「突き動かされるようにヨガ講師の道へ」中村優希さんの転身ストーリー
生徒さんから圧倒的な支持を集め、メディアやイベントでもひっぱりだこのヨガ講師たち。そんな彼らに共通しているのは、「セカンドキャリア」としてヨガ講師を選んでいるということ。彼らの転身までの背景を知ることは、「どうしてヨガ講師として成功できたのか」に結びついているに違いない、そんな思いからスタートした企画。異業種からヨガ講師へ転身した彼らの、決意、行動、思いから、「本当に良いティーチャーとは」という講師の素質にも迫ります。
♯CASE5「アパレルメーカー営業職」からヨガ講師への転身ストーリー
存在そのものに癒しのオーラが漂い、場の空気を和ませてくれる中村優希さん。アロマやマッサージを取り入れたリラックス系のヨガレッスンが得意と聞いて思わず納得。心から伝えたいと思うヨガに出会うまでの道のりや、自身のブランディングへのこだわりについて、穏やかさの中に秘めたヨガへの情熱とともに語っていただきました。
――ヨガ講師になる前は、どんな職業をされていたのですか? また、ヨガに出会ったきっかけを教えてください。
「体育大学の卒業を機に13年間続けていた新体操を引退し、その後はバレエ、ダンス用品、ヨガウエアを扱うチャコットに新卒で入社しました。配属されたのは、新体操部門の営業職です。選手時代に使っていたレオタードや道具はすべてチャコット製だったので、これも何かのご縁ですね。選手の目線で商品の魅力を語ることができたり、デモンストレーションをしながら道具の使い心地をプレゼンでき、説得力のある営業がよい結果につながっていました。ヨガは新体操を引退し、チャコットに入社した頃に始めました。営業の仕事にやりがいを感じていましたが、数字に追われる毎日はやっぱり大変。
精神的な疲れや運動不足からスポーツジムに通い始め、そこで初めてヨガクラスに参加したんです。体が柔らかいので「ヨガなんて簡単!」と鷹をくくっていたのですが……。やってみると想像以上に奥が深く、体の使い方一つを取っても初めて知ることばかり。シャヴァーサナの後に味わった霧が晴れるようなスッキリ感も新鮮で、ビビッときました(笑)。ヨガをもっと知りたい、いつか自分もヨガ講師になりたいと思い、レッスン後に担当してくれたインストラクターのもとへ。指導者資格を取れるスクールがあると教えてもらいすぐに資料請求をしたところ、最初に連絡をくれたYMCメディカルトレーナーズスクールに入校しました」
――すごい情熱と行動力ですね! では、資格を取ってすぐにヨガ講師に転身されたのですか?
「実は入校した頃は、将来結婚して生活が落ち着いた頃にヨガ講師になれたらいいな、くらいの感覚でした。でも、スクールに通ううちに教えることにどんどん興味が沸いてきて、卒業して何も行動していない自分にもどかしさを感じてしまって。このまま営業の仕事を続けるか、それともヨガで独立するか。悩みながら半年経ったある日、「行動しなくちゃ始まらない!」と思い立ち、その日のうちにアポイントも取らずYMCに相談に行きました。嵐のように吹き荒れる台風の日でしたが、もうじっとしていられなくて(笑)。
「ヨガの仕事がしたいけど、どうしていいかわからないんです!!」と訴える私に耳を貸してくれたのは、人気ヨガインストラクターの佐藤ゴウ先生でした。「ヨガを通して伝えたいことは?」と、質問するゴウ先生。私が熱く語るうちに、気づいたら面接が始まっていて……。「私がそうだったように、人生を豊かにしてくれるヨガの魅力を伝えたい」。そんなふうに答えたと思います。その熱意を買っていただき、当時スクールがヨガ講師を募集していた幸運も手伝い営業職を辞めてYMCに入社し、ヨガインストラクターに転身したんです。でも、1年後、家庭の事情で転職を余儀なくすることになってしまって。その後は、大手金融企業で受付の仕事をしながら収入を安定させ、ヨガの仕事を少しずつ増やし、ヨガ一本でやっていけるように努力していきました」
――いつも落ち着いたトーンで癒しのクラスを展開される中村さんですが、もともと人前に話すことは得意だったのですか?
「いえ、ヨガ講師を始めたばかりの頃は、とにかく人前で話すことが苦手でした。間違えてはいけないと思うと緊張が高まり、頭の中は真っ白に。シャヴァーサナ中に電気を消し忘れたこともありましたよ。評価を気にするあまり生徒さんの顔を見られず、淡々とポーズを披露するだけのクラスをしていました。
無表情な生徒さんがいると不安になり、YMCの先輩インストラクター鈴木伸枝先生に相談したところ、「それは集中している証拠。求められているのは上手なトークではなく、心地よくなれるレッスンだから、そのための環境作りをするのが先生の仕事」というアドバイスを受けたことを転機に、言葉やアジャストは「快適にヨガをするためのサポート」と考えを切り替えたら、自然体スタイルでクラスに臨めるようになりました」
――「アロマヨガ」の分野で活躍されている中村さんですが、指導経験を積む中で「自分らしさ」をどのように確立し、ブランディングされたのでしょうか?
「幅広い人にヨガを伝えたくて、最初の頃はキッズヨガやマタニティヨガ、海好きの人に向けてサップヨガの資格も取りましたが、段々と自分が伝えたいヨガが見えなくなったんです。そんなとき、「中村先生のクラスはリラックスできる」と言ってもらうことが増え、私が与えられるのは「癒し」なんだ、生徒さんがリラックスする姿を見ることが自分の喜びなんだと気づき、アロマヨガなどリラックス系のヨガを自分の軸に据えるようになりました。
迷ったときは、まず指導する自分が心地よくいられるヨガを自問してみると、軸が見えてくると思います。それからは、中村優希=リラックスヨガのイメージを定着させることを心がけています。たとえば、リラックスヨガのイメージに合う優しい色のウエアを選ぶのもブランディングのひとつ。チャコットの営業担当だった頃、新体操チームの衣装選びも担当し、衣装の色やデザインが演技の印象を大きく左右すると実感しました。その経験を思い出し、ブランディングに視覚からの効果を取り入れています」
――前職で身につけたどんな経験やスキルが、ヨガインストラクターをするうえで役立っていると感じますか?
「一つは、記憶力です。相手の顔と名前、会社名を覚えるのが得意で、受付の仕事では来客の対応を安心して任せられると褒めてもらったことも。お客様の情報を記憶しておくと、商談の際に会話が弾み営業職でもお客様と信頼関係が築きやすかったです。ヨガの生徒さんに対しては、顔と名前はもちろん、体調まで覚えておくと、次回会ったときにその人に寄り添う声掛けができ、記憶力は信頼関係を深める鍵になると思います。
企業で社会経験を積んでヨガインストラクターになったので、仕事上のコミュニケーションスキルが身に付いているのは幸いでした。常連の生徒さんとは友達感覚になりがちですが、一定の距離感があってこそ冷静に相手を見てニーズを掴めると思うので、仕事意識を忘れないようにしています」
――ヨガインストラクターを目指している方たちにメッセージをお願いします。
「スクールで学ぶ期間は、知識を吸収することで精一杯だと思いますが、それで満足せず積極的に実践経験を積んでください。その中で自分の伝えたいヨガが明確になり、自分らしさに辿り着きます。そして、「先生」と呼ばれることに慣れてきたときこそ、謙虚だった初心に立ち返って。たくさんの先生の中から自分を選びクラスに足を運んでくれた感謝の気持ちを言葉や態度で示し、敬意を持って生徒さんに接することができると、強い信頼関係が築けると思います」
――最後に、ヨガ講師としての今後のビジョンについて教えてください。
「ヨガだけでなく、アロマ、マッサージ、アーユルヴェーダなど、心身のリラックスにつながる引き出しや知識を増やしていきたいです。昨年、タイで資格を取ったタイ古式マッサージを取り入れたクラスも展開していけたら。プライベートヨガの機会も増え、生徒さんと一対一で向き合うようになると一歩踏み込んだ悩みを聞くこともあるので、カウンセリングができるヨガインストラクターになるのも目標の一つ。私の軸である「癒し」をテーマに、活動の幅を広げていきたいと思っています」
中村優希さん
ヨガインストラクター。LANI YOGA主宰。幼少期から大学まで13年間新体操を続け、引退後ヨガに出会う。アジア最大級のヨガイベント「ヨガフェスタ横浜」に2015年より3年間出演。ヨガ雑誌などで監修やモデルも多数務める。レッスンは、都内ヨガスタジオ、プライベートレッスン、企業ヨガなどを担当。シニアヨガインストラクター、マタニティヨガインストラクター、SUPヨガインストラクター、AEAJ認定アロマテラピーアドバイザーなどの資格を取得している。
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