【ヨガコミュニティの変化を考えよう】現代のヨガの生徒たちにグル(師匠)は必要?
ヨガコミュニティは近年、堕落したグルのニュースを耳にしてきましたが、私たちはこの事実について何かできるでしょうか?
ヨガコミュニティは、ご存知の通り、ここ最近の歴史で堕落したグルのニュースを耳にしてきました。いわゆるヨガの創設者の何人かは、インドから西洋に教えをもたらし、生前または死後、性的な不正行為で非難されてきました。民事訴訟と刑事告発はほんの一握り行われてきました。2017年、レイチェル・ブラゼン(別名@Yoga_Girl)は、ヨガコミュニティ内から300の#MeTooストーリーを収集しました。グルの堕落は、スタジオ、アシュラム、マインドフルネスのティーチャーを脆弱性と精神性を抱える人々にとって安全なヘイブン(安息地)と感じているヨガスペースに集う多くの人にとって大変不快なことです。
今回は、二人のヨギ(どちらもYoga Unify 名誉有資格者)が堕落したグルがヨガの生徒たちに与える影響、そしてさらに重要なことに、生徒とティーチャーの関係を安全と信頼の関係に変える方法について話し合います。
ワウ!(Wah!)さんは、国際的に高く評価されているミュージシャン、作家、ティーチャーであり、彼女曰く、失脚した何人ものティーチャーたちと個人的にワークした経験を持っています。アチャリヤ・シュンヤ(Acharya Shunya)さんは、彼女の血統の初の女性アチャリヤです。アチャリヤとはヒンドゥー教のヴェーダの伝統における教祖の正式な名前であり、彼女は国際的に有名なヴェーダのティーチャーです。長く続いているにも関わらず、シュンヤさんのスクールは不正行為の申し立てを受けたことがありません。
グルとあなたの個人的な経験はどんなものですか?
ワウ:私は性的虐待や権力操作を噂される多くの伝統に関わってきました。1975年、17歳のときにヨガと瞑想を始めました。TMから始め、1979年にヨギ・バジャン(Yogi Bhajan)グループと共にクンダリニーに参加しました。私はスタッフメンバーそしてボディガードの一人でした。彼の事業を数多く支えました。組織内そして彼の汚職と犯罪を知ってさりました。
その後の5、6年間、私は個人的な勉強と実践、瞑想とヨガに専念しました。その後、クリシュナ・ダスのマネージャーになり、その経験を通じ、ジョン・フレンドとアヌサラスタイルのヨガへと導かれたのです。深く掘り下げて学びましたが、またしてもその組織が腐敗していることを知ってしまいました。そこを去り、自分のバンドと共に、瞑想、ヨガ、音楽を教えながら、国中を旅しました。2000年から2005年の間に、ヨガ&ヘルスセンターを運営するクリパルという組織が、性的虐待によって分裂した後、私はブランドの再構築を手助けしました。私はヨガを学びたかったのでその組織が魅力的に思えたのです。そういった腐敗の発見は、ヨガを研究する上で予想もしなかった副産物で、私は裏切りと怒りを覚えました。過去数年間、私はヨガコミュニティ内での性的虐待について数多く講義してきました。そのツアー中、Dances of Universal Peace (世界平和のダンス)、仏教コミュニティ、ヨギたちなどのグループを助けることができました。
シュンヤ:私は幸運にも北インドの学者の家庭で生まれました。ヴェーダ、特にウパニシャッドを含む伝統的な経典による訓練を受けました。私の曽祖父、祖父、父は皆、インド国内そして私たちの伝統において伝説的なティーチャーです。私はグル-シシャ(グル-パランパラとしても知られる)の伝統、または伝統的な師弟関係のある厳格な家庭の出身です。複数の弟子がいる場合、その中からグルが選ばれます。その後、彼らはアチャリヤになります。私は血統の中で初の女性アチャリヤ、また血統のリーダーです。
私は、元来の神聖な言い伝えに基づき、インドと西洋の両方でヨガ周りの慣習に忍び込んだクモの巣と無意識を払拭するように呼びかけられているとふと気がつきました。私は主の弟子の関係とその関連性についてまさに話し合っている最中です。これには、線引きについて、またチェック&バランスのシステムも含まれます。私はまた、ヨガとセクシュアリティについて、タブーについて言及する方法(ヨギとしての禁欲主義な生活についてなど)、指導者と弟子の間の虐待を防ぐ方法などの議論にも関わっています。私は、原典と伝統に基づいたヴェーダ及びヨガの伝統のアンバサダーです。この伝統は、いくつかの非常に明確なすべきこと、そしてすべきでないことを提供します。そこにはエシカル(倫理的)なガイドライン、こうした問題における指導者と弟子の両方の保護が含まれます。
生徒とティーチャーのマンツーマンの関係は、ヨガの実践を上達させる上で不可欠ですか?
ワウ:1950年代以前は、インドから人々が訪れることは許可されていましたが、その後は帰国しなければなりませんでした。移民法が変更されたとき[1965年に移民国籍法が出身国の割り当てを削除し、ヨーロッパ人以外の入国への道を開いた]、米国にやって来て組織を作った多くのインド人ティーチャーがいました。
これらのティーチャーたちは知識がありました。当時は英語で書かれたヨガの本が存在しなかったのです。インドで学び、脳や身体に情報を蓄えた人間から直接学ばなければなりませんでした。ティーチャーにクラスで指導を受けたり、瞑想を導いてもらったり、知恵をシェアしてもらったりするのを待たなければなりませんでした。情報を受け取るためにティーチャーに仕え、彼らの前で謙虚さを意識しました。最近インドから戻ってきた友人と話をした際、レストランの紙ナプキンにナンディ・ショダーナ・プラナヤマ(交互の鼻呼吸)の指示を書き留めたのことをふと思い出しました。
今日でも、生徒とティーチャーの健全なマンツーマンの関係が重要だと思います。ティーチャーは彼らの人生の例を通して、ヨガと精神修養が与えてくれることを教えてくれます。言葉ではない方法で、浄化、無欲、エネルギーの浄化、献身的な祝いについてシェアしてくれます。
シュンヤ:私はマンツーマンの関係がなくても、ヨガを学ぶことは絶対に可能だと信じています。私の血統では、アチャリヤまたはグルと誰もがマンツーマンの関係を持つことができるわけではありません。それ以前に、それにふさわしく、且つ認定を受けた弟子でなくてはなりません。
弟子になる人間は、ヨガ・スートラやバガヴァッド・ギーターなどの聖典を学ぶ以前に、すべての誠実な探求者に求められる9段階の修行を受け入れて目標に向かった取り組みをします。思いがけず探求者として血統に加わってから、ティーチャーと直接の関係を持つ弟子になるまでには何年もかかるかもしれません。
ティーチャーとマンツーマンの関係を結んでも、ティーチャーが生徒にただ指示するだけではありません。私の血統では、弟子はグル(グルパリクシャ)をよく観察し、グルは弟子(シシャパリクシャ)をよく観察します。グルは、探求者が9ステップの修行をどれほど誠実に行ったか(または行わなかったか)、各ステップの修行で収穫したことを吸収するにつれて、彼らの性格/精神がどのように変化したかをチェックします。これには、彼らが挑戦や誘惑に対する反応の仕方が含まれる場合があります。
一度、弟子が修行を認識できるようになったら、彼らはティーチャーの心(と人生、理想的には隠し事のない状態)、またティーチャーは自身が指導していることを日々実践していると感じるかどうか(口先だけでなくちゃんと実行しているかどうか)を念入りにチェックするように招かれます。この試験(数年以上続く可能性もある)を満たせてこそようやく、ティーチャーをグルとして扱うべきです。これにより、ティーチャーと生徒の両方が倫理的な立場を保つことができます。
ヨガが西洋に持ち込まれ、現代のヨガ産業が発展した際、生徒とティーチャーの関係はどうなりましたか?
シュンヤ:17世紀後半から18世紀初頭までは、不正を行うティーチャーはいませんでした。アドヴァイタ・グル–パランパラ(非二元論における教祖の血統)の伝統の一つは、学校/学習プロセスのエシカルな境界を守り、生徒を安全に保ち、カルトが起こらないようにすることでした。
しかし、時間の経過とともに、ヨガが近代化し、インターネットが発展するにつれて、伝統や原典に則った教育ではなくなり、原典とエシカルな議論から人格ベースの教育へとシフトしていきました。秩序的にすべきこととすべきでないことを我々は失い、生徒たちは知恵の滴を求めるようになり、全能のティーチャーというアイディアが浮かんだのです。これらの生徒たちは非常に誠実な魂を持っています。彼らは知識を得る機会を長年待ち続け、共感することしかできません。
ワウ:また、アチャリヤ・シュンヤ−ジー(Acharya Shunya-Ji)が述べたように、伝統的に20世紀以前は、コミュニティへより深いコミットメントがあったことにも注意することが重要です。グルは常にコミュニティ内にいて、そのコミュニティ時代が小さかったのです。
当初は村でした。グルは、誰もが成長できる安全な場所を作った祖父のような存在でした。
グルは皆を見守り、スピリチュアルな力を持っていた人々にスピリチュアルな訓練を行っていました。コミュニティは、最高の結果をもたらすようにグルに圧力をかけ、何かうまくいかなかった場合にはグルに責任を負わせることができました。
シュンヤ:ある伝統から何かを奪い、倫理的な警告なしに中身を変えようとすると、その過程で何かを失います。
インドのスワミたち(世俗を離れて修行する僧侶に対する敬称)には西洋人やインド人ではない探求者たちがいて、彼らは血統の担い手となりました。彼らの多くにとって、母国の文化ではなかったため、知識にそして倫理的な理解にはギャップがありました。彼らは、伝統全体を説明することなく、生徒たちに知識のほんの一部を教え続けました。だからこそ、グルという言葉自体を捨てなければならないところまで来てしまったのです。真のグルとは人類の原型です。私たちは原型を払拭することはできませんが、前後関係や背景を説明することは可能です。また、すべきこととすべきではないことも説明できます。私たちはこのヨガの原型の尊厳を取り戻すことができます。そうすれば、私たちは皆、より大きな結びつきであるヨガへと導かれるのです。
ワウさん、現在は失脚した3人と緊密に仕事をしていらっしゃいましたね。彼らはどのようにしてこの個人崇拝を行っていたのでしょうか?
ワウ:彼らは人気があり、巨大なプラットフォームを得ていました。ほんの一握りの人がクラスに来る代わりに、彼らには数千人の生徒がいました。たくさんのフォロワーが存在するため、物事がうまくいかなくなるエネルギーも要因もたくさん存在しました。一方、インド人グルたちには、権力、名声、お金に対処する能力はありませんでした。
ヨガにおける現在の生徒とティーチャーの関係はどうすべきでしょうか?
シュンヤ:ムードラ、マントラ、ヨガアーサナ、ヴェンダータの非二元論に関するディープラーニングは、全て複雑な知識です。ビデオやPDFではなく、人間のティーチャーからそれらを学ぶ必要があります。
私たちは、ティーチャーが教え続けることができて、生徒が安全な状況を取り戻す必要があります。何を維持する価値があるのか、何が赤信号に値するのか、そして何を後戻りせずに前進する価値があるのか、注意深く見極める必要があります。たとえば、すべての認定コースには、ダルマに関する教えを含める必要があります。ヨガはヤマとニヤマから始まります。ティーチャーは口先だけでなく、実行しなければなりません。Yoga Unify(ヨガ ユニファイ)は、ヨガコミュニティが集い、正しく判断するためのスペースを提供します。
ティーチャーはまた、コミュニケーションをオープンに保つ必要があります。私は、アクセスしやすく、透明性があり、オープンなだけでなく、オープンな対話を行っています。そして、大きなヨガコミュニティ内で不正行為の問題が発生したときには生徒たちに知らせてきました。これらの会話は、生徒に安全な場所を提供するだけではありません。生徒たちもまたこれらの対話を通じて私の人間的な側面を見ます。私の仕事仲間が脆弱な状況におかれている姿を見て、生徒たちは自分たちが求めていることを再確認します。また、私は意識的に自分のスクールと生徒たちのコミュニティを性的な場所とは一線を画し、安全に心から希望を持って学べるように務めています。
何よりもまず、すべての弟子たちにとって必須の9ステップ・トレーニングが重要です。性に関係の無いスペースを維持することは、ヨガのセクシュアリティだけでなく、ヤマとニヤマについてのオープンで継続的な議論を行うスペースを提供することも意味します。対面のミーティングにはドレスコードがあります。かしこまったものをとは言いませんが、性的で無いものにしましょう。学校が学習に集中する場所であり続けるために、性的またはロマンチックな関係は慎重である必要があります。私は小さな部屋の中、一人で生徒と会うことはしませんし、必要な場合にはドアをほんの少し半開きにして起きます。さらに、性別や性同一性に関係なく、すべての学生に敬意を払って対応しましょう。
教えてくれたのは・・・Yoga Unify(ヨガ ユニファイ)
Yoga Unify(ヨガ ユニファイ)は、伝統を守り、世界中のヨガが前進するための推進活動を担う新しい非営利団体です。説明責任、育成、コラボレーションの価値観に基づいて構築された参加型のヨギ組織であり、メンバーのヨギたちは、人々を変化へと導くガイドとして活躍しています。生涯学習において、ヨガの生徒とヨガティーチャーが彼らの道を実現するための活動サポートにコミットしています。学習時間ではなく、同業者による能力チェックに基づく資格を通じて実施しています。その際、公平でアクセス可能な学びの場の提供の有無、倫理基準の確立、メカニズムに関するレポート、我々が奉仕するコミュニティへの投資などを重要視しています。詳しくはサイトをご確認ください。これまで以上に多くの人々に届くように、ヨガの進化に加わりませんか。ワウとシュンヤと一緒にもっと詳しく学びましょう。
ヨガジャーナルアメリカ版/「Do Modern Yoga Students Need a Guru?」
AUTHOR
ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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