「体育座り」は身体に悪い!?理学療法士が解説!8種類の座法と体に負担の少ない座り方
理学療法士の堀川ゆきさんが、「体育座り」が身体に悪いと考えられる理由を解説します。
体育座りは身体に悪影響
私たちの幼い頃から、体育の授業や集会でおなじみだった「体育座り」。当たり前だったあの体育座りが、近い将来廃止になるかもしれません。
実は体育座りは、世界でも日本でしか見られない珍しい座り方だそうです。内臓を圧迫し、腰痛や座骨痛が出るなど身体への悪影響が以前から指摘されていました。
ヨガの座法いろいろ
ヨガには様々な座法(座り方)があります。ヨガの座法とその特徴をいくつか写真で紹介します。
安楽座(スカーサナ)
あぐらのことです。比較的長時間安定して座っていられる座り方です。一方であぐらはお行儀が悪いとの見方もあります。骨盤が後傾してしまい猫背になりやすいのと、股関節の外旋の柔軟性が不足しているとあぐらは困難だったり、膝関節が捻られて負担をかけることがあります。
英雄のポーズ(ヴィラーサナ)
割り座やアヒル座りとも言われます。正座と違い踵の上にお尻を乗せずに、踵をお尻の横に持ってくる座り方です。正座のように血流が圧迫されて足が痺れる心配がほぼありません。股関節の内旋の柔軟性が必要で、膝を捻る座り方のため膝関節に負担をかけてしまいます。
蓮華座(パドマーサナ)
ロータスポーズとも言います。足の甲を反対側の鼠径部に乗せて、両脚をしっかり組み合わせます。股関節・膝関節・足関節の柔軟性が必要なため、少し難度の高い座り方です。
杖のポーズ(ダンダーサナ)
両脚を前に伸ばして座る長座(ちょうざ)のことです。比較的長い時間負担なく座っていられる姿勢ですが、もも裏のハムストリングスが硬かったり体幹が弱いと、骨盤が後傾してしまい猫背になりやすいです。
稲妻のポーズ(ヴァジュラーサナ)
正座のことです。日本では古くから行儀のよい正式な座り方とされてきました。しかし、正座は膝の正常な屈曲角度をはるかに超えるため膝関節に負担がかかります。また、正座は脚を痺れさせて、一時的に血流が低下してしまうという研究報告があります。
ヨガの座法ではないですが、他にもいろんな座り方があります。
横座り
お姉さん座りや女の子座りともいわれます。正座から両脚をどちらか一方へ流した姿勢をいいます。太ももの骨である左右の大腿骨がそれぞれ逆方向に捻れ、骨盤が一方に傾き、背骨がC字にカーブするので、左右アンバランスな状態の座り方です。
体育座り
今回のコラムの問題提起となった座り方です。三角座り、お山座りともいわれます。教育現場で広く普及していますが、内臓を圧迫し、腰痛や座骨痛が出るなど身体への悪影響が研究で明らかになり報告されています。
蹲踞(そんきょ)
膝を折り立てて腰を落としてしゃがんだ座り方です。相撲や剣道で腰を下ろして向かい合う姿勢です。素早く立ち姿勢に移行することができます。このように深くしゃがむ姿勢は、バランス能力や下肢の各関節の十分な柔軟性がないと困難です。
どの座り方が良いのか
8種類の座法を紹介しましたが、では身体に良い座り方はこの中の一体どちらなのでしょうか?
実はこの中にたった一つ正解があるわけではありません。答えは、座り方を数分おきに頻繁に変えることが身体に最も良い座り方なのです。
そもそも人は、長時間同じ姿勢でいることが一番身体に負担をかけることになります。
長時間同じ姿勢でいるために、一定の部位に圧が生じたり、筋肉の活動が行われないために、筋性痛、腰痛や坐骨痛、膝などの関節を痛める原因になるのです。また、人はそれぞれ骨格や体型や柔軟性など全く違うので、楽な座り方は一人一人違います。今回紹介したどの座り方にも、メリットとデメリットがあります。
ですので、一つの座り方に限定せず、自由な座り方を選択し、そこからこまめに座り方を変えることが大切です。
また、必要であれば各自クッションや座布団、長時間負担なく正座が続けられて膝へのストレスも緩和できる正座椅子を用意するといったこともお勧めします。
教育現場であれば、体育座りと限定せず、もう少し座り方の規則に柔軟性を持たせるようにすれば十分ではないかと思います。
まとめ
今回は8種類の座り方を紹介しました。
最も身体に良い座り方はコレ!といえるものはなく、座り方を数分おきに頻繁に変えることが何よりも身体に良い座り方なのです。
快適な座り方は人それぞれ違います。長時間同じ姿勢でいるということが身体に最も負担をかけてしまうということ、こまめに姿勢を変化させて、一定の部位に圧がかかることを避けたり、筋肉の活動を積極的に入れることが、身体にとって大切だと理解してもらえたら幸いです。
参考: 山陰中央新報デジタル「体育座り『つらい』腰痛原因 見直す学校も」2022/5/6
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/203439
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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