沖縄が問いかける「豊かさ」の答えを探しに。映画『CHURA VITA~Oh!Beautiful Life~』【レビュー】

沖縄が問いかける「豊かさ」の答えを探しに。映画『CHURA VITA~Oh!Beautiful Life~』【レビュー】

沖縄本島北部・やんばるを舞台にした映画『CHURA VITA~Oh!Beautiful Life~』の劇場公開が沖縄から始まりました。やんばるを象徴する大自然、独自の食文化や手仕事に今何が起こっているのでしょうか。そこに暮らす人たちが鳴らす警鐘と未来に馳せる思いに耳を傾け、真の「幸せ」と「豊かさ」を考えてみたくなる本作のレビューをお届けします。

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沖縄の「小さな傷口」が問いかけることとは

『CHURA VITA~Oh!Beautiful Life~』は、2023年に公開された食と暮らしがテーマの映画『HAPPY SANDWICH〜幸せのサンドウィッチ〜』に続く2作目。前作に続き、監督・岸本司氏、エグゼクティブプロデューサー・大朝將嗣氏、プロデューサー・大朝まりあ氏が顔を揃えます。

CHURA VITA

タイトルの『チュラ・ヴィータ』は中米コスタリカの言葉「Pura Vida(プーラ・ヴィーダ/豊かな人生)」に着想を得て、心の美しさを表す沖縄の「ちゅら」と結び付けた造語です。

物語の導き手は、世界有数の長寿地域『ブルーゾーン』として知られる沖縄に魅せられ、スウェーデンから移住したニコリーナ・スヴェンセン。彼女がこの地で心動かされた体験がドキュメンタリータッチで描かれています。やんばるで出会った人を通して見えてきたのは、美しい自然の影で静かに進む環境破壊、伝統の継承が危ぶまれる食文化や手仕事など沖縄が抱える諸問題でした。

物語は静かに進み作品の印象は終始穏やかですが、それは平和的な静けさではなく、嵐の前の危機感を孕んだ静寂であり、価値観の再生は待ったなしだと訴えかけられているように感じます。また過剰さをそぎ落としたシンプルな演出によって、沖縄が抱える「小さな傷口」へ丁寧に光が当たり、この島の現状を考える一歩へといざなってくれます。

そこに暮らす人々が伝える、沖縄の今に耳を傾けて

ニコリーナが出会ったのは、琉球薬膳講師、沖縄料理人、琉球パナマ帽制作指導者、琉球藍染作家など沖縄文化と深く関わり生きる人たち。その一人である琉球薬膳講師・宮国由紀江氏は「沖縄の伝統食をつくれる人が減り、伝える人がいなくなった。今までの食文化を取り戻すことが健康を取り戻すスタート」と語ります。そして「時短重視の食は心にも影響を及ぼす」と。その言葉を聞いたニコリーナは「便利さは生活を楽にするが、豊かで幸せとは限らない」と気付かされ、作品には本物の豊かさに立ち返る瞬間が散りばめられています。

久米島でマリンスポーツインストラクターをしながら、琉球パナマ帽のつくり方を教える木村麗子氏も出演。かつてパナマ帽は多くの人が製造に携わった琉球の一大産業でした。技術が盗まれることを恐れて次世代に継承されず廃れていった歴史を知った木村氏は、その技術を復元して教える場を創出し、パナマ帽づくりが沖縄女性の生業になる未来を目指しています。自ら森に入って材料となるアダンの葉を調達する木村氏は、「自然をコントロールできると思っている人はとんでもない」と言い切り、「Takeだけでなく、人が自然に渡せるものがあるのでは」と、人と自然が共に生きるための問いを投げかけます。

CHURA VITA

「What I can do?」の答え探しへの一歩に

かつてイルカトレーナーだったニコリーナ。ある日、東村のウッパマビーチで浜辺に打ち上げられたイルカを救助し海に還した出来事を機に、温暖化などで姿を変えつつある海への関心を高め、「海」が沖縄を考えるうえで一つのキーワードになっていきます。

沖縄と海の関わりを調べる過程で、海を介した交易があったから資源がない琉球国が一つの国になり、独自の食文化や舞踏などの芸能文化を通して他国とつながりアジアで生き残れた事実を知ったニコリーナ。「海はCO₂やゴミなど人間が起こすすべてのことを受け入れてくれる場所。もう少し海のことを考えないといけない。幸せに暮らすには自分勝手な行動を改める必要がある」と語る沖縄美ら海水族館館長・佐藤圭一氏の言葉が彼女を突き動かします。

CHURA VITA

過去に脊髄を損傷して車椅子生活を送るのは、琉球藍染作家・真栄城興和氏。波に押される感覚をもう一度味わいたくてリハビリを重ね、現在はパラサーファーとしても活躍しています。パラサーファーの真栄城氏にとって海は、「癒される場所であり、挑戦する場所」。一方、海からインスピレーションを得て独自の柄を考案し、時代に合った琉球美絣を創作する藍染めの世界では、海は創造の源。真栄城氏を通して知る人と海との親密な関係性は、環境問題を身近なものにしてくれます。

作品を通して感じるのは、沖縄が提示する課題は、決して遠い世界の出来事ではないということ。便利さや目新しさを求めて変化し続ける日常の中でふと立ち止まり、「What I can do?(私に何ができるだろう)」と、自分自身の足元を見つめ直すきっかけを与えてくれる一作です。

◆上映情報

東京:ヒューマントラストシネマ有楽町 11/6(金)~19(木)、アップリンク吉祥寺12/11(金)~17(木)
関西:テアトル梅田11/27(金)~12/3(木)、アップリンク京都11/27(金)~12/3(木)

CHURA VITA

 

オフィシャルサイト http://churavita.com/
Instagram https://www.instagram.com/chura_vita/

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文/北林あい

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