記憶だけではありません。
時間や場所が分からなくなる、判断力が落ちる、段取りができなくなる、言葉が出にくくなるなど、さまざまな認知機能が低下します。
さらに重要なのが、「生活に支障が出ているか」という点です。
多少の物忘れがあっても、日常生活を普通に送れているなら、必ずしも認知症とは限りません。
家族が最初に気づきやすいのは「同じことを何度も聞く」
家族からの相談でかなり多いのが、これです。
「母が同じことを何回も聞くようになりました」
「父がさっき話したことを、また話しています」
本人は一度話したことを覚えていないため、同じ質問や話を繰り返します。
もちろん、疲れている時や忙しい時にも起こります。
ただ、それが以前と比べて明らかに増えている場合は、一度確認したほうがいいでしょう。
ケース①「予定を忘れる」70代女性
70代女性のケースです。
以前は手帳を使いながら、病院や友人との予定をきちんと管理していました。
ところがある頃から、予定を入れたこと自体を忘れるようになりました。
家族が「来週、病院の予約があるよ」と伝えても、数時間後にはまた「いつ病院だった?」と聞く。
最初は「年齢のせいかな」と思っていたそうです。
しかし、こうしたことが繰り返されるようになり、受診したところ認知機能の低下が見つかりました。
ケース②「料理の手順がおかしくなった」60代女性
もう一つ、家族が気づきやすい変化があります。
それまで料理が得意だった60代女性が、突然、いつもの料理をうまく作れなくなりました。
味付けを間違えるだけなら、単なるうっかりかもしれません。
ところが、「何から始めればいいのか分からない」「いつも使っている調理器具の使い方が分からない」といった変化が出てきた。
これは単純な物忘れとは少し違います。
「今まで普通にできていたことが、うまくできなくなる」というのは、家族が気づきたい重要なサインです。
「財布や鍵をなくす」だけでは判断できない
「財布をどこに置いたか分からない」
「鍵が見つからない」
これだけで認知症と判断することはできません。誰でもあります。
ただし、認知症の場合には、「自分で置いた場所を忘れる」だけでなく、置いたことそのものを覚えていないことがあります。
さらに、「誰かに盗まれた」と強く思い込むようになることもあります。
ここまで来ると、単なる年齢による物忘れとは少し違ってきます。
「お金」の変化は家族が気づきやすい
意外と見逃せないのが、お金に関する変化です。
例えば、今まで家計をしっかり管理していた人が、支払いを忘れるようになった。
同じ商品を何度も買う。
通帳やキャッシュカードの管理が難しくなる。
こうした変化は、認知機能の低下が生活に影響し始めているサインかもしれません。
「性格が変わった」も大切なヒント
「最近、母が妙に怒りっぽくなった」
「以前は社交的だった父が、外出しなくなった」
こうした変化も見逃せません。
認知症では、記憶だけではなく、意欲や感情、社会性にも変化が出ることがあります。
もちろん、環境の変化やストレス、睡眠不足、うつ状態などでも性格は変わります。
だからこそ、「性格が変わった=認知症」と決めつけるのではなく、ほかの変化と合わせて見ることが大切です。
「本人が困っているか」だけでは判断しない
ここは家族の方にぜひ知っておいてほしいところです。
認知症の初期では、本人よりも家族のほうが先に異変に気づくことがあります。
本人は、「別に困っていない」「そんなことはない」と感じていることもあります。
だから、「本人が物忘れを気にしていないから大丈夫」とは限りません。
受診したほうがいいのはこんな時
- 以前と比べて明らかに物忘れが増えた。
- 同じ質問や話を何度も繰り返す。
- 約束や予定を頻繁に忘れる。
- 料理や買い物など、今までできていたことが難しくなった。
- お金の管理がうまくできなくなった。
- 道に迷うことが増えた。
- 性格や意欲に大きな変化が出てきた。
こうした変化がいくつか重なっているなら、年齢だけの問題と決めつけないほうがいいでしょう。
早めに相談することには意味がある
認知症にはさまざまな原因があります。
例えば、アルツハイマー病や血管性認知症などがあります。
一方で、甲状腺機能の異常、薬の影響、睡眠障害、うつ状態など、原因を治療することで改善できる認知機能低下もあります。
だからこそ、「年だから仕方ない」と何年も放置するのではなく、気になる変化があれば一度医療機関で相談することが大切です。
医師として家族に伝えたいこと
認知症を疑う時、家族が一番やってはいけないのは、「なんで覚えてないの?」と本人を責めることです。
本人も好きで忘れているわけではありません。
むしろ、「最近ちょっと忘れることが増えたね。一度、先生に相談してみようか」くらいの声かけのほうが、本人も受診しやすくなります。
そしてもう一つ大事なのは、「昨日何を食べた?」というようなテストを家族が繰り返すことではありません。
それよりも、以前と比べて生活の中で何が変わったのかを見ておくことです。
「物忘れ」より「生活の変化」を見る
年齢による物忘れと認知症を見分ける時、一番分かりやすいのは、「生活に変化が出ているか」です。
名前が出てこない。
物をどこに置いたか忘れる。
これだけなら、年齢とともに誰にでも起こります。
でも、約束を管理できない、料理ができない、お金の管理が難しい、道に迷う。
こうした変化が出てきたら、少し話が違ってきます。
「年のせいかな」と思った時こそ、以前のその人と比べてみる。
実は、それが認知症の早期発見につながる大切な視点なんです。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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