猫背も反り腰も必ず姿勢が良くなる!理学療法士が教える「奇跡のウォーキング」練習法
理学療法士の堀川ゆきさんが、日常生活に役立つ身体の知恵とともに、日常生活の癖による歪みや筋力不足などを解消し、心と体をリセットする簡単エクササイズを紹介します。
歩き方で若くも老けても見える
自分の歩き方を気にしたことはありますか?街を見渡してみると、20代くらいの大学生がまるで80代のおばあちゃんのような猫背姿勢でトボトボと歩いていたりします。 一方で、20代の若者のように姿勢良く颯爽と早歩きしている高齢者も見かけます。 この違いは一体なんでしょう?それは、「軸の伸長」と「コアのコントロール」を意識できているかどうかがまず考えられます。歩行にとって大切な「軸の伸長」と「コアのコントロール」についてまずお話します。
「軸の伸長」とは
「軸の伸長」とは、重力に対して身体を上に引き上げる感覚のことです。 「軸の伸長」によって、重力に押し潰される力に抵抗して、垂直方向の抗重力活動が起こります。そうすることで身体の左右のバランスがとれて身体が中心に整い、身体のアライメントが整います。さらに「軸の伸長」によって、身体のコアの筋肉にも必要な力が自動的に入ります。 具体的な方法は後で説明しますが、「軸の伸長」について詳しくはこちらのコラムhttps://yogajournal.jp/8729を参考にしてくださいね。
「コアのコントロール」とは?
コアの定義は文献や指導者によっても分かれるところですが、
・横隔膜
・腹横筋
・多裂筋
・骨盤底筋群
この4つの筋肉をコアと定義します。
この4つの筋肉が、腹部を囲うようにドーム状のスペースを作っていて、その腹腔内を引き締めて安定させたり、緩めて柔らかくしたりなどの働きを担っています。 コアのコントロールの基本となるのは、「ドローイン」(draw in)です。ドローインとは、引いて中に入れるという意味で、おへそを背骨に近付けていくように、腹部の筋肉を収縮させて、腹圧を高めることです。 ドローインについても後で方法を説明しますが、ドローインについて詳しくはこちらのコラムhttps://yogajournal.jp/8502 を参考にしてくださいね。
「軸の伸長」と「コアのコントロール」は、どちらもピラティスの基本原則に含まれています。この2つの基本原則は、ヨガでもリハビリでも私は重視しています。また、人間の最も基本的な動作である歩行にも不可欠なものと考えています。
ボールかティッシュの箱で
今回はこちらのオーバーボールを使います。
このようなボールは、ジムボール、エクササイズボール、ピラティスボールとも呼ばれています。100円均一にもボールが売っていますが、空気を入れる量を自分で調節できるタイプ理想です。写真のように空気はパンパンになるまでは入れないからです。
ボールがなくても大丈夫です。実はティッシュペーパーの箱で代用することができます。ティッシュ箱を頭に乗せてこれから紹介する動作を試してみてください。
ターダーサナで「軸の伸長」
まず、ターダーサナ(山のポーズ)で体感してみましょう。ターダーサナは全てのヨガポーズの原点です。 写真のように壁を使って立った場合、仙骨の辺り・肩甲骨の間・後頭部の3点だけが壁にくっつきます。この3点全てが壁に触れている状態が理想的な姿勢です。
最初に「軸の伸長」を意識して立ってみましょう。天井から頭頂部を糸で引っ張られているつもりで、背骨をいつもより10センチくらい長く上に引き上げるような感覚です。 次に「コアのコントロール」です。下腹部を引っ込めて腹圧を入れて、ドローインしてみましょう。おへそを背骨に近付けていくようにお腹を薄くして、さらにおへそを上に引き上げるような感覚です。
ボールを頭に乗せてトライ
ボールをちょうど頭のてっぺんに乗せて立ってみましょう(ターダーサナ)。 どうでしょうか?立っているだけでボールが頭上からこの時点で落ちてくるようなら、ボールの空気をもう少し抜いてください。そうすると少し簡単になりエクササイズがやりやすくなります。
1.立位で腕振り
ボールを頭上に乗せたまま、腕をゆっくりできるだけ大きく前後に振ります。20回振ってみましょう。
2.立位でもも上げ
ボールを頭上に乗せたまま、ももを左右交互にゆっくり上げます。左右交互に20回もも上げをしましょう。
「軸の伸長」と「コアのコントロール」とを終始意識できていたなら、ボールは頭上から落ちないはずです。ボールが落ちてきたり、頭頂からズレてきたら必ずボールを正しい位置に乗せて最初から行ってください。 腕振りともも上げが両方できたら、最後にボールを頭上から下ろして歩いてみましょう。「軸の伸長」と「コアのコントロール」を身体が記憶しているので、それが維持されたままきっととても健康的で良い姿勢で歩けていることと思います。その状態が徐々に身体に定着していくように、一日1回ボールを乗せてこの腕振りともも上げを行ってください。
まとめ
「軸の伸長」と「コアのコントロール」の重要性と練習の方法をお伝えしました。それが健康的で良い姿勢でのウォーキングにつながっていくことを理解してもらえたかと思います。 「軸の伸長」も「コアのコントロール」も、どちらも決して全力で頑張って行うものではなく、潜在している自分の中の必要最小限の力で実現可能なものです。そのうち必ず感覚がつかめるはずです。 生涯健康的で良い姿勢で歩けることはとても有意義なことなので、試してみてくださいね。
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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