【発汗、うつ、疲労感…症状別】50代前後の更年期症状を緩和「ホルモンバランスを整える」簡単ポーズ
更年期症状別のヨガポーズ
ここでは最も一般的な症状について説明し、その症状を和らげるための具体的な方法を紹介する。
ホットフラッシュ
ホットフラッシュは、更年期の女性の約80%が経験する最も一般的な(そして謎めいた)症状のひとつだ。体温が上がり、脈拍が速くなるのが特徴で、顔から首、腕にかけて赤みが広がる。ほてりはすぐに収まることが多いが、その後、体が体温の変動を直そうとするために寒気や不快感を覚えることがある。
諸説あるものの、ホットフラッシュを引き起こす原因はまだわかっていない。視床下部が関与しているという説や、体内のホルモンの変動が血管や末梢神経を刺激し、血管が過度に拡張してほてりやのぼせを生じさせるという説もある。ストレス、疲労、激しい運動が症状を強める傾向があることは、多くの研究者(そして更年期の多くの女性)が認めている。
ウォールデンは、鎮静と回復のためのポーズを積極的に行うことを提案している。体を締め付けたり緊張させるとホットフラッシュが悪化する場合があるので、ボルスターやブランケット、ブロックなどのプロップスを使って、体全体を支えるとよいだろう。たとえば、前屈で頭をボルスターや椅子にのせると、脳を落ち着かせ、神経を鎮静させることができる。また体を支えながら行う仰向けのポーズは、深いリラクセーションを促す。「横たわった合せきのポーズ」や「仰向けの英雄のポーズ」では腹部がゆるみ、胸とお腹の緊張がほぐれる。また、アルダハラーサナ(半分の鋤すきのポーズ)で脚を椅子にのせると、過敏になっている神経が静まる。
もの忘れ
更年期になると、突然思考が停止したり、考えがまとまらなくなる女性も多い。この思考力の低下は、ホルモンレベルの変動が大きいときによく起こる。思春期、妊娠中、出産直後もこのようなブレインフォグの状態(頭に霧がかかったような状態)に陥りやすい。特に睡眠不足や気分の動揺により症状が悪化している場合、多くの女性がヨガによってモヤモヤを解消できると感じている。後屈や胸を開くポーズ、逆転のポーズなどうつ状態に効くポーズは、集中力を高めるのにも役立つ、とウォールデンは言う。
さらにアドームカシュヴァーナーサナ(下向きの犬のポーズ)は脳に血液を送り、深い呼吸を促すので、精神を覚醒させる。また、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)は神経を静めて心を落ち着かせ、体を休息へと導く。
これらのアーサナは、女性が更年期を乗り越え、さらにその先へと進むための手段のひとつに過ぎない。ヨガをやったことがない人にも、体が制御不能だと感じるときにヨガは大きな助けになるだろう。長年練習している人は、この機会に自分の体に合わせた練習に修正してはどうだろう。そうすれば、ヨガの効果は生涯を通じて得られる。「特にこの更年期の間、私はヨガからたくさんの素晴らしい恩恵を受けています。ヨガのおかげで体は改善され、精神的な浮き沈みを乗り越えられています」とアリソンは言う。
不安感、イライラ、不眠症
閉経前後はエストロゲンが急増(またはプロゲステロンが激減)するため、心配や緊張、フラストレーションが生じやすい。また、副腎が疲弊して過剰な負担がかかると、不安や強いイライラを感じやすくなる(副腎はストレス、食生活の乱れ、睡眠不足に対応し続けると消耗する、と多くの代替療法士は考えている)。
人がストレスを受けると、交感神経系は心拍数を上げ、消化管の筋肉を鈍らせ、脳への血流を増やしてストレス要因に対抗しようとする。
ひとたびストレスが解消されると、今度は副交感神経系が反応して心拍数を通常に戻し、消化管の平滑筋を刺激して体のシステムのバランスを取り戻そうとする。
だがストレスが続くと、ストレスに対抗するホルモンや、エストロゲンに変換される男性ホルモンを生成する交感神経系と副腎が過剰に働くようになる。
ウォールデンは、ウッターナーサナ(立位前屈)やプラサリタパードッターナーサナ(立って両脚を伸ばすポーズ)などの前屈を頭をボルスターや毛布にのせて行うと、イライラや精神的緊張を抑えられる、と話す。前屈をして外部からの雑念や刺激を遮断すると、心が落ち着き、ストレスによる影響を軽減できるからだという。そのようにして神経系が「もう問題なし」という信号を受け取ると、副腎と交感神経系の働きは通常に戻る。
不眠症に悩まされている人は、逆転のポーズが効果的な場合がある。体のエネルギーがグラウンディングされ、過剰な不安が軽減されるためだ。その後にリストラティブポーズを行うと深い休息が得られる。
疲労
更年期の女性が訴える症状の中で、ほてりに次いで多いのが疲労感だ。特に疲労がうつや無気力と結びついている場合は、プロゲステロンの低下が原因かもしれない。何日も何週間も疲労感が抜けない時は、副腎疲労の可能性もある。
どちらの場合も、ウォールデンは支えを用いた軽めの後屈を薦めている。胸とハートが大きく開かれ、新たな活力や決意、喜びを感じられるからだ。なかでも彼女が特に薦めるスプタバッダコナーサナ(横たわった合せきのポーズ)は深い回復をもたらすポーズで、安全で満たされた感覚が得られる。また、体を完全に支えた状態で行うと胸が大きく開き、呼吸と血流が改善され、気分を高めることができる。
うつと気分の浮き沈み
更年期は出産年齢の終わりを告げるものであり、多くの女性にとって青春の終わりを嘆く時期でもある。長く続く疲労感に加え、かつて知っていた人生が終わったという憂鬱な感覚は、うつ状態の引き金になる場合がある。プロゲステロンの急増(あるいはエストロゲンの激減)も、気分の落ち込みから重度の臨床的なうつ病に至るまで、あらゆる症状を引き起こす可能性がある。
だがヨガの実践者たちは、体で行うすべてのことが、思考や態度に影響を与えると昔から知っている。ほんの少し姿勢を変えるだけで、暗い気分が和らぐときもある。堂々と胸を張り、自信を持って歩いてみよう。そうすれば、自分が地に足をつけていて、幸せで、周囲と調和して生きていると世界に(何より自分自身に)伝えられる。
ウォールデンは、特定のポーズが心にポジティブな影響を与える精神状態を生み出すことを発見した。「後屈は特にサポートのある状態で行うと、体が軽くなる感覚をもたらします。後屈は副腎を刺激し、マッサージ作用で活性化します。また心臓と肺が開き、より多くの酸素を取り込めるようになります」と彼女は説明する。胸を開くポーズは、呼吸と血流を改善して体に活力を与え、憂鬱な気分を軽減する。また、多くのヨギが、肩立ちのポーズなどの逆転のポーズが落ち込んだ気分を改善すると気づいている。「すべてを逆さまにする逆転のポーズは、感情にポジティブな影響を与えます」とウォールデンは言う。上で提案したような、支えのある逆転のポーズを試してみよう。
文●トリシャ・グーラ
フリーのサイエンスライター。ボストンでヨガを学んでいる。trishagura.com
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