【腕が思うように上がらないなら試して!】考え方を知るだけで体が動く!体を支えるための新しい思考法
何も考えずに習慣に任せて体を動かしていると、体に不調を起こすことがあります。このコラムは、緊張と動作の関係性を探究しているアレクサンダーテクニークの実践者が、無意識に入ってしまう余計な力みによって引き起こされる痛みや違和感について、解剖学的な視点を交えて考察するシリーズです。そして、考え方を変えるだけで体の使い方まで変える方法を提案します。36回目のテーマは「腕が思うように上がらない」です。
腕が上がらない要因は良い姿勢の気にし過ぎ
腕が上がらないという悩みは多くの人にあります。年齢とともに肩周りの筋肉が炎症を起こし、ひどい痛みを伴う四十肩・五十肩はその代表です。それ以外にも、ケガをしたわけでもなく、痛みもないのに、肩や腕の筋肉が萎縮して、腕が思うように上がらないケースもあるようです。四十肩・五十肩であれ、それ以外であれ、腕や肩に不調があるときは専門家のもとで肩や腕の筋肉のストレッチ、運動の訓練などをする必要があります。
それに加えて、腕が上がらない要因が肩・腕だけに留まらないこともあります。肩・腕は鎖骨や胸骨、肋骨を通して、体の軸である脊椎につながっています。それ故、脊椎をどう捉え、どのように胴体を支えようとしているのかが、腕の上げ下げのカギとなることがあります。
例えば、良い姿勢を心掛けて、背すじを伸ばすことが習慣になってはいませんか?
背すじを伸ばすことに執着して背中を緊張させる
「良い姿勢=背筋を伸ばす、背中をまっすぐにする」という定義があると、意識は背中ばかりに向きます。また、胴体を支えているのは脊椎ですが、脊椎に触れて体感できるのが首の後ろのデコボコしたところなどの背面なので、姿勢を思うときには余計に背中という体の一部に捕われます。
体の一部に意識を集中させれば、どうしてもその部分が緊張します。良い姿勢で背中を意識した場合、胸を張って肩甲骨を寄せたり、脇を締めたりして、背中を必要以上に力ませるのです。そうすると必然的に、腕を胴体につなげている肩甲骨や鎖骨の可動性を狭めることとなり、結果として腕が思うように上がらなくなります。
そこで腕を自由に動かすには、頑張って背すじを伸ばした良い姿勢よりも、“頑張らない良い姿勢”を目指したいものです。
“頑張らない良い姿勢”のためのイメージ法
では、良い姿勢として背すじを伸ばすことが習慣になっているなかで、その習慣をやめるにはどうしたらいいのでしょう?
筆者は「体を支えているのはどこかを思い出す」という方法を提案します。
1. 脊椎の構造を確認する
図のように、頚椎、胸椎、腰椎で大きさや形状に差はあっても、脊椎を構成する椎骨は、おおまかに前側の椎体と後ろ側の突起の2つの部分に分けられます。突起の部分が首の後ろや背中にあるデコボコですが、体を支えているのは椎体の方。
しかも上下に重なる椎体の間には椎間板という分厚いクッションが挟まれています。
2.「体は椎体で支えている」と思う
1を踏まえて、「私たちの体は脊椎の椎体で支えている」と思ってみましょう。前側の椎体を意識することによって、背中で頑張って支えていた人は重心が移動するはず。
また、椎間板というクッションも合わせて思い出せば、安定感がありつつも自由に動けるようになるでしょう。
このように良い姿勢に対する概念に新しいアイデアを取り入れることで、無意識に頑張っていたことをやめることができます。さらには手足をより自由に動かすことにもつながるので、ぜひお試しください。
AUTHOR
ホタカミア
ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。
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