そのポーズ、肘が「過伸展」しているかも?理学療法士による過伸展チェックポイント
四つ這い
CAT&COWなどで登場する四つ這いポーズでまずみてみましょう。
1つ目の写真は、肘を伸ばしきって過伸展した状態です。肘が反対側にグニャッと反ってしまっていますよね。これはNGです。試しに上腕三頭筋(上腕の裏側にある二の腕の筋肉)を写真のように片手で触ってみてください。筋肉が柔らかいですよね?上腕三頭筋が使えていない証拠です。筋肉ではなく関節で体重を支持してしまっているのです。
2つ目の写真は、肘の過伸展を避けるため少し肘のロックを緩めた状態です。ポイントは肘の内側のシワ、つまり肘窩(ちゅうか)を左右向かい合わせるようにすることです。するとちょうどいい具合に肘のつっぱりが緩みます。同じようにこちらも上腕三頭筋を触ってみてください。先ほどと違って、筋肉が硬くなっているのが分かりますか?上腕三頭筋がしっかり働いている証拠です。このように、関節でなく筋肉で体重を支持してほしいのです。
プランクポーズ
次にプランクポーズです。これも太陽礼拝など頻繁にヨガで行うアーサナです。四つ這いポーズよりもプランクポーズの方が体重の負担が高くなります。
Ⅰつ目の写真は肘が過伸展しています。このように肘の不良アライメントが、肘関節への悪影響だけでなく、隣接した関節である肩関節や手関節への負担を増大して、肩や手首の不調へと波及することがあります。
2枚目は意識的に過伸展を回避したプランクポーズです。こちらは四つ這いのOKポーズと同様、筋肉で体重を支えている状態なので安全です。ポイントも同じで肘窩を左右向かい合わせることです。
ヴァシシュターサナ
肘の正しい使い方に慣れてきたら、このヴァシシュターサナ(横向きの板のポーズ) のような難易度の高いポーズにチャレンジしていけるはずです。片手と片足だけの支持のため、プランクポーズよりも更に肘への負担が上がります。そのため肘の過伸展がうまく修正できないうちは、怪我や痛みの原因となるのでおススメしません。まずは四つ這いポーズで、その次にプランクポーズで肘の過伸展の制御に慣れていきましょう。
最後に
過伸展の状態まで肘を伸ばせるくらい柔らかい方にとっては、最初は肘を緩めるような感覚に違和感があったり、筋肉を使って支えることがキツく感じるかもしれません。しかし、肘を伸ばし過ぎない位置で保持する筋肉の強さを身につけていくことが、肘関節の変形や靭帯損傷を避け、肩や手首など腕全体を守る助けになります。少しずつ練習して正しいアライメントを習得していきましょう。自分が過伸展しているのかどうか、またどの程度肘の力を緩めればいいのか分からない時は、インストラクターや理学療法士などの専門家に気軽に声をかけてみてください。長く健康にそして安全に、自分の身体と向き合っていけるヨガライフを送りましょう。
参考:石井直方「石井直方の筋肉まるわかり大事典」ベースボール・マガジン社,2008
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く