世界的ヨガ指導者に聞くヨガレッスンのつくり方|シンディー・リー氏の場合
OMヨガセンターの創設者であり、アーサナとチベット仏教を融合させたシンディー・リーが、ゆったりしたフローヴィンヤサと瞑想を組み合わせたレッスンをどのようにつくっているか語ってくれた。
有名ティーチャーのシークエンスのつくり方|シンディー・リー氏の場合
ヨガマスターB.K.S.アイアンガーはかつてこう言いました。「私は足の親指を押し下げると胸骨がどうなるか探るために75年間を費やしてきました」。
あまりに含蓄のある言葉だったため、自分が長年ヨガに取り組むうえで糧としてきました。アイアンガー氏は、動きは必ず何らかの結果を伴うものであり、ヨギとして私たちがすべきことはこの因果関係に注目することだとよく語っていました。動きとその結果が調和しているとき、私たちはヨガなる経験をしているのです。この経験はアイアンガー氏が統合と呼んでいたものです。
アーサナはこの哲学を体現するのに最高の媒体です。私はシークエンスをつくったりレッスンの構成を考えたりするときには、動きがどのくらい重要であるか考えます。また、1回のレッスンの中でヴィンヤサとマインドフルネスを組み合わせることを心掛けています。
ヴィンヤサの練習は「特殊な方法で体の位置を定めること」、マインドフルネスは「意識的に心の位置を定めること」だと定義できます。湧き上がってくる感覚と消失していく感覚に対してどうやって体と心の位置を定めるかを意識することによって、皆さんがしているヨガを運動から経験へ、分離から統合へと変容させることができます。ポーズを構成する微細な動きをとっているときに、この視点がふっと体に入ってくることがあります。
今回のシークエンスでは、極めて重要な小さな動きをどこでどのようにとり始めるのか、そして、その動きがどんなふうに基本的なポーズや複雑なポーズを構成していくのかに注目して、体の位置と動きの違いを探っていきます。ひとたび体の力学を理解すれば、このような動きと位置の関係がアーサナのいたるところにあることがわかります。
私のレッスンでは、体の配置に注目するのではなく、特定の動きを繰り返すことによって体の配置が統合されていく様子に注目します。たとえば、スーリヤナマスカーラ(太陽礼拝)の慣れ親しんだ動きをするときにどのように脚を動かすか考えていれば、もっと複雑なポーズでどう脚を働かせばいいかわかってくるでしょう。また、ダウンドッグスプリット(片足の下向き犬のポーズ)を丁寧に行って、太腿の付け根を引き上げることからこの動きを始めれば、いずれハンドスタンド(下向きの木のポーズ)につながっていくかもしれません。一方、動きがもたらす結果を考えずにこのポーズを行ったら、脚を空中に振り上げてしまうでしょう。このように勢いを利用すると、苛立ったり感情的になったりして、うまくいくことは滅多にありません。
動きの因果関係を理解したうえで細かい点まで意識して動くと、ヨガの練習にも日々の生活にも変化が生まれて、力んで反応する傾向が弱まっていきます。私はこのような傾向が現れないように、レッスンの中で目印となる重要な動きを設けています。
このシークンエンスでは、息を吸うことと吐くこと、上に伸びる動きと下に押す動き、押し込む動きと傾ける動き、前方に伸ばす動きと後方に伸ばす動き、腕と脚の内旋と外旋、というように動きを1対のものとして捉えています。この動きの関係はどれも、ヴィンヤサのレッスンで動きながら追求できます。フローを中断する必要も、長時間練習する必要もありません。触ることによって自分で調整して、それを自分に刻みつけて、練習中に何度も確認します。それが心と体の対話になります。レッスンの最後までこれを続けて、最後はただ横になり、あらゆるものを手放し、ヨガの練習を信頼します。
STEP1:ウォームアップ
1. ヴァジュラーサナ(稲妻のポーズ)
ヴァジュラーサナ(稲妻のポーズ)で座り、手のひらを太腿にのせる。目を閉じて呼吸を見つめる。呼吸をサマヴリッティ(均等呼吸)に整えていく(具体的には、吸う息を5カウント、吐く息を5カウントというように同じ長さにする)。心が落ち着いたら目を開ける。両腕を引き上げてまず右側に、次に左側に側屈する。体を右側にねじり、次に左側にねじる。体の後ろで指を組み、少し後屈して胸部を引き上げたら、手を解いて自分を抱きしめる。この単純なウォームアップを繰り返すことによって、息を吸いながら体を上げて開く動きと、息を吐きながら体を下げて閉じる動きを釣り合わせる。これは動くサマヴリッティになる。
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