【愛ある別離にするために】冷静に、穏やかに、理性的に…マインドフルネスな「離婚」のヒント

 【愛ある別離にするために】冷静に、穏やかに、理性的に…マインドフルネスな「離婚」のヒント
Laci Jordan

ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!まわりからはふたりは完璧なカップルと思われていたかもしれない。まるで面ファスナーの凹と凸面、ラテに入れるオーツミルク、ピーナツバターとジャムのように。だが年齢を重ねるにつれ、多くのものが魔法を失っていく。幼稚園で食べていた強烈なぶどう味の甘いジャムサンドにも今はときめかない。人との関係もそれに似ている。でも大丈夫。あなたは前に進める。

広告

どちらから切り出しても別れは簡単ではない。生活のあらゆる面に恐怖や疑念をもたらすからだ。自分自身がわからなくなることもある。「こんな大事なことで自分はなぜこれほど間違ってしまったのだろう?」と。さらには友達や経済的地位や住む場所など、社会生活に欠かせない多くのものを失う危険にもさらされるため、私たちは混乱し、気持ちが不安定になったり、体調を崩すこともある。

12年前に最初の結婚が破綻した時、私は突然訪れたなじみのない世界で自分を見失った。離婚するまではほとんどずっと誰かと共に生きてきた。それが急に一人ぼっちになってしまった。少なくとも、その時はそう感じた。
離婚手続きが始まると、ずっと側にいると思っていた人たちが次々といなくなった。当てにならない助言や理解しづらいメッセージを送ってくる人たちもいた(結婚して51年になる母は、今だに私の最初の結婚式の日のことを懐かしげに話す。今の私の夫の名前は9年たっても覚えられないのに)。友人たちの中には私たちの離婚について賭けをしたり、どちらかに味方する人もいた。
それでも、きっとなんとかなるとどこかで感じていた。私は人生の大半を母親、妻、義理の娘、生徒、従業員の役目を演じながら過ごしてきた。だから、この別離によって引き起こされた大混乱の中で自分自身を取り戻したいと思った。

人生での大きな出来事は、たとえそれが困難なものでも、自身を見直して再びつながる機会を与えてくれると、エリザベス・ローワンは言う。アトランタ在住のヨガ講師でヒーラーの彼女は、自身も数年前に離婚を経験している。「私は暗闇に飛び込むことを大いに勧めています。それによって、必要なのに自分が避けているものに気づけるからです」と彼女は言う。

ローワンのようなヒーラーに言わせれば、マインドフルネス、ヨガ、瞑想は授かりものだ。再び光を見いだした無数の人々の経験から集約された知恵なのだ。それらの知恵は、人生で何が起きても私たちには切り抜ける力があると教えてくれる。すべてのヨガセッションの土台となっているのはその教えだ。辛いときも呼吸をすれば癒しが訪れる。不安なときに平穏さを見いだせる揺るぎない強さを与えてくれる。練習ごとに私たちはさらに成長していく。

だが別離の渦中にそれらの知恵を生かすにはどうすればいいだろう? その答えを見つけるために、私は心理学者、離婚弁護士、研究者、ヨガ講師、ライフコーチに連絡を取った。彼らの多くも別離を経験していた。私は、離婚が最もストレスフルなライフイベントのひとつである理由について、一人ひとりに意見を求めた。また、彼らのクライアント(そして彼ら自身)を導くために用いる手段についてもたずねた。

もちろん、どの別離も同じではない。だが別れのプロセスで経験する驚くべき数の感情は、性別、ジェンダー、年齢を問わず共通している。これは別れのどの段階にいるかにかかわらず、すべての人にとって朗報ともいえる。
私たちはヨガと瞑想を通じて、私たちより先に痛みや喜びに向き合った無数の人々の見識を得る。練習の根底にある哲学を通じて受け継がれてきた先人たちからの贈り物とは、変化を受け入れれば逆境のなかにも恩恵を見いだせるという知恵だ。彼らの教えは、私たちが今感じている思いを彼らも経験したのだと安心させてくれる。また、それらが必ず過ぎ去ることにも気づかせてくれる。

当時の私に今の知識があればよかったのにと思う。離婚手続き中にヨガを実践していたら、先を急がないこと、立ち止まることに強さを見いだせただろう。すぐに反応しなくてもいいのだと。喜びと同様に人生には痛みも必要だし、癒しだけでなく怒りや恐れや痛みに浸ってもいいと思えただろう。混乱する自分を認め、恥じることもなかっただろう。そして自分は一人ではないと気づいたに違いない。今この瞬間も別れを決意した人、別離の真っ最中にいる人、立ち直ろうとしている人、前進し始めた人が世界中にいるのだ。

だから覚えておいてほしい。別離に時間はかかるけれど(離婚はマラソン並みになることも)、必ず終わりはくる。約束する。もしもマインドフルネスに別れることを選択するなら、わかっているとは思うが、よくあるような自分を優位に立たせる粗野な離婚をしないことを目標にしよう。
ネガティブな経験もすべて受け入れ、それを乗り越えて以前よりも強く賢く、しなやかになることが人生には必要だ。より自分らしくなるために。知識を得て、コミュニティを築き、残りの人生を平和に過ごすために。

あらゆる感情を理解する

あなただけじゃない。長く続いた関係が終わるときには誰もが取り乱す。別離は私たちの最も根本的な情動を呼び起こすからだ。私たちは生まれた瞬間から生存のために強い愛着を育む。そして、その愛と引き換えに必要なリソースや知恵を与えてくれる家族や友人たちと情緒的な絆を結ぶ。彼らが養ってくれるおかげで、私たちは成長できる。これらの関係は「人間が種として存続するために不可欠なものです」と心理学者で離婚カウンセラーのリサ・ガバルディ博士は説明する。「私たちの安全は人との密接な結びつきにかかっています」
人生のパートナーを選ぶとき、私たちは深い情緒的な絆を築く。統計によると、その関係が終わると、私たちは根本的な愛着の崩壊に対処せざるを得なくなる。親、友人、愛する人との重要な絆が失われると、その関係が健全だったか否かにかかわらずパニック反応が引き起こされる。私たち人間は生存のために人と関係を築くように生まれついていることから、その喪失がこの世の終わりのように思えるのだとガバルディ博士は説明する。そのため、大きな別離のときには自分でも思いもよらないことをしたり、言ってしまうことがある。

離婚は特殊な喪失だ。相手は亡くなったわけではない。実際、彼らは今も私たちの人生と密接に結びついている。完全に決着がつくまでは、好むと好まざるとにかかわらず彼らと関わらねばならない。さらに悪いことに、離婚手続きは必然的に闘争・逃走反応も刺激する。パートナーを失う手続きをしながら、私たちはお金や子供と過ごす時間や家などの基本的な必需品についての交渉を迫られる。かぎられたリソースの取り分をめぐって、二度と顔も見たくない相手と争うこともあるだろう。
離婚で最も混乱するのは、かつてあなたが愛して信頼していた誰かが、突然人生のパートナーから敵に変わってしまうことだろう。私が離婚した時、最初は調停を提案した。弁護士を雇わなければ、ストレスや弁護費用を減らせると思ったからだ。私の元夫も同意した。だが調停人を間に挟んで彼との話し合いに臨んだ時、私はほとんど自分を擁護できなかった。元夫は常に公正で公平な人だったが、その時は(当然のことながら)財産分与を得るために挑んできた。私を守り、私の利益を考えてくれるのは、自分しかいなかった。私はかつてないほどの孤独を感じ、当然パニック状態にもなった。そして調停をやめて、弁護士に相談した。
精神的にぼろぼろになり、回復に何年も要した。心が安定することがなく、仕事でも子供に対してもいらいらしていた。すべてのバランスをとろうと必死になりすぎていたせいか、その当時のことを今もよく思い出せない。いつも上の空で、その頃の娘の成長も見逃してしまった気がする(大丈夫、彼女は元気だ。私たちが思う以上に子供には回復力がある。子供のケアについては6ページを参照)。幸い、そんなふうにならない方法がある。

移行と回復の時期に正気を保つためには、まずは自分の足元の地面を意識して、支えられている感覚を味わうことだとローワンは言う。昼夜を問わずいつでも立ち止まる許可を自分に与え、今のこの瞬間は長く連続した時間のほんの一部だと気づこう。落ち込めば必ず上昇する。闇があるから光がある。 
ローワンは「良い気分だけ」を追い求めずに、ありとあらゆる感情や経験を受け入れる練習をすべきだと言う。「人生の自然のサイクルを認めるのです。人間であることの意味も。ホールフーズ・マーケット(自然食品を扱うグルメ・スーパー)で癇癪を起こすのには賛成できませんが、そういう恥の上塗りとは別に、別れるときに怒りを覚えるのは自然なことです」(なぜか私のインタビューではホールフーズがよく登場する。このブランド名から、手の届かない完璧な生活を連想する癖はないだろうか? もしそうなら、ホールフーズを避けることも癒しのプロセスになるだろう)

今ここにいるための練習

【ミニ瞑想】
離婚カウンセラーのリサ・ガバルディ博士は、クライアントたちが今にとどまる感覚を得られるように、この実践を用いている。

1. 自分が悩んでいる、激怒している、悲しんでいる、不安に陥っているときに、それに気づく。
2. 目を閉じて深呼吸をし、意識をこの瞬間におく。
3. 近くのものに焦点を合わせてグラウンディングする。指先同士を合わせ、大地にしっかりと足を根づかせたら、息を吸い、鼻の穴から冷たい空気が流れ込むのを感じる。目の前に新しい道が延びていると想像しよう。息を吐きながら暖かい空気が出ていくのを感じる。同時にネガティブな感情や毒素も吐き出す。
4.「私は内なる強さと自然な癒しの力を信じています。私はこの困難な時期を乗り越えます。今この瞬間、私は安全です」と自分に語りかける。
5.「私は大丈夫です」と答える。

物事の見方を変える。思いやりのレンズを通して見てみよう

癒しの過程(交渉、子育て、仕事でも)で大事なのは、さまざまな視点から物事を見るようにすることだ。たとえば他の人が酷いことを言ったり、行ったりする動機を理解できれば、彼らの怒りに影響されにくくなる。分別のある大人でも恐れから問題行動を起こすことを理解したうえで、別離のストレスの多くが恐れによるものだとわかれば、私たちはもっと冷静に、過剰に反応しないようになる。ふたりで別離の核心に向き合う際に、自分がどのように反応するかしないかで、元パートナーにも影響を与えることができる。

ツーソンを拠点とするホリスティックヘルスコーチのリサ・タレフは、夫が離婚を望んでいると知るやいなや、10年以上続けてきたレイキ、マッサージ、ヨガ、ヒーリングトレーニングをフルに活用し、オープンで冷静な姿勢を保ち続けた。「醜い離婚にする必要はないと思ったからです」と彼女は言う。
彼女は離婚手続きの早い段階から、ジムで怒りを燃焼させた。だが瞑想では、思いやりの心を育む慈愛のプロセスを実践した。「ナマステの精神では一度愛し合った者とは、別れるときも互いの精神を尊重するように説いています」と彼女は言う。「結婚した時、私たちは社会的にも自分たちの絆を結ぶために神聖な儀式を受けました。その絆を解くときも丁寧に行うべきです」
タレフは、彼女が結婚した時と同じように愛をもって離婚手続きに臨んだ。「彼を傷つけるのでなく、尊ぶようにしました。私たちは魔法のような素晴らしい時間を共有したけれど、人生を添い遂げるパートナーではなかったのです。一緒にいてもお互いの可能性や幸福を最大限に広げられなかったので、前に進むことにしました」

彼女は、胸と股関節まわりを開くことにフォーカスしたクラスを教えているヨガ講師を見つけ、気持ちが押しつぶされそうなときはそれらのクラスを受けるようにした。「キッチンには、扱いに困るものを全部入れておくような雑多な引き出しがあるでしょう? 股関節まわりはまさにそういう場所です」とタレフは言う。
彼女は、ヨガの練習中はできるだけ「雑多な引き出しの中身を開けて、体を立て直し、自分は大丈夫だと言い聞かせる」ようにした。ある講師は、胸から息を吸って新鮮な良いエネルギーを取り込み、吐くときは胸の後ろから息と一緒に体にたまっている過去や痛みも解放するようにと教えてくれた。「スタジオでは、気づいていなかった自分の中心を見つけました。そして内面の平和につながることができたんです」とタレフは言う。 
「その気づきによって、私は交渉の場でも深呼吸をして『さあ、闘うのではなく、話しましょう』と言えたのです」
だが、痛みを解放したことで、彼女は別の視点からも離婚を見られるようになった。「ふたりの関係に火を放つ必要はなかったのです」と彼女は言う。「最初からそれは望んでいませんでした。前に進む時だと気づきました。それがお互いを自由にするための愛ある行動です」

今ここにいるための「離婚」
illustration by  Laci Jordan

試してみよう

胸と股関節まわりを開いて、引き出しにたまったがらくたを片付けよう。「ヨガスタジオでは涙があふれてくるけれど、クラスを後にするときは自分の軸が感じられて、理性的でかつ穏やかになれます」

視点を変えたいときの短いシークエンス練習:
エーカパーダラージャカポターサナ(鳩のポーズ)、
ウッタンプリシュターサナ(トカゲのポーズ)、
ウシュトラーサナ(ラクダのポーズ)、
ウトゥカターサナ(椅子のポーズ)。

恥の魔法使いとの対決

離婚の最中の記憶はおぼろげだが、あの日のことはよく覚えている。感謝祭の直前の天気の良い午後、私は夕食用に出来合いの食べ物を買うために、ニューイングランド州の郊外のホールフーズ・マーケットに立ち寄った。駐車場を歩きながら、ふとまわりを見ると、七面鳥やサツマイモやパイや花でいっぱいのカートを押している完璧な家族ばかりだった。目につくのはボルボ車やラクロスのスティック、ダッフルバッグ、学校の制服、そしてどの後部座席でも毛並みのいいゴールデンレトリバーがしっぽを振っていた。
成人してから初めて、私は客観的に自分の人生を見ていることに気づいた。今はシングルで一時的に子供とも離れ、アパート暮らし。お金もないし失業中で、家庭も壊れた。私は自分を見失い、独りぼっちだった。
自分で全部壊したんだ、と内なる声が叫んだ。二度と幸せになれないし喜ぶ資格もない。ホールフーズの駐車場で独身の女が一人でいるなんて恥だ!私は逃げるように車に飛び乗り、店を後にした。痛みと涙で窒息しそうだった。私のせいで失った。私がすべての苦しみを引き起こしたのだ、と。
 
当時はその声に名前はなかったが、今は「恥の魔法使い」と呼んでいる。内なる声の中で最も残酷で、容赦のない幻影だ。健全な感情をゆがませ、徹底的に自己嫌悪に陥らせる。しかも、ずる賢くてしつこい。その声はテレビアニメ 『Big Mouth』に登場するキャラクターでもある。中学校を舞台とした思春期前の主人公たちの日常をシュールに描いた傑作コメディだ。アニメの中では最悪のタイミングに恥の魔法使いが現れ、正常なホルモンから起こる子供たちの性衝動に対して罪悪感や恥の概念を植え付ける。恥の魔法使いが声を上げるときは、君のためを思って、などと主張してくる。だがその声は私たちに屈辱を与えて言うことをきかせ、良い人間に仕立てたいだけだ。私たちが最も深く恐れていることにつけ込んで、私たちが非常識で腹黒い人間で、その邪悪さのせいですべての人を苦しめていると吹き込んでくる。
 
だがそのやり方はまったく間違っている。自分で自分を打ち負かしても何も解決しない。私たちにはやるべきことがあり、自己嫌悪や自己憐憫にふけっている暇はない。ヨガ講師のエリザベス・ローワンは、恥の魔法使いを黙らせるには、あらゆる感情を受け入れ、自分をおとしめようとする恥の概念が忍び寄ってきたら、それに気づくことが大事だと言う。恥の魔法使いはずる賢い。あなたが弱っていたら、すぐに気づく。その卑劣な手段を見極めることが、別れのプロセスで必ず経験する感情の一つひとつに向き合うための第一歩となる。怒り、恐れ、希望、疑い、喜び。結婚を守れなかったという挫折感もあるかもしれない。確かにあなたは結婚を続けられなかった。だから何?それはもう済んだことだ。今は誰のせいでもない。
別れの理由がなんであれ、終わったことを認めて、人生の旅の一部としてすべてを受け入れるのだ。「激情、当然の怒り、代謝するエネルギー、痛みを讃えましょう」とローワンは言う。「あなたが抱えているものすべてを讃えるのです」。これらの情動を抑制せずに存在を認め、手放そう。感情は永遠に続かないと気づこう。

自分自身をいたわろう

人生で訪れる愛や悲しみの時に私たちにできることは、自分が最善を尽くしているか、たしかめることだ。だがその習慣は必要に迫られないと身に付かない。自分を大切にして、甘やかしてあげよう。体と心とつながり、それぞれが安心して満たされるためには何を必要としているか耳を傾けよう。特に大人になると、私たちは自分をないがしろにすることが多い。
特にほかの人の世話で忙しいと、私たちの体と心のつながりは希薄になる。そのくせ、自分を批判するリストは果てしなく長い。私もよくつくっていたから覚えがある。私たちは日々の生活に定着しているリズムが失われると、不安定になって落ち着かなくなる。だが失うことで、素晴らしいギフトがもたらされるのも事実だ。自分で生活のリズムを自由に決められるので、セルフケアの余裕も生まれる。生活の一部にしてみよう。

エリザベス・ローワンは、どんなヨガポーズも癒しの音楽もアーサナシークエンスも、離婚手続き中の彼女を完全にサポートできるものはなかったと警告している。「時間やプロセス、そして自分の闇と光に向き合うことに代わるものはないのです」。クライアントたちを支える手段として彼女が取り入れているのは、個人的なものを集めてつくる瞑想用の移動祭壇だ。「瞑想はグラウンディングができる素晴らしい手法です」と彼女は言う。「たとえどこにいても、街や家や仕事が変わっても、いつでも瞑想していました」。日々のサバイバルモードにいると、神聖なる存在や真我を見失いやすくなる、と彼女は言う。場所を定めない移動祭壇は、真我や大いなる存在につながるための道筋を目に見える形で提供してくれる。特に大きな変化の最中は、移動祭壇があることで、私たちは常に前に進み成長できるのだと思い出せる。
中世の巡礼者たちが身に着けていた携帯型のミニ祭壇から、ペルーのシャーマンが用いるメサと呼ばれる神秘的な袋まで、いつの時代もさまざまな文化において人々は持ち運びができるパーソナル祭壇を利用してきた。

乗り越えよう!

別離は誰もが経験する普遍的なテーマであるため、破局したときに聴く音楽リストは無限にある。恥や罪悪感に圧倒されそうになったら、テイラー・スウィフトやフィオナ・アップルと一緒に歌おう。
気持ちを落ち着ける歌や、元気が出る歌を組み合わせたプレイリストは、立ち直るための力を与えてくれる。心に最も響くプレイリストをスマホに入れておき、気持ちを切り替えたいときにはいつでもイヤホンを着けて音楽に浸ろう。ソファから立ち上がって踊り出してもいい。
たとえばこんなプレイリストはどうだろう。どれも元気になれる曲ばかりだ。

別れたときのためのプレイリスト
テイラー・スウィフト「Shake It Off」
フィオナ・アップル「Extraordinary Machine」
デミ・ロヴァート「Sorry Not Sorry」
ジャスティン・ビーバー「Love Yourself」
ヘイリー・スタインフェルド「Love Myself」
アラニス・モリセット「You Oughta Know」
アリアナ・グランデ「Break Free」
ビヨンセ「Irreplaceable」
グロリア・ゲイナー「I Will Survive」
フリートウッド・マック「Go Your Own Way」
フローレンス・アンド・ザ・マシーン「Shake It Out」
シェール「Strong Enough」

自分のための祭壇

ずっとここで年を重ねていくと思っていた家で、今あなたは荷物をまとめているかもしれない。一時的に新しいアパートやホテル、あるいは友人や親の家に身を寄せているかもしれない。不安定で落ち着かないとき、自分だけの個人的な持ち物は心のよりどころになる。持ち運びができて、設置や片付けが簡単で、部屋の隅に置いておけるようなトレイや祭壇を用意し、その上に好きなものを載せてみよう。たとえば、思い出の品や写真、石、土、キャンドルなど、大いなる存在とのつながりを感じさせるものをローワンは薦めている。さまざまな場所で祭壇をつくったり片付ける行為は、たとえそれが一時的であっても、自分だけの場所を確立する実感をもたらしてくれる。 

今ここにいるための「離婚」
illustration by  Laci Jordan

冷静に、穏やかに、理性的に

離婚や別離では、明確な思考が必要になる。幸い、問題解決の能力を持つ私たち人間は、鋭い爪や牙もない無防備な動物のまま地球上で生き残ってきた。私たちのマインドは解決を見いだせたときに最も幸せを感じる。結局のところ、別離はまさに問題解決であり、前進することなのだ。それを大きく後押ししてくれるのが呼吸法だ。

人間は(現実に、感覚的に)脅威を感知すると、自動的に生理学的反応が起こり、呼吸が速まって浅くなる。すると闘争・逃走反応が引き起こされてアドレナリンが放出される。パニック状態では高次脳機能が低下し、あらゆる知覚システムが働かなくなる。
この現象については十分に検証されており、研究者たちは、過度の不安によって記憶、会話、言語、複合知覚、方向感覚、注意、判断、実行、意思決定などの認知が阻害されることを繰り返し証明している。私たちが怯えたり、挑発されたり、脅されると、脳の最も原始的な部位の扁桃体に伝わり、身体的な脅威を感知して体を行動させるための生理学的な反応が引き起こされる。このパニック反応は行動管理能力よりも優先される。もしホラアナグマに襲われたら、クマを説得したり、襲う理由を聞く暇などないからだ。

闘争・逃走・凍結( F F F )反応と呼ばれるこの反応は、必要だから存在する。コントロールを失った車から、考える前に飛び降りるのはそのためだ。だが現代社会での最も不安な状況(テスト、締め切り、人前でのプロポーズ、離婚)は、冷静になればうまく対処できる。あなたの離婚弁護士は毎月の出費を計算するように求めてくるかもしれない。至極当然な要求だと受け取りながらも、実は不安で過敏になっている脳は「うるさい! もうどうでもいいわ!」と叫んでいるかもしれない。
悪意のある電子メール、メッセージ、電話といった非物理的な脅威も、物理的な脅威と同様にF F F反応を引き起こす場合がある。呼吸やマインドフルネスのテクニックや定期的な瞑想によって扁桃体を落ち着かせると、パニック反応は和らぎ、高次認知機能も正常に戻る。パニック反応が鎮まれば、脳の合理的な思考を司る部分が働くようになる。
だから電話が鳴ったら、ひと呼吸置こう。今は電話に出てもよいときだろうか?自分の反応をコントロールできるような感情的な余裕はあるだろうか? 集中し続けていられるほど、グラウンディングしているだろうか? もしそうでないなら、そのままボイスメールに任せよう。今すぐに決める必要はない。
メールも同じだ。離婚手続き用のメールアカウントを別につくるといいだろう。弁護士にはそのアドレスを教えよう。元夫や高額の請求書を送ってくる人たちのメールも、このアドレスに自動転送されるように設定する(自分の母親や、もうすぐ元義理の母親になる人のメールも?)。これで、いつどこでメールに対処するかは自分でコントロールできる。

いろいろ試しながら、一日のうちで離婚手続きに取り組むのにふさわしい時間を見つけよう。おそらく、神経科学的にも良い状態のワークアウト後や、ワインを飲んだ後、ヨガの後などがいいだろう。
それでも怒りのあまり反撃したくなったり、パニックになったり、打ちのめされるときもあるだろう。でも、ひと呼吸置こう。パニック反応は、自分が最高の状態のときには起こらないことを思い出そう。
代わりに、それらの興奮状態を鎮めるためのスペースを自分に与えよう。深呼吸したり、お風呂に入ったり、散歩したり、マットの上でストレッチをしてもいいだろう。そのようにして扁桃体を鎮めれば、冷静さが戻ってきて、慎重に決断したり、計画を立てたり、結果を予測できるようになる。パニックに陥った脳は、まさにこの瞬間のことしか考えられない。だが私たちには明日も来週も来年もある。離婚手続きでは戦略的になる必要がある。人生の次のチャプターも書き始めないといけない。だから少し時間を置こう。数時間や数日の余裕が、その後の困難の対処に大きな違いを生み出すこともある。

今ここにいるための「離婚」
illustration by  Laci Jordan

呼吸法の練習

誰もが知るように、呼吸はすべての土台だ。光を招き入れ、集中し、今この瞬間を感じながら落ち着きを取り戻すために、縮こまった空間に滋養をもたらす空気を送るのだ。よく瞑想では、みぞおちから心臓、喉のチャクラへと呼吸を流すように促されるだろう。意識を置きながら深く呼吸すると、体がリラックスして扁桃体が静まり、身も心も柔らかく開かれていく。もうホラアナグマを殺したり、獰猛なオオカミから逃げる必要はない、と全身に伝えているのと同じだ。
サマヴリッティプラーナヤーマ(均等な呼吸)は、マインドをクリアにし、体をリラックスさせ、集中力を高める強力なリラクセーションツールだ。背中に支えのある椅子に快適な姿勢で座り、足裏を床につけて行おう。 

練習に献身する

今回の記事のために私がインタビューした人の多くは、離婚前からヨガの練習をしていたが、健康管理の一環として続けていただけだった。母親、研究者、ヨガ講師、シアトル郊外のコミュニティカレッジで学生活動のディレクターの顔を持つアリス・シュレーゲルは最初の夫とアラバマ州からワシントン州に移り住み、健康維持と友人づくりのためにヨガスタジオに通い始めた。やがて夫婦関係が壊れると、スタジオは自分自身に集中できる避難所となった。「家にいてもくつろげませんでした。もはや家庭ではなかったからです」と彼女は言う。
彼女は離婚のことをスタジオでは話さなかった。ヨガを離婚と切り離して神聖に保っておきたかったからだ。「スタジオでは夫のことを誰も知らなかったので、唯一自分らしく、誰にも騒がれずにいられる場所でした」
シュレーゲルはヨガについての文献を読み、さまざまな講師を試して、できるだけ多くのクラスに通った。「喪失感を、知識と前向きな感情で埋めていたんです」と彼女は言う。

シュレーゲルと同様に、エリザベス・ローワンも以前からヨガを実践していたものの、離婚が本格化するまではそれほど傾倒していなかった。シュレーゲルは、ヨガは「別離のプロセスをうまく乗り切るためにも、自分自身を取り戻すためにも必要でした」と述べている。
ではヨガがどのように役立ったのだろうか?「実用的なレベルでは、この世の終わりだと感じたときに、ヨガのおかげで土台と安定性を育むことができました」と彼女は言う。より深いレベルでは、元夫との関係が終わりに近づくにつれ、ヨガとの関係が劇的に進化したという。「この精神修養との関係は生涯続く美しい絆です。私はヨガと結婚したのだと気づきました」

子供たちのためのマインドフルネス

文筆家で教育者でもあるスーザン・カイザー・グリーンランドは、20年以上にわたってマインドフルネスと瞑想を用いながら子供たちや家族と向き合ってきた。離婚などの家庭問題に際し、生涯にわたって子供たちをサポートするための彼女のガイダンスをここで紹介しよう。
まずは神経系の働きを理解する必要がある。たとえば仕事では、締め切りや発表日や競争といった、ある程度の刺激が必要だ。適度な刺激によって放出される少量のアドレナリンは、最高のパフォーマンスを生み出す。
だが刺激が強すぎると闘争・逃走・凍結(FFF)反応が引き起こされる。特に子供の場合は反抗行動と混同されがちだ。子供たちが腕組みをしたり、体を引いたり、ぼんやりしているときは、実は過剰に刺激を受けている兆候の振る舞いである場合がある。
FFF反応が引き起こされたような状態になると、子供たちは明確に物事を考えたり、理性的に応答する能力が低下する。そして人を寄せ付けなくなってしまう。このときこそ、大人の対応が必要だ。子供たちに寄り添い、耳を傾け、気持ちを理解しよう。そして彼らがすぐに心を開くとは思わないようにしよう。
自分が認められ、愛され、平穏に過ごせると子供が感じられるように、常に子供に目を向けていることが大切だ。あなたが安定して落ち着いていれば、子供たちもそうなる。
子供との話し合いが常に楽しいものとはかぎらない。彼らの発言や行いを個人攻撃と捉えないようにしよう。子供たちの混乱を理解し、安全なスペースを確保してあげることが必要だ。あなたの役目は、冷静に状況を理解して、彼らに自分の気持ちを感じさせてあげることだ。こちらが穏やかに応答できなければ、事態はエスカレートする一方となる。

もちろん、完璧な親などいない。私も若い頃は大きな間違いを犯した。事態を収拾させるために、解決を急いだり、子供たちとの合意点を見いだそうとばかりしていた。破綻的な状況では、誰も問題に向き合う余裕などないことを理解していなかったのだ。子供がFFFモードになっているときには、無理に問題解決を図らないことが大事だ。
完璧であることから知恵は生まれない。私たちは常に完璧ではいられない。だからこそ親子にとっての学びの時間に変えていこう。食い違いが起きたら、少し時間を置いてから向き合い、謝ろう。非現実的な常識にとらわれないことだ。

他の何よりも子供との関係を優先しよう。子供たちはあなたを観察しているだけだと言うかもしれない。でもほとんどの子供は自分が安全で愛されていると思いたいし、次に起きることを合理的に予想している。健全で調和のとれた親子関係を築くためには、次に起きることよりも、今起きていることに注意を向けよう。
子供との関係に違和感を覚えたら、友人、家族、地域社会、専門家に助けを求めてほしい。みんなで一緒に強くなるのだ。
子供との絆は決して消えない。それはさらに深く、強くなっていく。
一緒に自然の中を歩いたり、石鹸の泡に触れたりして、感覚的な体験をつくり出そう。それらの行為を通じて今この瞬間を感じ、グラウンディングすることができる。そして子供たちとのつながりも保たれる。

もっと詳しく
ガバルディ博士の離婚のための瞑想についてはgabardi.com/divorce-meditationsへ。 

広告

by Rachel Slade
illustrations by Laci Jordan
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.74掲載

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部ロゴ

ヨガジャーナル日本版編集部

ヨガジャーナル 日本版編集部



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

今ここにいるための「離婚」
今ここにいるための「離婚」
今ここにいるための「離婚」