【なで肩改善エクササイズ】インストラクターの声掛け「肩を下げて」が肩の痛みの原因に⁉その理由は?

 【なで肩改善エクササイズ】インストラクターの声掛け「肩を下げて」が肩の痛みの原因に⁉その理由は?
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杉山匡人
杉山匡人
2022-04-07

ヨガやピラティスで「先生の指示どおりに動いていたはずなのにいつのまにか肩が痛くなってきた」という経験をお持ちのあなた、問題はインストラクターの声掛け(キューイング)にあるかもしれません。

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なで肩になってしまう原因

バンザイの動き(肩の屈曲、外転)を伴うウォーリアⅠ、ダウンドッグ、椅子のポーズなどのエクササイズを行う時によくインストラクターからかけられる「肩を下げて」という キューイング。

このキューイングを行うのは、バンザイをするときに自然に発生する肩甲骨の上方回旋(肩甲骨の下の角を斜め上に持ち上げて回転させるような動き)を僧帽筋上部を過剰に使って行おうとしたり、誤って肩甲挙筋を使って肩甲骨を持ち上げてしまうことで上方回旋にブレーキをかけてしまう人が多いからです。

しかし、インストラクターの中にはどのような肩の動きが通常の動きなのか、どこまで肩が上がったら問題があるのか、細かい機能解剖が理解できていないまま指示を出してしまっている人がいます。

そのため肩を下げることを意識し続けたヨガ・ピラティスインストラクターや、肩を下げろと言われ続けた生徒には、肩甲骨が安静時あるいは動作時に下制(下に下げる動き)、あるいは下方回旋(上方回旋の逆の動き)しすぎて、いわゆるなで肩になってしまっている人が多く見受けられます。

また、普段から重い荷物を手に持っている人にもこのような症状が見られることがあります。肩が下がりすぎると肩から首にかけて凝ってきたり、手にしびれが出てしまう胸郭出口症候群になってしまうことがあります。

また、肩が下がりすぎていると肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の間)での正常な肩甲骨の上方回旋が行われないため、その分を肩甲上腕関節(腕の付け根)でカバーしようとしてインピンジメント(肩周辺の筋肉や腱の挟み込み)を起こし、四十肩の原因になったりします。

肩甲骨の位置を調整する方法

安静にしているときの肩甲骨の位置は背骨との位置関係で評価をします。多少の差はありますが、肩甲骨は腕を降ろしている時には胸椎棘突起(後ろの出っ張り)の2番から7番あたりにあります。しかし、背中の評価は自分で行うことができませんし、インストラクターがレッスン中にいちいち背骨と肩甲骨の位置を見るのは非現実的です。

そこで目安にしてほしいのが鎖骨の角度です。通常鎖骨は胸骨側(内側)から肩峰側(外側)に向かって上に上がっています。この角度は水平に対して0°~15°程度ですので、秒針で1秒から2秒ぐらいの角度になります。外側が0°より下にあれば下がりすぎ、15°より上にあれば上がりすぎと思ってください。

ただし、鎖骨の高さに左右差があった場合は側弯姿勢こちらの記事を参照)が潜んでいる場合があるので、そちらを先に改善する必要があります。

鎖骨
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また、動作中の肩を下げてというキューイングは別の弊害も生みます。意識的に肩を下に強く下げようとするとどこに力が入るでしょうか?  多くの人は広背筋(脇の後ろ)や大胸筋下部(胸の下外側あたり)や小胸筋に強い収縮感を感じるはずです。

広背筋
©イラストAC
大胸筋小胸筋
©イラストAC

広背筋や大胸筋下部、小胸筋はバンザイの動きにブレーキをかける筋肉なので、肩周辺に余計な力みを生んでしまい腕がスムーズに上がらなくなります。肩を下げながらバンザイをする動きと、肩の挙上(肩をすくめる動き)方向への過剰な力を抜いてバンザイをすることは似て非なるものです。

上方回旋をした時には肩峰(肩の先端)が頚椎の6番から7番あたりにくるのが通常です。自分で評価をするときやグループレッスンのときには肩甲骨の位置を後ろから見ることができないので、やはり鎖骨の角度で推測をします。

腕を完全挙上したときには鎖骨も25°ほど上に傾くので、安静時の角度とトータルで25°〜40°ほど外側が上がることになります。これらを目安に肩甲骨の安静時の位置、バンザイをしたときの位置をチェックしてみましょう。肩が下がりすぎている人には、次のエクササイズを行って、僧帽筋上部を活性化させることお勧めします。

スキャプラエレベーション

①長座になります。長座で骨盤が真っすぐ立てられない人は正座や椅子に座っても構いません。

②手のひらを向かい合わせにして、リラックスして前方からYの字になるように手を挙げます。

スキャプラエレベーション②
©PHI Pilates Japan
 水平よりも上に腕が上がっていれば、指先が完全に天井に向いていなくても大丈夫です。
スキャプラエレベーション②
©PHI Pilates Japan

③耳と肩を近づけるように、肩甲骨を天井方向に持ち上げます。

スキャプラエレベーション③
©PHI Pilates Japan

④リラックスして肩を元の位置に戻します。

⑤5~10回繰り返しましょう。背中が丸くならないように注意しましょう。腕が下がった状態で肩をすくめると目的の筋肉にアプローチできず逆効果になります。必ず水平より上に腕を上げてください。

 

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AUTHOR

杉山匡人

杉山匡人

高校時代の度重なるケガをきっかけに、ケガをしない体を作る方法を学ぶため早稲田大学に入学。卒業後、フィットネスクラブインストラクター、接骨院スタッフ、プロ野球選手のパーソナルトレーナーなどを経験する。 より多くの人を体の悩みから解放するために後進を育てることを決意し、専門学校のアスレティックトレーナーコース長として9年間勤務。解剖学、アスレティックリハビリテーション、ボディワークなどの講義を行う傍ら、あらゆる種目のスポーツ現場でアスレティックトレーナーとして活躍する。 現在、のべ2,500名以上のインストラクターを養成している日本最大級のピラティス団体「PHIピラティスジャパン」「YOGA MOVE」の本部スタジオ「EXECUTIVE7」において日本代表プロ野球選手、元スペイン代表Jリーガーなどのトップアスリートから、モデル、高齢者まで動作指導をする一方で、ピラティス・ヨガインストラクター養成講師をつとめ、多数のトレーナー養成専門学校において非常勤講師として活動。 資格:PHIピラティスマスタートレーナー、YOGA MOVEマスタートレーナー、鍼灸師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、日本赤十字社救急法救急員、栄養コンシェルジュ二つ星 他 講師歴:履正社医療スポーツ専門学校、三幸学園リゾート&スポーツ専門学校、東洋医療専門学校、YMCメディカルトレーナーズスクール 他 メディア:関西電力発行マガジン『withはぴe』「毎日続ける からだメンテナンス」連載 他



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