【発汗、うつ、疲労感…症状別】50代前後の更年期症状を緩和「ホルモンバランスを整える」簡単ポーズ

 【発汗、うつ、疲労感…症状別】50代前後の更年期症状を緩和「ホルモンバランスを整える」簡単ポーズ
Ian Keefe Darius Bashar Jakob/Stocksy

ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!多くの女性が回復を促すポーズを含むヨガによって、ホットフラッシュなどの更年期症状を改善できている。

広告

"48歳のアリソンは急にほてりや発汗に襲われるようになった。夜中にもたびたび起こるのでそのたびに眠りが妨げられた。"

この閉経周辺期の症状は我慢できないほどではないが、とにかくわずらわしかった。そのうちに生理周期が乱れ始めた。「突然経血量が増えて、期間が倍になったんです。なかなか生理が終わりませんでした」とシカゴ在住のアリソン(希望により苗字は非公開)は話す。婦人科医からは、更年期症状をコントロールするためのホルモン補充療法(HRT)を薦められた。「症状がひどければ放置しないように、と医師からは言われたけれど、できれば療法を試さずに乗り切りたかった」
彼女がHRTを躊躇したのには理由があった。エストロゲンとプロゲステロンのレベルを人為的に上昇させるこの治療法は、近年は慎重な経過観察のもとに行われている。研究では乳がん、心臓病、脳卒中、生命を脅かす疾患のリスクを高めることが判明している。
月経周期が不規則になってまもなく、アリソンはいつも通っているスタジオ”ヨガサークル”のクラスで、月経不順による不調に対処するために考案されたアイアンガーヨガシークエンスを学んだ。シークエンスにはスプタヴィーラーサナ(仰向けの英雄のポーズ)、スプタバッダコナーサナ(横たわった合せきのポーズ)、頭を支えて行うジャーヌシールシャーサナ(頭を膝につけるポーズ)など、リストラティブ(回復)ポーズが多く含まれていた。次の月経が始まると、アリソンは毎日このシークエンスを練習した。すると経血量が正常に戻った。この結果に勇気づけられた彼女は、HRTを受けずに自分で更年期症状をコントロールしようと考えた。ヨガで症状を緩和できるかもしれないと思ったのだ。その直感は正しかった。実際、多くの女性がヨガによって更年期症状を改善できている。

ヨガでホルモンバランスを整える

閉経とは単に月経が止まることだが、その移行には数年かかるのが通常だ。この期間は更年期と呼ばれ、一般的に45歳から55歳頃の女性が経験する。更年期にはエストロゲンとプロゲステロンの量が大きく変動するため、さまざまな不調が起こりやすい。代表的な症状はホットフラッシュ、不安、イライラ、不眠、疲労、うつ、気分の浮き沈み、記憶力の低下、月経周期の乱れなどだ。
これらすべての症状を経験する女性は少ないものの「推定55〜65パーセントの女性が何らかの軽い更年期症状を自覚している」とカリフォルニア州トーランスにあるハーバーUCLA研究教育院のローワン・クレボウスキ医学博士は述べている。約25パーセントは日常生活にほとんど支障がない程度だが、約10〜20パーセントは衰弱するほど深刻な症状に苦しんでいることが報告されている。
ホルモンは、女性のライフステージの変化に沿って変動する。そのたびに思春期のにきび、気分の浮き沈み、妊娠中のつわり、産後うつなどさまざまな不調が生じやすくなる。「更年期も例外ではありません」と『A Woman's Best Medicine for Menopause(女性の更年期のための最高の治療)』の著者、ナンシー・ロンズドルフ医学博士は言う。

更年期に入るまでは、月経周期は脳の基底部にある視床下部によって毎月定められている。この小さな組織は、食欲や体温など多くの身体機能を調節している。視床下部は、下垂体に生殖を司る重要なホルモンを分泌するように信号を送り、そのホルモンが卵巣でのエストロゲンとプロゲステロンの生成を促す。更年期になると、卵巣と下垂体は綱引きをしているような状態になる。卵巣がホルモンの分泌を減らす一方で、下垂体はホルモンの減少を察知して卵巣を刺激し続けるのだ。このせめぎ合いの結果、エストロゲンが過剰に分泌されて体が活性化し、それに反応してプロゲステロンが過剰に分泌されて体が鈍化するというように、不規則なホルモンの変動が引き起こされる。

「ホルモンは非常に強力で、体のあらゆる組織に影響を及ぼす」とロンズドルフは言う。「ですから、体がホルモンの変化に適応しようとするときにさまざまな症状が出るのは不思議ではありません。たとえば、脳が不規則にホルモンの影響を受ければ、睡眠、気分、記憶などすべてに影響を及ぼすでしょうし、子宮が散発的にホルモンに刺激されれば不正出血が起こります」
多くの女性は閉経の約6年前に、このホルモン変動による最初の兆候を経験する。これらの更年期症状は一般的に最後の生理から1年以上経過し、ホルモンのレベルが徐々に安定するまで続く。閉経後は卵巣からの女性ホルモンの分泌が減少するが、骨を健康に保ち、膣の乾燥などの症状を防ぐために、体はまだある程度のエストロゲンを必要とする。そこで重要な役割を担うのが腎臓の上の副腎だ。副腎から分泌される男性ホルモンによって、脂肪細胞からエストロゲンが生成されるからだ。それでも、体は前よりはるかに少ないホルモンに適応しなくてはならない。
この避けられない生理的変化が多くの女性に与える影響の大きさから、1960年代後半になると研究者たちは更年期症状の解決策を模索するようになった。そこで提案されたのがHRTだった。エストロゲンの減少で不調が生じるなら、足りないホルモンを補充すれば解決すると推測したのだ。また科学者たちも、体が慣れているホルモンレベルを維持すれば、症状は和らぐはずだと考えた。
HRTは、更年期症状を緩和するための根本的な解決法となった。だが主要な研究において深刻な副作用をもたらすことが判明すると、より自然な解決策を求める女性が増え始めた。ヨガに希望を託した人たちは、アーサナがエストロゲンの生成に直接関与はしないものの、特定のポーズが症状を和らげることに気づいた。特にリストラティブポーズ群は、神経系を静め、内分泌系(特に視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺)の機能を改善し、体がホルモンの変動に適応するのを助けてくれる。

更年期症状を緩和する

ヨガインストラクターのパトリシア・ウォールデン(57歳)は、ヨガが更年期の不調をどれほど和らげるかを身をもって知っている。多くの女性と同様に、彼女にも次々と特有の症状が現れた。最初はホットフラッシュ、それから1年は疲労と不眠に悩まされた。夜中に目が覚めて、それから3時間眠れないこともよくあった。
ウォールデンは、症状が強い時は通常のヨガ練習を見直す必要があると感じた。毎日精力的に練習することに慣れていたが、支えのない逆転ポーズや力強いポーズ、後屈のポーズが症状を悪化させると気づいたのだ。そこで神経を静めるために、支えを用いたポーズやリストラティブポーズに目を向けた。逆転のポーズはやめなかったものの、支えのないシールシャーサナ(三点倒立)の代わりに、ボルスターを使うセツバンダサルヴァーンガーサナ(橋のポーズ)や、椅子を使ったサーランバサルヴァーンガーサナ(支えのある肩立ちのポーズ)に切り替えてみた。これらの工夫によって、ウォールデンは体に負担をかけず、多量の汗をかかずに、不安やイライラを和らげる逆転ポーズの効果を享受できるようになった。
症状が軽くなるにつれ、ウォールデンはヨガがホルモンの変動による不調を和らげる有力な手段になり得るという確信を深めていった。そして同じような悩みを抱える女性たちと交流するようになり、更年期症状を抱える女性に特化したヨガシークエンスを考案した。さらにリンダ・スパローと共に、『WOMAN'S YOGA BOOK-女性のヨガライフ実践書(The Woman's Book of Yoga & Health:A Lifelong Guide to Wellness)』を出版した。「以前から女性特有の問題に興味はあったけれど、実際に更年期を経験して、より意識するようになりました」と彼女は言う。
定期的なヨガ練習は、更年期体験に大きな違いをもたらす可能性がある。また、更年期前から練習を積んでおけば、その移行期を楽に過ごせる、と『Yoga and the Wisdom of Menopause(ヨガと更年期の知恵)』の著者スーザ・フランシナは言う。
「更年期に入る前からヨガを練習していれば、不快な症状に対処するポーズにも既に慣れ親しんでいるので、無理なく行えるでしょう。リストラティブポーズに精通しているなら、最高の更年期治療薬を手にしているようなものです」

広告

by TRISHA GURA
photos by Ian Keefe Darius Bashar Jakob/Stocksy
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.85掲載

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部ロゴ

ヨガジャーナル日本版編集部

ヨガジャーナル 日本版編集部



RELATED関連記事