【鬼滅の刃】「全集中の呼吸」は本当に存在するのか?ヨガの「呼吸」との共通点 〜呼吸のチカラ#1
1日に約2万回、無意識のうちに行っている呼吸。全集中したとき、そこには一体どんな変化が起きるのでしょうか...?「呼吸のチカラ」に着目して連載スタート!第1回目は、今話題の大人気漫画・アニメ『鬼滅の刃』とヨガの呼吸の共通点を探ります。
こんにちは、八田幸子です。「声で心を整える」をコンセプトに日本声ヨガ協会を主宰しています。声は呼吸と深く関係しているため、声ヨガでは様々な呼吸法を取り入れています。
今回は、呼吸を重視する声ヨガ専門家の立場から、鬼滅の刃とヨガの「呼吸の共通点」を解剖していきます。
『鬼滅の刃』における呼吸
剣術流派としての呼吸
鬼滅の刃では、鬼退治の剣士たち(鬼殺隊)がそれぞれ「呼吸」という剣術流派に属しています。全ての始まりである「日」の呼吸から「炎・水・雷・岩・風」の五大流派が誕生して、更にそこから派生した恋・蛇・花・蟲・音・霞・獣などがあります。
つまり、鬼滅の刃では、呼吸の鍛錬度合いが剣士の強さに直結しているのです。
「呼吸を極めれば様々なことができるようになる
何でもできるわけではないが
昨日の自分より確実に強い自分になれる」
炎柱 煉獄杏寿郎
身体超活性術としての呼吸
普通の人間では敵わない強さを持つ人喰い鬼と戦うため、剣士たちは「全集中の呼吸」という身体を超活性する特殊な呼吸を使います。
肺に酸素をたっぷり取り込み、血液中の酸素濃度を高めることで、一瞬にして高い集中力と身体能力を手にすることができます。
「体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くするの。
そしたら、すごく体温が上がって、
人間のまま鬼のように強くなれるの。
とにかく肺を大きくすること。
血の中にたくさん、たくさん空気を取り込んで、
血がびっくりした時、
骨と筋肉が慌てて熱くなって強くなる」
真菰
ヨガにおける呼吸
八支則(はっしそく)
ヨガの経典「ヨガ・スートラ」には八支則といって、悟りに達するまでの8段階が記されています。その4番目の「プラーナヤーマ」が、呼吸法にあたります。
①ヤマ(Yama)...禁戒
②ニヤマ(Niyama)...勧戒
③アーサナ(Asana)...坐法
④プラーナヤーマ(Pranayama)...呼吸法
⑤プラティヤハーラ(Pratyahara)...感覚の制御
⑥ダーラナ(Dharana)...集中・精神統一
⑦ディヤーナ(Dhyana)...瞑想
⑧サマーディ(Samadhi)...三昧(悟り / 解脱)
呼吸で「気を調える」
プラーナヤーマのプラーナ(prana)はエネルギー、アヤーマ(ayama)はコントロールを意味していて「調気法」と訳されることもあります。ヨガでは、身体の中にナーディーというプラーナの通り道(エネルギーの血管のようなもの)が72,000本あると言われています。
そ、そんなに!? ...という声が聞こえてきそうですが、今回はシンプルにプラーナの行き場について考えてみましょう。各キャラクターのメンタルの特徴別に挙げてみます。
A. 不安や緊張で地に足がつかない...炭治郎タイプ
B. カッとなって頭に血がのぼる...伊之助タイプ
C. 恐れや焦りで気が気がじゃない...善逸タイプ
それぞれ違うようですが、実はいずれも、プラーナが過度に上に集まって不安定になっている状態です。こうなっては本来の力を出すことができません。そこで、プラーナをコントロールするための行法として呼吸を学び、鍛錬するのです。
呼吸を極めるには...その先へ
たかが呼吸、されど呼吸...。呼吸を極めるためには、どうしたらいいのでしょうか。
「水の呼吸はいかなる攻撃にも対応できる受けの術。
だが極めるには常に呼吸を保つ心が必要になる。」
鱗滝左近次
先ほどご紹介したヨガの八支則では、呼吸法の先の行法として「感覚の制御」そして「高い集中と精神統一」へ段階が続いていきます。鬼滅の刃の戦闘シーンを見ると、以下の点は通じるものを感じます。
・呼吸...「今、この瞬間」に意識を全集中させる
・感覚制御...痛みに飲まれないよう制御する
・精神統一...揺るぎない意思力で敵に向かう
ただ身体と技を鍛錬するだけではなく「心」つまり精神を鍛えることを重視するのは、ヨガに限らず武道全般にも言えますね。
サマタ瞑想で「呼吸」に集中してみよう!
さいごに、ヨガ・マインドフルネスで行われる集中瞑想(サマタ瞑想)をご紹介したいと思います。
これは1つの対象に意識を向けるシンプルな瞑想です。意識が散漫で雑念が溢れ出てくるとき、止めよう・消し去ろうとするのではなく、ある対象物に意識を向けることで集中を保つ方法です。
この動画は、指にフォーカスした音声ガイドになっていますが、対象は何でも構いません。是非「呼吸」に置き換えてやってみてください。
八田幸子
日本声ヨガ協会代表(voiceyoga.jp)・ナレーター。20歳で単身渡印、ヨガ発祥地リシケシで講師資格(RYT200)取得。アナウンサー時代の悩みだった声枯れを改善するため独自の声ヨガプログラムを開発(youtube.com/c/VoiceYoga) マインドフルネス瞑想アプリ(relook.app)の企画・監修も手がけています。SNS:linktr.ee/voice_yoga
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