ヨガ的メンタルヘルスガイド【トラウマに対するヨガの効果】と実践法
ヨガで喪失感を乗り越える
中学1年生の社会科の授業を受けていたとき、突然スピーカーからパチパチと音がして、声が鳴り響いた。「リサ・フィーラー、すぐに校長室に来なさい」。廊下を歩きながら、今度は何の違反で呼ばれたのだろうと思った。待っていたのは2人の警官で、私はパトカーに乗せられた。警察に着くと、そこには私の兄弟もいた。いったい何が起きてるの?45分後、警官たちは伏し目がちに母の死を告げ、父は病院にいると言った。その数日後、新聞で父が母殺しの容疑で逮捕されたことを知った。
家で父の暴力を目の当たりにしていた私は、こうなることをずっと恐れていた。私は5歳の頃から、母がバイオリンケースやお弁当に忍ばせてくれた手書きの優しいメモを保管していた。いつかこれらが母の形見になるかもしれないとなんとなく感じていたのだ。母を亡くしてからの10年は、依存症、自殺願望、暴飲暴食などさまざまな自己破壊的行動を繰り返した。
22歳の時、私はアルコールを断ってボディビルを始めた。ボディビルを通じて自分の抱える不安が見えるようになったが、やがて腱板を傷めてしまった。そしてヨガに出会った。最初は肩の治療のためだったが、ヨガは深い癒しへの道となった。
不安や恐れ、裏切りを感じるたびに、私はすぐに太陽礼拝を行い、大地につながる感覚を求めた。やがて練習は呼吸法、マントラ、チャンティングへと広がっていった。母の命日のような辛いときはいつもヨガに頼った。
私にとってヨガは、破壊的にならずに怒りに対処できる場となった。悲しみを避けるのではなく、悲しみから前に進めるようになった。体を使ってエネルギーを動かすことで、正面から悲しみに向き合えるようになった。マットには何でも持ち込める。悲しみも、喜びも。ヨガはいつも私を癒してくれる。
—リサ・フィーラー:『THIRST:A MEMOIR』の著者
聞き手:ケイトリン・カールソン
呼吸ができる
ジョージ・フロイドがミネアポリスで殺害されたとき、私はビデオ映像へのリンクを見つめた。そして迷った末に、目の前で黒人の命が絶たれる様子を見ることを決意した。
呼吸が速まり、悔しさで喉が詰まった。私は息を整えるためにいったんパソコンから離れることにした。そしてグラウンディングしたいときに行う4-4-4というシンプルな呼吸法を始めた。均等に呼吸するうちに、思考が外界から内側へと落ち着くのを感じた。
呼吸法(プラーナヤーマ)は、特にヨガの世界ではメンタルヘルスを維持するための素晴らしいツールとしてよく知られている。また、ヨガで呼吸を整えると、体のストレス反応が改善されることが立証されている。
しかし、アメリカに住む黒人にとって「呼吸」は単なる呼吸以上の意味を持つ。私たちは、本来私たちを守る立場にいる人々の暴力によって、絶えず無慈悲に黒人の息が絶たれる時代に生きている。「I can't breathe(息ができない)」という言葉は、今や抗議運動のスローガンとなり、エリック・ガーナー、サンドラ・ブランド、ジョージ・フロイド、レイシャード・ブルックス、ブレオナ・テイラー、その他多くの被害者たちの名前とともに繰り返し叫ばれている。
また、死に至る可能性のある呼吸障害を引き起こすCOVID-19のパンデミックでは、黒人やヒスパニックが驚くほど不均衡な割合で感染している。これらすべてを考えると、呼吸はセルフケアを行ううえでの恵みでもあり、制度上の不公平のなかにあっても存在する権利を主張するための手段でもある。
「呼吸とは、いわば解放と制御の行為です」と、シカゴ・スクール・オブ・プロフェッショナル・サイコロジーで応用行動分析の博士候補生のジェレル・ウィルソン(E-RYT500指導者)は言う。「私たちは、自分の呼吸をコントロールする必要があります。力のある者の手にかかったときには、自分の力を取り戻し、自らがコントロールすることが重要です。それは私たち自身の呼吸から始まるのです」
—ブリアナ・エドワーズ
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く