自己肯定感は高めないといけないの?自己肯定感にまつわる誤解|精神科医・臨床心理士が語るヨガの話
ヨガをすることで自己肯定感が高まる?
南:私のヨガの師匠である芥川舞子先生から、『ヨガをすることによって身体の感覚や思考・マインドがいい方向に変わるという恩恵を受けることもあるけど、必ずしもそればかりではなくて、今まで自分が気づかなかったことに気づく、あるいは気づかないようにしてきたことに気づくということもある』って教えてもらったんです。(ヨガをしていく中で)それぞれが抱えている葛藤や人生の課題に気づくこともあると思うから、必ずしも『高まる』っていう表現は違うんじゃないかなって。ちょっと嫌な話かもしれないけど、逆に自分に対して自信を失うこともあるかもしれないですよね。深まっていくが故に気づいてしまうというか。
陽子:ライフステージと共に、身体も変わっていくし、思考・マインドも変わっていくよね。例えば私の場合、ある時期は『どうしたら難易度の高いポーズができるようになるか』ということしか考えていなかったの。今は歳を経てそういう考え方も少し変わってきて。その時に必要なこと・感じることは違うと思うし、自己肯定感にたどり着くまでの、答え・プロセスも人それぞれなんじゃないかな。自己肯定感を高める!っていう最初にゴールありきなのが違和感なのかな?
南:そう!『高めるべき』っていうのが個人的に感じる違和感なんですよね、きっと。高めることがスタンダード、変わらない自分はダメなんじゃないかって思ってほしくないなと。
輝基:勘違いしてほしくないのは、高まるっていうから上下関係みたいな感じで考えてしまうんだけど、最終的に人としてのバランスが良くなる=自己肯定感が高まるっていうことなんだと思うんだよね。自分大好き!がゴールじゃなくて。
陽子:ヨガの助けを借りながら、自分の軸やバランスを見つけていくことが伝えたい本質なんじゃないですかね。
輝基:せっかくヨガと自己肯定感のお話なので…ヨガの八支側で考えると、自己肯定感の問題は【ヤマ】に当てはまると思うんですよね。『悪い方に行きすぎないようにする』というフレームにはまることによって、より良い方向に向かってく。そしてそこからニヤマなど段階が進んでいく。『最終的に、バランスの良い人間になっていこう』ということ=自己肯定感だと思うから、精神医学的に考えると、そういった枠組みがある程度作られていることが調子の悪い人たちにとっては逆に良かったりして。
陽子:なるほどね。これは人によって違うかもしれないけど、『私ってどうしたらいいんだろう』など、ヨガに答えを求めたい人って、導いてくれる・答えをくれる先生の影響が大きくて、その先生の言ったことが全てになりがちな気がする。自分にとって何が必要で、何がいらないのかを理解していないと思いも寄らない方向へ行ってしまうこともあるから、やはり自分の軸が求められるかもね。
次回は、昨今の自己肯定感ブームに、ヨガをするものが求められる姿勢は何か?について触れていきたいと思います。
プロフィール
中野 輝基
精神科医・MBA・RYT200・ Accessible Yoga Teacher
2018年よりMEDCAREYOGAを設立し、共同代表に就任。超高齢社会におけるコミュニティー造り・ヨガをよりアクセシブルにすることがライフワーク。フレイルヨガ®を様々な場所で提供し、地域のソーシャルキャピタルを造成している。
中野 陽子
日本麻酔科学会専門医/産業医・E-RYT200/YACEP・ Accessible Yoga Teacher
2018年にMEDCAREYOGA(メドケアヨガ)を設立、代表に就任。医療とケアとヨガの概念を融合し、人種、性別、障がい、社会的背景に関わらずコミュニティーを作り健康格差を改善する活動を国内外問わず行っている。
太田千瑞
臨床心理士・RYT200/RPRT85/RYCT95 Yoga.Ed チェアヨガトレーナー
教育行政・小中高のスクールカウンセラーとして、いじめ・不登校・発達障害などの相談に応じる。自分の価値に気づくツールとして、ヨガを予防的アプローチを提唱し、教員研修・保護者向け講演を行う。2019年初の著書「イラスト版子どもの発達サポートヨガ」を刊行。オンラインスクール「発達支援プロモーター」を運営し、キッズヨガインストラクターや先生・保護者向けに講座を開講する。2020年1月より悪性リンパ腫のため、入院加療後、完全寛解。がんサバイバーとして、どのような状況でも心を整える方法を発信中。学校教育にヨガ・マインドフルネスを教育課程として取り入れることをミッションとして活動している。
ライター/南 舞
臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。
Instagram: @maiminami831
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