なぜ40代から介護予防が必要か|健康寿命をのばす「健幸習慣」とは【チェックリスト付き】

なぜ40代から介護予防が必要か|健康寿命をのばす「健幸習慣」とは【チェックリスト付き】
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2000年にWHOが提唱した「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。これをのばすために「40代からの準備が必要」と話すのは、シニアヨガ講師として多くの高齢者と関わってきた山田いずみ先生。その理由と実践法とは。第1回は、「介護が必要な体を招く原因と改善法」をご紹介します。

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尊厳を持って生きる!「介護されない体」とは

40代の方にとって介護予防を自分事と思える人はまだ少ないのでは。なぜ40代から介護予防を始める必要があるのでしょうか。介護施設のリハビリ現場でヨガを指導してきたシニアヨガインストラクターの山田いずみ先生にお話をうかがい、健康で幸せな老後のために今できることを考えます。

「私が考える介護されない体とは、年齢を重ねても自分らしく尊厳を保った状態、自信に満ちて心穏やかに暮らせる状態のこと。そのためには、身の回りのことが自立してできる、自分の脚で歩ける、老化による変化が穏やかで痛みや苦しみが少ない、家族の中や社会で生きがいとなる役割を果たせることが大切です。」(山田いずみ先生)

目指すのは「穏やかな老年期」を迎えられる体作り

山田先生が考える介護予防は、ある日突然布団の中で生涯を終える、いわゆるピンピンコロリを目指すものではありません。寝たきりで何年も過ごし、人の助けがないと生活できない状態が長く続き、自分の尊厳を保てなくなることを避けるための予防策です。

「自分らしさを保てるという主体的な満足感が得られる状態で老いていくことを目標に、体を保ち、心を養い、暮らしを整えることを提案しています。また、『絶対に転ばない』といった厳密さは設けず、加齢に伴う変化を柔軟に受け入れ、身体的変化をゆるやかにして自分の体を長く使うことを重視。心穏やかに老年期を生きられる介護予防を目指します。」(山田先生)

なぜ40代から介護予防が必要か|健康寿命をのばす「健幸習慣」とは【チェックリスト付き】
Photo by Kenji Yamada

介護が必要な体を招く3つの原因とは

山田先生が考える、介護が必要になる主な原因と、それぞれの理由とは?

原因1:アーマを溜める暮らし

アーユルヴェーダでは、「アーマ」と呼ばれる未消化物が体内に蓄積されると、ドーシャというエネルギーバランスが乱れると言われています。

アーマは不規則な生活、食べ過ぎ、運動不足などで体に溜まるだけでなく、我慢やストレスなどによる心のモヤモヤもあてはまります。アーマが溜まると肩凝り、慢性疲労、不定愁訴などの症状が現れて未病に、放置すると病気に発展し早い段階で人の手が必要な介護生活に突入してしまいます。

原因2:体の声を無視し続ける行為

体の声に耳を傾けない人は、不調が出ると原因を改めず薬でとりあえず症状を抑え、体のSOSを聞き逃した結果として大病を患うことも。女性の場合、月経痛がくるたび痛み止めを飲み、根本治療をしない人は、婦人科系の疾患を抱えていることがあります。

どんな対処をするべきか、何を食べるべきか、必要なものは体に聞くとおのずと答えがわかり重大な疾患を未然に防げます。自分と向き合う作業であるヨガをして、体の声を聞き逃さないようにしましょう。

原因3:家庭内や社会での役割の喪失

役割がある生活は生きがいをうみ、生きる意欲がわくと健康であり続けたい願望が芽生え、病気になりにくい体作りへの意欲がわいてきます。逆に家庭や社会というコミュニティで自分の役割を実感できない人は、健康意欲が低く介護状態になりやすい傾向があります。

なぜ、40代から介護されない体作りを行うのか

山田先生が介護施設で多くのシニアにヨガを指導する中で感じたのは、65歳を過ぎて生活習慣を変えることはストレスになるということ。だから、「変化に柔軟な40代から介護予防に向けて暮らしを整えるべき」と語ります。

「40代は少しずつ生活習慣病のリスクが高まる年齢でもあり、一度病気になると治療を経て生活習慣を整えるプロセスに入るため想像以上に気力と体力を要します。そうなる前に体を整える食事、睡眠、運動を取り入れましょう。

また、認知症予防においても40代からの健康習慣が大事。認知症の半数以上を占めるアルツハイマー型認知症は、発症する10年、20年前から原因物質のアミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積するため、認知症リスクを高める肥満や高血圧を40代から予防する必要があります」(山田先生)

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Photo by Kenji Yamada

3つの「健幸習慣」で健康で幸せな老後を迎えよう

年齢を重ねたとき健康で幸せに過ごせる体を作るため、40代から実践したい「健幸習慣」は次の3つです。

1.アーマを溜めない体を作る

まずは体と心に溜まったアーマの蓄積度をチェック。蓄積度が高い人は、アーマを溜めない体になるために山田先生が行っている5つの生活習慣を実践して。

アーマ蓄積度チェック:体編

☑食事への関心がわかない、食事時でもお腹が空かない
☑食べても味がしない
☑胸やけがする、酸っぱいものが込み上げてくる
☑下に苔がある、あるいは口内がねばつく
☑発疹やにきび、歯槽膿漏、化膿病変などができていて治りにくい
☑尿の濁りが強い
☑慢性の便秘や下痢がある
☑おならの臭いや体臭、口臭がつよい
☑関節やかかと、足の裏などが訳もなく痛む
☑寝て起きた時、体がこわばっている

アーマ蓄積度チェック:メンタル編

☑色々思い浮かぶけれど、集中力や注意力がない
☑怖い夢や不安な夢を見て疲れてしまう
☑心配で気持ちが落ち着かないことが多い
☑理由もなく腹がたち、人の欠点が目につく
☑何事をするにも気がすすまず尻込みしてしまう
☑何事にも興味が向かず投げやりな気持ちになる
☑不安や焦りなど、否定的な気持ちばかり浮かぶ
☑過去を思い出したりして、いつまでも後悔する
☑目が冴えて眠れないことが多い
☑何かと死にたい気持ちになる

アーマを溜めないための5つの生活習慣

・白湯を飲む
浄水を15分以上火にかけてカップに注ぎ、すするようにゆっくり飲むと体の中から浄化を促進。猫舌の人は常温でもOK。保温できるポットに入れて1日に1リットル程度を少しずつ飲む。

・朝のヨガと瞑想
朝日を感じながら太陽礼拝やその他のポーズを行い、心身を自然界のリズムに調律する。ヨガのポーズをすると内臓が活性化され朝食がおいしく食べられる。ポーズのチョイスは体の状態に合わせ、疲れているときはゆっくりほぐす動きを、体が重いときは速いペースでリズミカルに動いて。瞑想は朝の浄化時間に体だけでなく心もすっきりさせる意識で行って。

・軽めの夕食
早い時間に食べる軽めの夕食は体を軽やかにし、肥満、糖尿病、ひざ痛など様々な病気や不調の予防に効果的。消化に良いものをゆっくりいただき、揚げ物や高脂肪のものは避けて。夕食後に15分程度の散歩ができると消化が促進され睡眠の質を高められる。

・湯船に浸かる入浴
心身を浄化するつもりでぬるめのお湯にゆったり浸かる。だらだらと汗をかくと睡眠の質が下がるので注意。夕食後に入る場合は、2時間程の休憩をはさんで。

・就寝前の瞑想
22時までに就寝できると疲労回復が促され、明日への活力がみなぎる。就寝前は呼吸法や瞑想をして無判断の時間を5分程作ると思考が静まり良い睡眠につながる。腹式呼吸で心の中にある消化しきれない思いや煩いを手放した後、呼吸に意識を向けるだけのシンプルな瞑想を5分程静かに行って。

2.生きがいを持つ

人に必要とされ自分らしく誰かの役に立てる状況にある人は、おのずと健康行動をとることが多く、ヨガや食事などの健幸習慣を日常化する意欲につながります。

3.自分なりの前向きな死生観を持つ

心が良い状態でないと体を動かす気力がわきません。死は未知である故に怖さが先立ちますが、死に対して前向きな解釈ができると、ライフステージの変化や年齢を重ねることをプラスに捉えることができます。

死生観というと難しく感じますが、山田先生の場合はどのように解釈しているのでしょうか。

「私の場合、死は『END』ではなく『RESET』という感覚。現世で役割を終えたときに迎えるのが『死』であり、しばしの充電期間を経て新たな役割を得たときに『戻ってくる』。そう考えると死への恐怖が薄れ日々をいきいきと過ごせるのです。」(山田先生)

体と心の両面からアプローチし、軽やかな心身を維持することが介護予防の大切な一歩。まずは現在の習慣を変えることから始めてみませんか?

出典:厚生労働省「平成22年都道府県別生命表の概況」p18,20
出典:『アーユルヴェーダ入門―インド伝統医学で健康に!脈診・ヨーガ・マッサージ・食事などで病気と老化をふせぐ
出典:アルツハイマー病の病態発現仮説(京都府立医科大学)

教えてくれたのは…山田いずみ先生

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Photo by Kenji Yamada

インド政府公認ヨーガインストラクター、シニアヨガインストラクター、チェアヨガインストラクター、チョプラセンター認定瞑想ファシリテーター、マクロビオティックスクール・リマ師範科修了。自身の祖母が体操で元気になっていく姿を見てヨガインストラクターになる。 介護施設や公民館などで高齢者を対象にヨガを指導。自身も山梨県北杜市にて自然のリズムで暮らすホリスティックな生活を実践中。ヨガ以外にも、食養生、摘草料理、瞑想などの経験を、講座、ワークショップ、リトリートなどで人々に伝えている。

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Text by Ai Kitabayashi

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