老けの原因は「抗重力筋」の衰え?理学療法士による5つの【「たるみ&不調」解消エクササイズ】

 老けの原因は「抗重力筋」の衰え?理学療法士による5つの【「たるみ&不調」解消エクササイズ】
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堀川ゆき
堀川ゆき
2021-06-16

姿勢をキープするために必要な「抗重力筋」は、衰えるとたるみや不調の原因になることをご存知ですか? 理学療法士でヨガインストラクターの堀川ゆきさんに、抗重力筋を鍛えるエクササイズご紹介いただきます。

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「抗重力筋」って何?

抗重力筋(こうじゅうりょくきん)とは、「地球の重力に対して姿勢を保持するために働く筋肉」のことです。立っているだけ、座っているだけでも常に抗重力筋のどれかが働いています。

抗重力筋は、下腿・大腿・殿部・腹部・背部・首といった身体の前後に張り巡らされ、前側の筋肉と背中側の筋肉とが互いに伸び縮みをしながらバランスを取っています。ちなみに、「抗重力筋」という名前の筋肉は存在しません。

抗重力筋は、以下の複数の筋肉の総称です。

・頚部伸筋群と頚部屈筋群
・脊柱起立筋群
・大殿筋
・ハムストリングス
・下腿三頭筋
・腹筋群
・腸腰筋
・大腿四頭筋
・前脛骨筋

抗重力筋
抗重力筋 イラストAC

私達の身体は、筋肉が働かないと、体幹や内臓の重さで前に倒れます。その前方にかかる力を制御するために、後方から引っ張る力が必要です。それは、頚部伸筋群・脊柱起立筋群・ハムストリングス(その中でも特に大腿二頭筋)・下腿三頭筋(その中でも特にヒラメ筋)です。全て身体の背中側にある筋肉で、これらは「主要姿勢筋」と呼ばれます。主要姿勢筋は抗重力筋の中でも特に重要な筋肉です。

抗重力筋が衰えると見た目の変化は?

抗重力筋の一番大切な役割は「姿勢の保持」です。抗重力筋が働かなければ、私達は歩くどころか、立つことも座ることもできません。また姿勢が良いことで、基礎代謝が高まります。血流など体内の循環も良くなり、脂肪も燃焼しやすくなります。

さらに、姿勢が良いとバランスよく筋肉が発達するので、ボディラインも綺麗に維持してくれます。

つまり逆に考えていくと、抗重力筋が衰えると、姿勢を正しく保てなくなり姿勢が悪くなります。不良姿勢を続けることで、余計なところに脂肪やたるみがついてスタイルも崩れやすくなります。

また不良姿勢により身体に負担がかかり、関節の変形や関節痛などを引き起こすことも考えられます。

ここまでは以前の抗重力筋のコラム『代謝アップ&良い姿勢に!理学療法士が解説「抗重力筋」を鍛える方法』でもお話しました。今回は抗重力筋の低下によるたるみや不調についてお話します。

抗重力筋の衰えによるたるみ

歳を重ねると、重力を受けている年月が長くなる分、当然たるみが出てきやすくなります。ポッコリお腹、スリムなパンツを履いた時にウエストがムニッとはみ出たり、バストトップが下がってくる、加齢によりお尻が四角くなったり、お尻の丸みがなくなってペッタンコになったり、背中、二の腕、膝上のたるみ、顔のたるみもそうです。二重顎だけでなく、ほうれい線などの3大老けラインも現れます。

加齢とともにたるみが出てきてしまう、これは私達が地球上で生活している以上は仕方のないことなのですが、抗重力筋は、読んで字のごとく重力に抗う筋肉です。重力にもし私達が身を委ねると、スライムのように地面にベチャ〜っと潰れますよね?そうならないように、私達は生涯重力に抗い続けなくてはならない、そうすることが抗重力筋を活性化し続けて、美しいプロポーションを維持することができるのです。重力に対抗し続けることがたるみを防ぐ秘訣なのです。

抗重力筋の衰えによる不調

そして抗重力筋が衰えると、姿勢を正しく保てなくなり姿勢が悪くなります。猫背になったり、反り腰になったり、左右どちらかに体重をかける癖などで、左右の筋肉のアンバランスもおきます。それによって身体に負担がかかって、股関節、膝関節、脊柱など、関節の変形を引き起こしていきます。本来なら、抗重力筋をはじめとした筋肉で私達は姿勢を保ちます。でももし筋肉がサボった場合、何で姿勢を保つのかというと、骨や関節です。骨で姿勢を保持することは実は身体にはとても良くないのです。なぜなら骨や関節は筋肉とは性質が違い、経年劣化しやすい消耗品だからです。姿勢は本来は筋肉で支えることが正解です。この話はまた別のコラムでお話します。

また、抗重力筋の衰えにより慢性痛の原因にもなります。頭痛や膝関節、股関節、腰痛、肩凝りは、抗重力筋が正しく働いていない不良姿勢を繰り返すことから主に起こります。ストレートネックもよく耳にすると思いますが、頭部のアライメントが正しく保てていないために起こります。頭は体重の10分の1の重さがあり、かなり重いからです。座り仕事や立ち仕事のように一定の姿勢を続けることも、抗重力筋の疲労や過緊張、萎縮につながり、抗重力筋のバランスを乱します。

また不良姿勢により、代謝の低下、筋力の低下、バランス能力の低下、柔軟性の低下、持久力の低下などが起こり、転びやすくなります。若い人なら多少転んでも大事には至りませんが、高齢の場合は転倒による骨折のリスクが非常に高いです。治癒にも時間がかかりますし、長年の慢性痛に悩まされたり、たった一度の転倒で二度と歩けなくなってしまうケースも珍しくありません。

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photos by Yuki Horikawa

AUTHOR

堀川ゆき

堀川ゆき

理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。滋賀県出身。 モデルやレポーターとして活動中にヨガと出会い、2006年に単身渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在慈恵会医科大学附属病院ペインクリニックで勤務する。慶應義塾大学大学院医学部博士課程在学中。公認心理師と保育士の資格もあわせ持つ、二児の母。 2023年に出版の著書『理学療法士がすすめる ウェルエク-Exercise for Wellness-ウェルネスのためのエクササイズ 究極これだけやれば!身体万全』好評発売中。 https://amzn.asia/d/h3P5HRy



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