蓮はヨガの象徴「ロータスポーズ」を深める8つのポーズ

 蓮はヨガの象徴「ロータスポーズ」を深める8つのポーズ
David Martinez

ロータスポーズ(結けっかふざ跏趺坐)には、神経を静め、エネルギーを目覚めさせ、心を落ち着かせる力がある。自分の花を咲かせて大きく育てる方法について紹介しよう。

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ロータスポーズがもたらすのは

サンフランシスコのヨガスクール、アヌサーラでヨガを教えているKKレッドフォードは、地に足がついていない感じがするときや不安なときにはヨガの典型的なポーズ、パドマーサナ(結跏趺坐)をするようにしている。このポーズをとると、大腿骨がしっかり根づき、鼠蹊部が沈み、体側が引き上がるのを感じるという。また、体を落ち着けて、正中線を見つけながら自分の根が地球に下りていくイメージを描くと、エネルギーが体内を上昇して頭頂部から抜けていくのだそうだ。

このような安定感と柔らかなゆらめきから、レッドフォードに自然な満足感と静けさが広がってくる。この力強く股関節と心を開くポーズによって、レッドフォードのエネルギーはすっかり変わるという。

「大地に包まれているような気がするの。そして、心に自由な感覚が湧き上がってきて、文字どおりバランスがとれているのを実感するの」

ヨガの展開としての象徴

多くの人がロータスポーズパドマーサナ、結跏趺坐)をヨガの典型的なポーズだと考えている。手と足の配置が蓮(英語でロータス)の花びらを思い出させる。泥の中に張った根から高く茎を伸ばし、水の上で太陽に向かって咲く花だ。このイメージは、まさしくヨガが展開する過程を象徴している。

「蓮は泥の中に根を張って、そこから茎を伸ばして美しい花を咲かせます」。こう語るのは、カリフォルニア州オークランドのヨガインストラクターで、本誌の寄稿編集者でもあるリチャード・ローゼンだ。「蓮と同じように、誰でもヨガを始めたばかりのときは、現世の泥の中に根を下ろしています。でも練習を進めていけば、大輪の花へと成長することができます」

蓮の花(パドマ)が意味するものとは

蓮の花(サンスクリット語ではパドマ)は、時間と宗教を超える力強い象徴である。実際何世紀にもわたって、悟り、感情の超越、宇宙の再生と復興、純粋さ、美しさ、精神的な豊かさと物質的な豊かさなど、あらゆるものの象徴となってきた。

この誰もが知る花は、古代エジプトとインドの創世の物語でも重要な役割を果たしている。ヒンドゥー教の図像でもよく使われていて、数多くの力強い女神たちと結びついている。豊穣の女神ラクシュミーは、蓮に座っていて手には別の蓮を持っているように描かれることが多い。頭部が象の姿をしている障害を除去する神ガネーシャも、宇宙の保存の原理を表しているとされる神ヴィシュヌも、やはり蓮の花とともに描かれている。

また、言い伝えによれば、ブッダが歩いたあとにはいたるところに蓮の花が咲いたとされている。 このような一連の意味深いイメージからヨガのポーズが生まれた。

古文書に記されたロータスポーズ

研究者の間でもロータスポーズに言及した最古の文書がいつ書かれたのかはっきりわかっていないが、『ヨーガスートラ』の最古の解説書と考えられる書物の中に、ロータスポーズについての記載がある。西暦400年頃、賢者ヴィヤーサはパタンジャリが唱えた楽に座る方法を見つけるという考え方を詳細に説明した。そして、瞑想と呼吸法に役立つ11の重要なポーズのひとつに、ヴィーラーサナ(英雄のポーズ)やダンダーサナ(杖のポーズ)と並んでロータスポーズを挙げた。

また、『ハタヨガプラディーピカ』でもロータスポーズが取り上げられている。これは15世紀に書かれたもので、特定のポーズを瞑想だけでなく健康のために行うことを説いた最古の書物である。『ハタヨガプラディーピカ』でロータスポーズは「病気を打ち負かすポーズ」と呼ばれていて、体とエネルギーに及ぼす多数の効果が列挙されている。

『プラディーピカ』によれば、あの姿勢で体を「固定」するために、胃、胆嚢、脾臓、腎臓、肝臓のツボが押されるとされている。その結果、代謝と脳に変化がもたらされて、全身の組織のバランスがとれるようになるのだという。

『プラディーピカ』と同じような教本、『ゲーランダサムヒター』と『シヴァサムヒター』でも、呼吸法を習得する姿勢としてロータスポーズが(ややもったいぶった形で)取り上げられている(以上3点を合わせて、古典的ハタヨガの最古の三大教本と呼ばれる)。

シヴァサムヒターにはこう書かれている。

「ロータスポーズで座っているヨギが大地を離れて空中に静止しているときには、自らの生命と呼吸を統制できていることを承知しているべきだ。そして、それが暗黒の世界を破壊するのだ」

現代におけるロータスポーズの見解

現在でも、体とエネルギーに及ぶ多数の効果を求めてロータスポーズが行われ続けている。このポーズは腰椎の血流を増やし、腹部臓器の調子を整え、足首と足を強化し、股関節の柔軟性を高めるといわれている。エネルギーに強力な効果をもたらすことは言うまでもない。

パドマーサナがほかのポーズと異なるのは、地に根を下ろすポーズであると同時に、桁外れに拡張的なポーズであるという点です」パラヨガの創設者でヨガ指導歴が25年以上に及び、今回のシークエンスの考案者でもあるロッド・ストライカーはこのように語っている。「体の面では地に根ざす安定感が得られますが、それによって意識は脊柱と脊柱より高いところにあるセンターに向かいます。これが生命力を一点に集めて、一定の方向へ向かわせるよい練習になるのです」

生命力を一定の方向に向けられるようになれば、うわついた感じがなくなって地に足がついていると感じるようになる。また、疲れを感じなくなり、力強さを感じるようになる。自分のエネルギーをもっと賢く使えるようになるのだ。「このポーズでは、多くの人が骨盤から飛び上がって肩と首から動き出すことを経験しています」とレッドフォードは話している。レッドフォードは、エネルギーを集めてそのエネルギーを再び骨盤に向けることによって、エネルギーを定着させて自分自身を地に下ろすことを学ぶことができると説いている。

心を静める効果

ロータスポーズは体に活力を満たす一方で、心を静めて安定させbloomるポーズでもある。このポーズでは姿勢と脊柱の配列が正しく保たれることによって、瞑想状態を生み出すのに欠かせない深い呼吸が促される。また、臀部が安定しているため、さまざまな感覚が内側に向かっていく。

レッドフォードはさらに、このポーズは余分なヴァータ(空気の性質)を放出するのに役立つとも話している。「余分なヴァータを放出すると、神経系が静まり落ち着いてきます」。また、ローゼンによれば、心が上向きになるほか、ロータスポーズはかなり劇的な効果をもたらすという。「このポーズ自体が意識を変えます。脳を静めて、意識を内側に引き込むのです」とローゼンは説明している。 ハーフロータスポーズ(半蓮華座)でも完全なロータスポーズ(蓮華座)でも、腕は組んでも太腿にのせても、座っている時間は10回呼吸する間でも10分間でも、物の見方を変えることができる。

レッドフォードは次のように話している。「このポーズで座っているときには、自分を蓮の花だと思ってください。重力が根を下ろすことを求めてきます。たとえ今泥にまみれた人生を送っているとしても、太陽に向かって心の花を咲かせることができるのです」

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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Photos by David Martinez
Illustrations by Scott Bakal   
Model by Matt Pesendian
Styling by Lyn Heineken   
Hair&make-up by Racine Christensen  
Translation by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.66掲載



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