【理学療法士が忠告】間違った腹筋運動は腰痛の原因に?!腰痛に効く正しい「腹筋運動」やり方
理学療法士の堀川ゆきさんが、腰痛の原因と痛みを改善する正しい腹筋運動のやり方を紹介します。
腰痛の悩み
腰痛は、現代人が悩む最も代表的な症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)における有訴者率では、「腰痛」は男性の第1位、女性の第2位でした。
腰痛は、実際に一度は経験したことのある人がほとんどではないでしょうか。腰痛にはたくさんの対処法があり、その情報を知り得ることも今は容易になりました。ただそれでも現在もなお国民病として、多くの人を悩ませ苦しめ続けているのが現状です。
腰痛に対処するには
腰痛には、腰だけに負担がかからないようにしていくことが大切です。
そのためには、
①胸椎の柔軟性を上げる
②股関節の柔軟性を上げる
③腹筋を鍛える
この3つがとても重要になってきます。
今回はこの3つのうち、「③腹筋を鍛える」方法について紹介します。腹筋を鍛えるためには、仰向けで上半身を起こす「上体起こし」が一般的な腹筋運動として思い浮かぶと思います。しかし、上体起こしではアウターマッスルである腹直筋に力が入りやすく、腰痛の対処にはなりません。
腹筋は全部で4つあります。
・腹直筋
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・腹横筋
腰痛に対処するには、4つの腹筋の中でもインナーマッスルである腹横筋を鍛えなければいけません。そこで、腹横筋に効かせることのできるドローインをまず練習しましょう。
ドローインの方法
一度息を吸ったら、次に息を強制的に吐き、お腹の特に下腹部を意識的にへこませて腹圧を高めます。息を吸って一旦お腹の力を緩めて、また息を吐きながら下腹部を目一杯へこませるのを繰り返します。これがドローインです。
ドローインの時に下腹部に軽く両手を当ててみてください。下腹部の筋肉が硬くなっていますか?硬くなっていたら、腹圧の高まりが確認できた証拠です。このドローインによって、脊柱の安定性が高まり、腰痛の軽減が期待できると言われています。
ドローインしながら次はコレ
ドローインはうまくできましたか? ドローインができたら、次は「ローリング・ライク・ア・ボール」に挑戦しましょう。ローリング・ライク・ア・ボールは、ピラティスの有名なエクササイズで、腰痛には必須の腹横筋を鍛えるのにオススメです。名前の通り、ボールのように前後に転がります。これを、先程のドローインを行いながら10回繰り返します。まずは、両手の指先で膝の裏を軽く持つようにして、背中全体をC字状に丸めて、10回前後に転がってみましょう。
肩甲骨が床に触れたところで止めて、後頭部はつかずに戻ります。戻ってきた時は、できればつま先や足裏は床に触れずに空中で止めます。その方が筋肉が休まることがなくトレーニング効果が高いからです。
チェックするポイントは以下の4つです。
・吸って後ろに転がり、吐いて起き上がる(吐く時にドローインする)
・背中全体を均等に丸められるか(脊柱のCカーブ)
・きちんと起き上がってこられるか、起き上がってきた時に足先は浮かせたままキープできるか(腹圧のコントロール)
・腰が硬く平らなままでなく丸められているか(腰椎の屈曲)
これができたなら、今度は両手で足の裏を掴んで10回転がってみましょう。腕は膝の内側から、もしくは膝の外側からどちらでも良いので足の裏を持ちやすい方で行います。
どうですか?起き上がって来られましたか?「あれ?手で膝の裏を持って転がった時は起き上がれたのに、足裏を掴むと起き上がれない・・・!?」
その理由は、手で膝の裏を持って転がる方法は、反動を使えるからです。ドローインが未熟で腹横筋が弱かったとしても、膝の下で弾みをつけて反動で楽に起き上がってこられるのです。
ところが、足の裏を持って転がった場合は、腕と脚が固定されているため反動を使うことができません。なので、ドローインして腹横筋をしっかり使えていないと不可能なエクササイズなのです。
できなかった人は、引き続きドローインの練習を行いましょう。そして膝裏を持って転がってまずローリング・ライク・ア・ボールの動作を体得しつつ、この時にドローインを必ず意識します。そこからさらに足裏を持って転がる練習へとチャレンジしていってください。いつか「あ!分かったかも!?」と感覚が掴める時が必ずきます。
まとめ
腰痛に効くエクササイズとして、ドローインしながら行うピラティスのローリング・ライク・ア・ボールについて今回紹介しました。これは実際に臨床でも腰痛患者さんにチャレンジしてもらっていて、効果を見出すことができています。腰痛の原因は多岐にわたるため、一概には言えませんが、数ある対処法の一つとして参考になればと思います。
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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