妊娠前~閉経後…ライフステージごとに変わるホルモンバランスとヨガの役割
妊娠可能期:根を張ろう
体内で何が起きているのか
20代前半から35歳くらいまでの時期は、月経前症候群が最も強くなるほか、(職業を決めたり、人生の伴侶を見つけたり、家庭を築くなど)人生の込み入った問題に直面して感情に激しい浮き沈みがみられる。日々の生活だけを見ても、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンのバランスが新たなバランスに適応していく必要がある。「この時期の良い点は、体が柔軟になることと、環境などへの適応力が高まることだ」とサラ・ゴットフリードは説く。ゴットフリートは医学博士で女性を対象とした統合医療を専門とする医師である一方、ヨガも指導しており、『The Hormone Cure』の著書がある。一方、この時期の悪い点は、感情が繊細になり、不安やむら気が顕著になることだ。ストレスホルモンとも呼ばれているコルチゾールの値も、おおむねこの時期に最高に達する。子供のいる女性はこのほかにも劇的な変化を体験する。「女性の一生のうち、妊娠期間中と産後にホルモンの変動が最も大きくなり、それによって乳房、脂肪組織、筋肉など全身に変化が引き起こされます」。前述の神経精神科医ブリゼンディーンはこのように話している。また、子供の有無に関係なく、この時期のホルモンの変化は感情にも影響を及ぼす。絆を築く愛情ホルモンとして知られるオキシトシンが大量に放出されることによって、内なる母性が引き出される一方で、テストステロンが増加することによって、攻撃性を感じたり動揺したりすることもある。
ヨガの練習を変えていこう
ゴットフリードは、エストロゲンと黄体形成ホルモンの分泌が急増する排卵期には創造性と力が満ちあふれると考えており、この期間に太陽礼拝や力が湧いてくる後屈のポーズと逆転のポーズをすることを推奨している。月経の期間中は、回復目的のポーズを行うことによって、月経痛を和らげたり、気分の揺れを抑えたりすることができる。また、ゴットフリードは月経の期間中に自分の体を管理することはきわめて重要だと説いている。サンフランシスコでヨガを指導しているジェーン・アースチンは、この多忙な時期のストレスに対処するうえでヨガが役立ったと話している。「ヨガの本質はポーズだけにあるわけではありません。ヨガは私をよい母親にしてくれます」と語るオースチンは、自分が幸せでいるためにヨガが欠かせないことがわかったので、日中に練習する時間がなかったときには、夜9時でもマットを広げるのだという。
「もちろん、私は頭の背後の床に両足を下ろすポーズだってできますよ。でも、子供たちに怒鳴っているとしたら、そんなことなんの意味があるのでしょうか」。この時期こそ、瞑想を取り入れるべき時だ。
「20分間の瞑想を1日2回すれば、血圧が低下し、不安が和らぎ、睡眠と記憶が改善することが研究によって示されています。すべて30代の人が必要としているものですよね。人生の階段を上っている真っ最中で、家を建てたり、多くの場合自分以外の人の面倒を見ている時期ですから」。ノースラップはこう語っている。
実際の体験談
このページのモデル、ウテ・キルヒゲスナー(撮影当時32歳)は、26歳でヨガを始めると、すぐにそのとりこになったという。ただ、間もなくして体の疲れと腰痛を感じるようになった。ヨガだけでなく生活でも「頑張りすぎていた」のだ。そこで、キルヒゲスナーはヨガの練習と慌ただしい日常生活のペースを少し落とした。
「ヨガは続けましたが、以前よりも抑え気味にして、呼吸と思考と感覚に意識を向けるようにしました。すると、腰痛が解消して、地に足がついていると感じられるようになったんです」。キルヒゲスナーはアシュタンガヨガの指導者養成講座に申し込み、その数カ月後に受講を始めたときに、妊娠4カ月であることがわかった。このときは当初の計画よりも控えめな練習にせざるをえなかった。母親になる準備をするのは大変なことだった。「私は今、さらに練習を控えるようにしています。家ではストレッチとリラックスを目的としたポーズをするだけ。でも、それがヨガなんです!」
バカーサナ(ツルのポーズ)
効果:体幹と腕の力、バランスを維持するのに役立つ。
やり方
両足を5 ~ 6cm離し、膝を腰幅より開いてしゃがむ。太腿の間に胴体を傾けていきながら、肘を曲げて両手を床に下ろしていく。太腿の内側を胴体に押し上げ、すねを脇の下に当てる。胴体をさらに前に出しながら、肘を曲げた状態でかかとをゆっくり床から離し始める。ここで深い呼吸を3回する。息を吐きながら、手で全身のバランスをとりながら、つま先を片方ずつ床から浮かせる。この姿勢を20秒間保つ。次に、両足を腕に強く押し当てながら、肘を伸ばしていく。ポーズを出るには、肘を曲げ、胴体を下ろして脚を解放し、しゃがんだ姿勢に戻る。
ヴィーラバッドラーサナⅡ(戦士のポーズⅡ)
効果:頑張ることとくつろぐこと、交感神経と副交感神経のバランスをとるのに役立つ。
やり方
足を120cmほど開いて立つ。右足をやや内側に向け、左足を90度外に回転させる。腕を両側に開き、床と平行に保つ。息を吐きながら、左膝を曲げて足首の真上に揃えて、左手の指先のさらに先を見る。可能な場合は、左太腿を床と平行にする。顔とあごの緊張をゆるめる。呼吸を繰り返しながら、体の前面を働かせ(交感神経を活性化)、体の背面をゆるめて(副交感神経を活性化)、前面と背面のバランスをとる。5回呼吸する間この姿勢を保つ。反対側も同様に行う。
ヴィパリタカラニ(壁に脚を上げるポーズ)
効果:仕事と子供の世話から解放される時間を得られる。体を回復させ、心を静めるのに役立つ。
やり方
たたんだブランケットか高さ15cmほどのボルスターを壁の近くに置く。体の右側を壁に向けて、ボルスターの上に横向きに座る。息を吐きながら、ゆっくりボルスターの上に横たわり、体を回転させながら両足を壁に向かって上げる。坐骨をボルスターと壁の間に下ろし、体の背面をボルスターの上に休ませ、肩は床に下りるように体の位置を調整する。腕を伸ばして胸部の開きを支える。両側に伸ばしても、頭上に伸ばしてもよい。脚全体を働かせ続け、顔とあごの緊張をゆるめて、深い呼吸を続ける。5~15分間このままでいる。ポーズから出るには、ボルスターを静かに外して体を横に向け、2~3回呼吸をしてから体を起こして座る。
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