ヨガのルーツは5つの伝統文化だった?ヨガポーズの起源と背景
マラカンブとインドのスポーツ
マラカンブは、レスリングと体操の要素を合わせ持つインドの伝統スポーツだ。マラは戦士、カンブは柱を意味する。この体操では通常は高さ2メートル,基部の直径が22センチ、上部の直径が12センチの柱が使われる。柱の上でバランスを取りながら回転したり、身体をねじり、伸ばし、ヨガアサナを行うため、アスリートには強さ、柔軟性、敏捷性が要求される。最も印象的なマラカンブのポーズの一つ「フラッグポール(旗のポーズ)」では、柱に対して身体を真横にした状態でホールドする。このスポーツが最初に歴史に登場するのは、1153年にソメシュワラ三世が軍隊練習について書いた古文書マナソラーサだ。
それ以前の記録がないのは、当時のインドが8世紀からイスラム教徒の支配下にあり、多くのインド文化活動が禁じられていたためと考えられる。現代のヨギーたちがマラカンブの練習を見たら、普段マットの上で練習しているアサナの多くが空中で行われていると気づくだろう。本来それらはエアリアルヨガだったのだ。次に踊り子のポーズを練習するときは、柱の上にいると想像しながらやってみよう。
アーユルヴェーダとカラリパヤット
インド武術には武器訓練や、格闘技、曲芸、レスリング、競争、弓術が含まれる。レスリングに関する記載は、リグヴェーダや古代インドの叙事詩ラーマーヤナやマハーバーラタにみられ、これらの物語には偉大な戦士たちが登場する。素手で岩を砕くビーマや、鷹並みの視力を持ち、飛ぶ鳥の目を射抜く弓の名手アルジュナ、風のように走り、飛び回る猿王ハヌマーンなどだ。
カラリパヤットは、南インドのケララ地方で誕生した世界最古の武術と言われる。言い伝えによると、カラリを習得したボーディダルマ(菩提達磨、アジア大陸における武術の創始者)が仏教と武術を中国に伝道し、それが道教と中国武術と統合されたという。戦士のポーズ(ヴィラバドラーサナ)1,2,3はカラリの実践として行われている。
さらにケララは、インドの伝統医学アーユルヴェーダの発祥の地でもある。二千年前に書かれたアーユルヴェーダの医学書「チャラカサンヒター」には、眼科手術や接骨、腎結石の除去のような高度な医療処置も記載されている。アーユルヴェーダではドーシャと呼ばれる3つのエネルギーを基本としている。これらは精神と身体を司るものとして、カパ(水と地)、ピッタ(火と水)、ヴァータ(風と空)に分けられ、この3つのバランスが調っていると私たちは快適で健康な状態でいられる。インドのアーユルヴェーダ・プラクティショナーたちは医師として、長年にわたってヨガ、薬学、栄養学のトレーニングを受けており、ドーシャの乱れを診ることで、セラピー効果のあるアサナや植物療法、食事指導などの治療を決めている。
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