運動しない人が抱える老後リスクとは|40代からの介護予防
2000年にWHOが提唱した「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。これをのばすために「変化に柔軟な40代から介護予防に向けて暮らしを整えるべき」と話すのは、シニアヨガ講師として多くの高齢者と関わってきた山田いずみ先生。その具体的な実践法とは。第5回は、「免疫力を高める運動習慣」を紹介。
40代からの運動習慣が、老後の体を変える!
一人暮らしのお年寄りで身の回りのことを自分で行える人は、筋力が衰えにくく、自立した生活を続けやすいもの。最近、仕事や家事、育児の忙しさを理由に運動する機会が減っている人は、早い時期から介護予防が必要になる可能性があります。
運動を行う具体的なメリットは、筋力アップに加え、脳や神経を刺激し、自律神経やホルモン分泌が活発になり免疫機能が向上すること。一方、運動不足のリスクは筋肉の衰え、ストレスの蓄積を招き、成人病を誘因する点にあります。
とはいえ、適切な運動量は一人ひとり異なり、間違った運動量と体の使い方をすると筋肉の疲労回復が追いつかず疲れが抜けないことも…。また、運動自体にストレスを感じては本末転倒です。
「大切なのは、継続的な運動習慣を身につけること。『1日何歩』など目標値を決めるとプレッシャーになるため、翌日以降に疲れが残っていないか観察し、自分の体質に合う『適切な運動量』を見極めましょう。
働き盛りの40代は忙しいと思いますが、老後も自立した生活が続けられるよう今のうちから運動を習慣にしてください」(山田いずみ先生)
誰でも簡単にできる3つの運動
今まで体を動かした経験がなく、スポーツが苦手な人も続けやすい運動習慣を3つご紹介します。
1.ヨガ
マットの上で行うヨガはハードルが高い場合、椅子に座って行うチェアヨガでも十分な運動効果を得られます。
2.散歩
ポイントは、正しい姿勢を意識すること。また、楽しみながら行う事でリフレッシュにも◎。
3.家事
洗濯を干す、お風呂を洗うなど日常生活の動作も筋トレにつながります。
有酸素運動もおすすめ!
山田先生がががおすすめする運動習慣は、有酸素運動。例えば最寄り駅の一駅手前で下りて歩いたり、太陽礼拝をしたりするのも効果的。有酸素運動は初期投資なしで始められ、心肺機能を上げて動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすコレステロール値を抑制。筋力増加、血行促進にも効果があります。
「運動を実践できるタイミングや快適と感じる運動方法は一人ひとり異なるため、受け売りの健康情報を鵜のみにせず自分がどうしたら快適になるか探ってください。ヨガには様々な流派がありますが、これから始める人はヨガ選びの基準に『体に無理なく継続できる』という視点を加えてみてください。
続いては、私が考えた毎日続けられる『15分ヨガ』をご紹介します」(山田先生)
介護予防のための15分ヨガ
「15分ヨガ」は、自律神経が走る背骨を呼吸に合わせて前後・左右・ねじって動かすのがポイント。自律神経が正常に働くと未病を防止でき、病気になりにくい体を作れます。また、15分以上深い呼吸を続けると、副交感神経が優位に働きリラックスモードになりやすくストレス軽減にも効果的です。
やり方
1.椅子に座り脚を腰幅に開き、背骨を伸ばす。両手は膝に置く。
2.肩甲骨を起点に吸う息と共に両腕を頭上に上げる。両手のひらを合わせ、目線は指先へ。
3.両腕を下ろし両手は膝へ。息を吐きながら骨盤から上体を丸めおへそをのぞき込む。②と③を3~5回繰り返す。
4.椅子に座ったまま脚をできるだけ広く開く。肩甲骨を起点に息を吸いながら右腕を頭上へ。
5.お尻が浮かないように注意し、息を吐きながら上体を左側に倒しお尻と右手の指先で引き合う。呼吸に合わせて④と⑤を左右3~5回繰り返す。
6.椅子に座ったまま脚を腰幅に開く。息を吸いながら左腕を体の前に伸ばし肩の高さでキープする。
7.息を吐きながら後ろを振り返るように、おへそを起点にして上体を左側にねじる。両膝は正面を向けて目線は指先へ。腕を体の正面に戻す。呼吸に合わせて⑥と⑦を左右3~5回繰り返す。
8.椅子に座ったままで脚を腰幅に開く。手のひらを上にして両腕を体の前に伸ばす。
9.息を吸いながら両腕を左右に開き肩甲骨を寄せて胸を開く。目線は斜め上へ。
10.息を吐きながら両腕で体を抱きしめ視線は斜め下。腕を体に巻き付けると肩甲骨が開きやすくなり、肩と背骨が整いやすい。⑨と⑩を呼吸に合わせて3~5回繰り返す。
11.椅子に座った状態で脚を肩幅に開き、両手で右膝を抱える。
12.息を吸いながら右膝を胸に引き寄せる。
13.息を吐きながら右脚を前方に伸ばし、壁を押す感覚で足裏を蹴り出し股関節の可動域を広げる。両腕を頭上に上げて体幹を強化。呼吸に合わせて3~5回繰り返す。
14.椅子に座ったまま脚を肩幅に開き、手は膝に置く。
15.両手をお腹に当て腹式呼吸をする。「吸って吐いて」で1回として、カウントしながら10回繰り返す。腹式呼吸で血行を促進、カウントすることで認知トレーニングにつながる。
16.手のひらを上にして両手を膝に置き瞑想する。「吸う」「吐く」と心の中で繰り返し、意識が反れたら戻し5分間行う。脳の活性化と精神の安定に効果がある。
「いかがでしたか?就寝前に行うなど、自分がやりやすいタイミングで実践してみてください。徐々に体の変化を実感できるはず!」(山田先生)
出典:厚生労働省「平成22年都道府県別生命表の概況」p18,20
教えてくれたのは…山田いずみ先生
インド政府公認ヨーガインストラクター、シニアヨガインストラクター、チェアヨガインストラクター、チョプラセンター認定瞑想ファシリテーター、マクロビオティックスクール・リマ師範科修了。自身の祖母が体操で元気になっていく姿を見てヨガインストラクターになる。 介護施設や公民館などで高齢者を対象にヨガを指導。自身も山梨県北杜市にて自然のリズムで暮らすホリスティックな生活を実践中。ヨガ以外にも、食養生、摘草料理、瞑想などの経験を、講座、ワークショップ、リトリートなどで人々に伝えている。
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