依存を断ち切る16のヨガポーズ

 依存を断ち切る16のヨガポーズ
Rick Cummings

アルコールやニコチンなど依存症から持続的に回復するための心理的・身体的なプラクティスを組み合わせた「12ステップリカバリーヨガ」を指導するニッキ・マイヤース。依存症に苦しんだ過去を語るとともに、依存症から立ち直る最初のステップとして教えているという16のポーズを紹介してくれた。

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1987年、私は依存症から回復するために12ステッププログラムを実践した。それから8年はずっと断酒していた。だがその後、出張に行ったドイツでつい1杯に手を伸ばしたが最後、何杯も飲んでしまった。それから一週間もしないうちに私はアムステルダムにいた。そこに行けば自分がどんな人間になって、どんなことをして、どこに行き、どんなドラッグに手を出すか明らかだった。狙いはクラックコカインだった。
アムステルダムから戻った後、私は12ステッププログラムに復帰し、ヨガも始めた。ヨガと12ステッププログラムには似ている点が多かったので、私はプログラムを辞めることにした。毎日アシュタンガヨガを練習すれば、依存症にも効くだろうと思ったからだ。
それから4年間は、お酒にもドラッグにも手を出さなかった。だが2000年になるとまた再発してしまった。そのとき私は、依存症から回復するための基本的な認知療法である12ステッププログラムと、身体面に働きかけるヨガを別にすることはできないと気づいた。そこで2003年にソマティック・エクスペリエンシング・トラウマ・インスティテュートとアメリカン・ヴィニヨガ・インスティテュートでのトレーニングを受けた後、依存症から持続的に回復するための心理的、身体的なプラクティスを組み合わせた12ステップリカバリーヨガ(Y12SR)を考案した。

今回紹介するシークエンスは、依存症からの回復のために最初に教えるものだ。また、私にとっても、何度も立ち返って行うシークエンスでもある。ここには確固とした基礎を築くために必要な全要素が含まれているからだ。各ポーズを行いながら、次のように自問してほしい。「バランスがとれている? 感情に圧倒されそうなときでも自分の中心を見つけられる?」。回復状態を持続させるには、これらの質問をたえず行い、常にグラウンディングを試みることが必要だ。

1.スカーサナ(安楽座)

安楽座
スカーサナ(photo by Rick Cummings)

脚を組んで快適に座り、坐骨の下にブランケットボルスター、瞑想用クッションなどを置く。ゆったりと大きく息を吸って吐けるようになるまで、呼吸を深めていく。自分を構成する5つの層(肉体、感情、思考、判断、心)の今の状態に意識を向けてみよう。このまま90秒またはそれ以上、ゆっくりと深い呼吸を続ける。

2.マルジャリャーサナとビティラーサナ(猫と牛のポーズのバリエーション)

猫と牛のポーズのバリエーション
マルジャリャーサナとビティラーサナ(photo by Rick Cummings)

四つん這いになり、腰の真下に膝、肩の真下に手がくるように位置を調整する。息を吸いながら胸を引き上げ(牛のポーズ、写真参照)、吐きながら胸を腿のほうに近づけ、お尻をかかとのほうに引いてバーラーサナ(子供のポーズ)に入る。長く深い呼吸に合わせて、この動きをゆっくりと繰り返す。

3.バーラーサナ(子供のポーズ)

バーラーサナ
バーラーサナ(photo by Rick Cummings)

胸を腿の上で休ませて、両腕は前方か体の横に伸ばす。この姿勢で快適でなければ、もっとくつろげる体勢に変えてもよい。このまま長く深い呼吸を8回。この「一時停止ボタン」のポーズによって、人生が思うようにならないときはペースを落としてもいいことを思い出そう。

4.ブジャンガーサナ(コブラのポーズのバリエーション)

ブジャンガーサナ
ブジャンガーサナ(photo by Rick Cummings)

マットの上でうつぶせになり、両手を胸の横におく。息を吸って胸を床から浮かせてコブラのポーズに入る。息を吐きながら、マットに上体を下ろす。次に息を吸ってコブラのポーズに入ったら、今度は右脚を浮かせ、吐きながら、胸と脚をマットに下ろす。逆サイドでも行う。次に息を吸うときは、両脚を浮かせてコブラのポーズに入り、そのままホールドして息を吐く。息を吸いながら、両脚を広げてさらに体を引き上げる。息を吐いて、脚と胸をマットに下ろす。このシークエンスを5セット繰り返す。

5.アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)

ダウンドッグ
ダウンドッグ(photo by Rick Cummings)

子供のポーズから、息を吸って四つん這いになったら、息を吐いて両膝と腰を引き上げてダウンドッグに入る。手でマットを押しながら、肘が反りすぎないように少しゆるめる。肩を耳から遠ざけるようにし、肩甲骨を寄せながら腰のほうに下げて安定させる。ゆっくりと四つん這いの姿勢になり、子供のポーズに戻る。これを4セット繰り返したら、最後にダウンドッグで8回呼吸をする。いつでも子供のポーズで休んでいいことを忘れずに。

6.ターダーサナ(山のポーズ)

ターダーサナ
ターダーサナ(photo by Rick Cummings)

ダウンドッグの姿勢から、マットの前方に足を歩かせる。前屈したまま息を吸い、足裏でマットを押す。下半身の筋肉を引き締めて尾骨を下げると、体幹を感じるだろう。体幹から胸を引き上げてハートを開きながら、ゆっくりと上体を起こして立つ。股関節、背骨、肩が平行になるように意識し、腰が守られているのを感じながら胸を開く。ホールドして3回呼吸。息を吐いて胸の前で合掌する(アンジャリムドラ=合掌のムドラ)。

7.ハイランジのバリエーション

ハイランジ
ハイランジのバリエーション(photo by Rick Cummings)

ターダーサナから、左足を後ろに引いて右膝を曲げ、手の指先をマットにつけてハイランジに入る。右のつま先を外側に向けて、さらにランジを深めていく。右膝は常に右のかかとの真上にくるように気をつけよう。さらにポーズを深めるには、右手を右足の内側に入れて、両肘をマットにつける。この非対称なポーズで中心を見つけられるだろうか?このポーズは、人生が思いどおりにいかないときでも、自分の中心を見つける意志力を高めてくれる。ホールドして8回以上呼吸をする。反対側でも行い、ターダーサナに戻る。

8.ウッティターパールシュヴァコーナーサナ(体の脇を伸ばすポーズ)

ウッティターパールシュヴァコーナーサナ
ウッティターパールシュヴァコーナーサナ(photo by Rick Cummings)

左足を後方に引いて、両足のつま先をマットの側面に向ける。骨盤と上体が左右対称な位置にあることを確認したら、右足のつま先を前方に向けて膝を曲げ、足首の真上に膝がくるように位置を調整する。息を吸いながら両腕を広げて床と平行になるまで上げる。ここでホールドして1回呼吸。息を吐きながら右手をブロックの上(または右足の内側の床)におき、左腕を頭上に伸ばして体の脇を伸ばすポーズに入る。ホールドして1回呼吸する。これを4回繰り返したら、さらにポーズをホールドして8~ 10回呼吸をする。立位の開脚に戻り、逆サイドでも繰り返す。

9.プラサリタパードッターナーサナ(立って両脚を伸ばすポーズ)

プラサリタパードッターナーサナ
プラサリタパードッターナーサナ(photo by Rick Cummings)

両足を1mほど開き、つま先をマットの側面に向けたら、両手を腰にあてる。息を吸って胸を引き上げると同時に尾骨を床に向かって下げる。息を吐いて下腹部を引き締め、両手を脚の裏側に滑らせながらゆっくりと前屈する。膝が反りすぎないように柔らかく保つこと。両足に均等に体重をかけ、手は足首(またはふくらはぎの下)に添える。4回繰り返したら、さらに前屈したままゆっくりと深い呼吸を6~8回行う。

10.スカンダーサナ(戦神スカンダのポーズ)

スカンダーサナ
スカンダーサナ(photo by Rick Cummings)

プラサリタパードッターナーサナの姿勢から、息を吐いて右膝を曲げる。左脚を伸ばしたまま右に体重を移し、左の内腿を深くストレッチする。ホールドして数回呼吸をしたら、息を吸って真ん中に戻る。息を吐いて今度は左膝を曲げる。右脚を伸ばしたまま左に体重を移す。ゆっくりと左右で4回行ったら、各サイドでホールドして6回呼吸をする。「問題は細胞組織に宿る」という言葉を聞いたことがあるだろう。体に滞っているものがあれば何でも手放してみよう。ポーズが終わったらターダーサナに戻り、マットの上に仰向けに横たわる。

11.セツバンダサルヴァーンガーサナ(橋のポーズのバリエーション)

セツバンダーサナ
セツバンダサルヴァーンガーサナ(photo by Rick Cummings)

両膝を曲げて足裏を床につけたら腰幅に開き、膝の真下に足がくるように位置を調整する。息を吸いながら、ゆっくりと腰を床から浮かせて橋のポーズに入る。息を吐きながら、背骨の上部からゆっくり下ろしていく。3~4回繰り返したら、橋のポーズで30 ~ 45秒ホールドする。息を吐いて上体をマットに下ろす。両脚を伸ばしたら、両膝を胸のほうに引き寄せる。

12.スプタマツィエンドラーサナ(上向きねじりのポーズ)

スプタマツィエンドラーサナ
スプタマツィエンドラーサナ(photo by Rick Cummings)

マットの上で仰向けの状態から左腿を右腿の上に交差させ、両腕をT字のように広げて横に伸ばす。息を吐きながら体を右にねじり、視線を左に向ける。息を吸いながら真ん中に戻る。このねじりを4回繰り返す。ねじるたびに吐く息を長くしていこう。さらに完全にねじった状態で6回呼吸する。可能なら上に重ねている脚を伸ばして手でふくらはぎか足首をつかみ、ストレッチを深めてみよう。逆サイドでも繰り返す。

13.コンストラクティブ・レストのバリエーション

コンストラクティブ・レストのバリエーション
コンストラクティブ・レストのバリエーション(photo by Rick Cummings)

両膝を曲げ、足裏をマット幅に開く。息を吐いて両膝を内側に倒して合わせ、このまま2回呼吸する。息を吸いながら膝を離す。次の吐く息で両膝を右側に倒す。このまま1~2回呼吸をしたら、吸う息で両膝を真ん中に戻す。息を吐きながら左に倒して、1~2回呼吸する。両膝を左右交互に倒しながら、このフローを繰り返す。1回ごとにホールドする時間を長くしよう。

14.シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)

シャヴァーサナ
シャヴァーサナ(photo by Rick Cummings)

仰向けになり、両腕は体の脇に伸ばして手のひらを上に向け、体を真っすぐに整えてバランスがとれている感覚を味わおう。肩の力を抜いてマットに沈める。頭を左右に動かして、真ん中を見つけよう。顔の筋肉をゆるめて、全身の力も抜いていく。このまま気持ちいい解放感を味わいながら少なくとも5分間ホールドする。

15.ヴィーラーサナ(英雄のポーズのバリエーション)

ヴィーラーサナ
ヴィーラーサナ(photo by Rick Cummings)

シャヴァーサナが終わったら、ゆっくりと体を起こしてマットの上にひざまずく。両足を外側に開き、ふくらはぎの肉をかかとのほうに押し下げながら、足の間に座る(ブランケットボルスター、またはブロックの上でもよい)。ゆっくりと呼吸を深めていこう。6カウントで息を吸い、息を止めて3カウント。6カウントで息を吐き、また息を止めて3カウント。このサイクルを3回繰り返す。呼吸が長く深まってきたら、息を吸うときと吐くときは8カウント、息を止めて4カウントにしてみよう。このサイクルでも少なくとも3回繰り返し、終わったら胸の前で合掌する。

16.座位の瞑想

座位の瞑想
座位の瞑想(photo by Rick Cummings)

快適な姿勢で座り、目を閉じて自然な呼吸に戻る。思考が浮かんできても(必ず浮かんでくる)囚われたり抗ったりせずに、ただ手放すようにする。このまま少なくとも1分間。それから胸の前で合掌(アンジャリムドラ)する。少し時間をとって、体、エネルギー、マインドの今の状態を観察しよう。

指導/ニッキ・マイヤース
ヨガセラピスト、ヨガティーチャー、ソマティック・エクスペリエンシングの実践者であり、12ステップリカバリーヨガ( Y12SR)の創設者。Y12SRは彼女のサイトで練習できる。yogaanytime.com/go/Y12SR 

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Text by Nikki Myers
photos by Rick Cummings
model by Bhakti White
styling by Jessica Jeanne
hair&make-up by Beth Walker
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.59掲載



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