シャヴァーサナとは何か|ヨガの最後にシャヴァーサナを必ず行う理由

 シャヴァーサナとは何か|ヨガの最後にシャヴァーサナを必ず行う理由
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シャヴァーサナを「亡骸のポーズ」と訳すのは間違っている?

再びニューヨーク州マサピーカでの話に戻るが、たいていの人は、亡骸と言えば、まさに死んでいる状態と考える。このポーズの名前自体が、誤解を生む原因の一つとなっている。“亡骸”というのは残念な翻訳ですね、と言うのはリチャード・ローゼン。ヨガジャーナルの寄稿編集者で、ロドニー・イーと共にカリフォルニア州オークランド、ピエモント・ヨガ・ スタジオの共同創立者である。「たしかに私たちにとっては死体という意味です。でもインドでは違います。彼らにとっての亡骸とは、肉体は不活性でも感覚が非常に冴えている状態のことなのです」。これこそが、シャヴァーサナで私たちが目指すもの――静穏で、マインドフル(心が集中している)な状態だ。

とはいえ、新しい名前として“感覚の冴えた死人”のポーズとか、“外側は死んでいても中身はノリノリ”のポーズなどと言っても認められないだろうから、おそらくずっと“亡骸”のポーズのままだろう。だが私たちヨギとしては、陰気な名称のせいで、練習での真に生命力にあふれたポーズであるという理解が得られないのは我慢ならない。

ヒューストンにあるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの人事マネージャーで、運動生理学者のビル・バウンは、シャヴァーサナをマインドフルな瞑想(気づきの瞑想)として捉えている。そのため、シャヴァーサナは、国内有数のがんセンターで生死を扱うストレスフルな環境にいる医師やスタッフたちを助けたり、朝出かける前に子どもたちと格闘した後の疲労感をも鎮めてもくれるような、極めて有益なものとして考えている。

「深いリラクセーションにある程度浸ることによって、いわゆる無駄なおしゃべりから遠ざかることができるのです。例えば、絶え間なく続く自分自身との対話だったり、一時間前に怒鳴りつけてきた上司の言葉だったり、他にも人生で起きていることすべてからです」とバウンは言う。そして、その静かな“感覚の冴えたくつろぎ感”とともに、私たちは再び人生と向き合うこととなる。「だからこそ、クラスの終わりにヨガティーチャーが生徒たちを、現在に引き戻すことが重要なのです。エネルギーと活力を取り戻した状態で、再び人生に戻ることができるからです」

感覚が冴え、ゆったりとした平穏な状態でいれば、ストレスフルな状況にも効果的、かつ冷静に対処できるようになる。

落ち着きをもたらすシャヴァーサナ

ヨガの練習生で、ボカラトンにあるフロリダ・アトランティック大学で運動科学を教えているティナ・M・ペンハローは、シャヴァーサナには集中力を高める効果もある、と指摘している。そしてこのポーズは、不安やストレス、不眠に悩む人に有益だと主張する。

心身に多くの恩恵をもたらすにもかかわらず、いまだにシャヴァーサナを付け足し的なもの、有酸素運動でのクールダウンのヨガ版と考える練習生は少なくない。時間があればやるけれど、必須ではない。おまけに退屈だ、と。

「多くの生徒にとっては、最も楽しいポーズとは言えないでしょうね」とローゼンは言う。「でもスノードームを振ったときのことを想像してください。テーブルに置いて少しすると、雪が、家や木の上に落ちて戻ってきます」。ローゼンは、シャヴァーサナはヨガの仕上げだと言う。「アーサナ練習の間は、すべてがかき回されます。その後は鎮める必要があります。だからシャヴァーサナは練習を終えるのに適切な方法なのです」

中にはこのポーズを非常に真剣に扱っているヨガスクールもある。シヴァナンダヨガの練習生たちは90分のクラスをシャヴァーサナから始める。身体をリラックスさせ、その後の練習に向けてマインドを準備するためだ。また、神経系を活性化すると同時に過剰な刺激から守り、自然な呼吸を続けるためにポーズとポーズの間にもシャヴァーサナを取り入れ、バランスを取り戻すために、練習の最後でも再び行う。

「シャヴァーサナは素晴らしい落ち着きをもたらしてくれます」と語るのは、ニューヨークのシヴァナンダヨガヴェーダンタセンター長、スワミ・サダシヴァナンダだ。「シャヴァーサナは、生徒たちがアーサナ練習で得た効果を吸収するための重要な時間です。シャヴァーサナの間に身体、マインド、精神は完全に再充電され、活性化されます」

精神面での恩恵に加え、シャヴァーサナには肉体的な効果もある。フォイヤーシュタインによると、60年代にインドで行われた研究では、定期的なシャヴァーサナの実践が高血圧に効果があったことが立証されているという。その研究では、患者たちは、約3週間“正しい”シャヴァーサナを習ったとされている(やはり、習って向上するものだというわけか!)。 このポーズを“習う”ことに対する私の不真面目な態度はさておき、シャヴァーサナでも、ダウンドッグやさらに動きの多い他のアーサナのように、正しいテクニックが要求される。

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Text by JOHN HANC
Translated by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.25



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