ネガティブに考えるクセを手放そう!
自分のためにならない習慣を断ち切って、健康や幸せをもたらす新たな習慣を身に付けたい?それにはマットの上で自制心、慈悲心、忍耐力を鍛える必要がある。その方法を教えよう。
意志の弱さに悩んでいるなら、このシークエンスで自制心を養おう
ヨガを実践する多くの人は、よりマインドフルに人生を歩むために常に努力をしている。だが、その努力にもかかわらず、それを妨げる障害が現れ、望まない反応をしてしまうときがある。たとえば、砂糖断ちを誓いながらもクッキーを見て挫折したり、他人のSNSの投稿を見て競争心を持つ自分を責めたり、ヨガクラスでバカーサナ(鶴のポーズ)のバランスが保てずにいらいらしたり……。これらの障害は私たちのサムスカーラに関係している場合が多い。サムスカーラとはサンスクリット語で、無意識に何度も陥ってしまう心理的、感情的な習慣や習性を意味する。それが意識的、無意識的、またはポジティブ、ネガティブであろうと、サムスカーラはある状況に対する条件反射を形成する。そのように潜在意識に蓄積された習性パターンを変えることは難しいが、幸いなことに、ヨガの練習は自分のサムスカーラを分析し、望むものの実現を阻む正体を突き止めて対処するのに役立つ。ヨガで自分の反応パターンを観察することによって、実生活でも無意識な反応が起きたときにそれに気づけるようになり、感情や思考、心の動き、気分、行動を意識的に変えられるようになる。たとえば、ヴルクシャーサナ(木のポーズ)でバランスを崩したとき、心の中の独り言に耳を傾けてみよう。それは優しい言葉だろうか?それとも自分を責めている?生徒たちの前に日々立ちはだかる障害でよく見られるのは、自己批判、挫折感、意志力の欠如だ。ここで紹介する3つのシークエンスで、自分自身の障害を克服するのに必要な術を培おう。そうすればよりマインドフルに生きられる新たな習慣を始められるはずだ。
1.ウトゥカターサナ(椅子のポーズ)
マットの前方に立ち、ターダーサナ(山のポーズ)に入る。息を吸って両腕を左右に広げてから頭上に伸ばし、肋骨の脇を長く伸ばす。息を吐きながら、椅子に座るように腰を後方に下げる。体重をかかとに移し、腿の付け根と尾骨をマットに近づける。首の両側の力を抜き、あごもゆるめ、目をリラックスさせる。このまま1分間保つ。ウトゥカターサナは強度の高いアーサナだ。おそらくこの不快感から逃れようとする心の動きに気づくだろう。それらを観察しながら、このままでいることを選ぶ。辛くなってきたら、ただその辛さを味わおう。
慣れ親しんだ習慣から抜け出すために、新たな習慣になじむことより、やっぱり変わらないほうが楽だと感じるなら、サンガ(集い)に参加しよう。習慣的なパターンを断ち切るのは大変な仕事だ。このシークエンスでは、困難に向き合い、最後まであきらめない強さと勇気を培えるだろう。各ポーズはシンプルだが、ウトゥカターサナ(椅子のポーズ)のようなポーズをホールドすることで困難と向き合い、人生を阻む障害をうまく対処する練習ができる。
2.ウッティターパールシュヴァコーナーサナ(横に伸ばすポーズ)
マットの前方でターダーサナ(山のポーズ)の姿勢に戻り、ステップかジャンプで足を左右に大きく開く。両腕を肩の高さで左右に広げ、右腿を外側に90度開き、左のつま先をやや内側に向ける。息を吸いながら、足で地面を踏みしめて、体を引き上げる。吐く息で右膝を曲げるが、膝が足首の真上よりも前に出ないように調整する。右の太腿を外側に回旋させて、膝と足の人差し指が一直線上に並ぶようにする。右の腰の外側を左足のかかとのほうに引き、上半身は右足のほうに長く伸ばす。右手を右足首の外側のブロックにおき、左腕を上に伸ばす。右手でブロックを押しながら、左の鎖骨から左腕、指の先まで長く伸ばす。左腕を耳の横に沿わせ、脇の下の外側を胸のほうに向ける。ホールドして1分間呼吸を続け、反対側でも繰り返す。
3.アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)
バーラーサナ(子供のポーズ)の姿勢で両腕を前に伸ばし、体の両脇を長くする。両手が肩幅に開いているか確認しよう。手のひらでマットを押して両腕を真っすぐ伸ばす。息を吸いながら四つん這いになり、吐く息でつま先を立てて太腿を後ろに引き、ダウンドッグに入る。手のひら全体でマットを押し、伸ばしている腕を引き上げるようにする。腿の付け根を後ろに押し、体重を両脚にかける。このまま少なくとも1分間ホールドしながら、感覚や思考を観察しよう。何かほかのことを考えてしまったり、湧き起こってくるものを避けたいと思うかもしれない。そうなったら、今ポーズを行っていることに意識を戻そう。
4.プランクポーズ
ダウンドッグの姿勢から、かかとを後ろに引いて上体を前に出し、手首の真上に肩がくるように調整する。手のひらでマットを押しながら、腕から上に引き上げるようにする。肋骨の下部を背骨のほうに引き込み、鎖骨を左右に広げる。腿の付け根を引き上げて床から遠ざけながら、尾骨をかかとのほうに下げる。かかとを後ろに伸ばしながら、胸骨を前に伸ばす。このまま1分間ホールドする。このポーズによって生み出される熱や、体の中心とのつながりを感じよう。
5.ヴァシシュターサナ(横向きの板のポーズ)
ダウンドッグの姿勢から右足の外側をマットにつけ、その上に左足を重ねる。体重を右手に移し、左手を腰にそえてから、天井に向かって伸ばす。この時、肩の真下に右手をつかないように注意する。必ず手はやや前方につくようにしよう。頭も横に向け、背骨から一直線になるようにする。腿の内側を後方に向けながら、尾骨はかかとのほうに下げる。足はかかとの内側から拇指球まで伸ばす。このまま1分間ホールドしたら、ダウンドッグに戻り、反対側でも繰り返す。
この短いシークエンスをもっと長いホームプラクティスに加えてもいいし、この5つのポーズの後にセツバンダサルヴァーンガーサナ(橋のポーズ)やスチランドラーサナ(針の穴のポーズ)などの仰向けのポーズを行い、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)で終えてもいい。
自分への厳しさに悩んでいるなら、このシークエンスで慈悲心を育てよう
慈悲とは優しさのひとつで、思いやりを持って自分や自分の不完全さを受け入れる能力のことだ。変化の過程では最も重要なものとなる。自分への思いやりがなければ、自己批判やネガティブな考えにとらわれ、自分の可能性を自ら制限してしまうからだ。クラスでも、アドームカヴルクシャーサナ(ハンドスタンド)で何度か脚を蹴り上げてみた後に、マットに座り込んで頭を横に振る生徒たちの姿をよく目にする。ネガティブからポジティブな面に目を向けてみよう。たとえば、ハンドスタンドの練習で、片脚を上げて安定した呼吸ができる自分を認めてあげよう。慈悲心を育てるとは、自分をサポートする方法を学ぶことだ。この前屈中心のシークエンスでは実際にプロップを用いて頭をサポートする。それにより、安定した状態でグラウンディングや支えられている感覚が得られる。
1.バーラーサナのバリエーション(子供のポーズ)
正座になり、両膝を腰幅に開く。縦半分に折ったブランケットを4枚重ねて、太腿の間に挟む。上体を倒してブランケットの上で休ませ、肘を曲げて床につけたら、頭を横に向ける。肘が床につかない場合はさらにブランケットを上腕の下に入れる。背中が丸くなってしまうなら、胸の下のブランケットを1枚減らす。このまま少なくとも5分間ホールドする。途中で頭の向きを変えよう。このポーズは私たちの意識を内面に向け、安全でサポートのある空間をもたらしてくれるので、安心して心身をゆだねよう。
2.ダウンドッグのバリエーション
子供のポーズの姿勢から両腕を前に伸ばす。両手が肩幅に開いているかを確認し、手のひらでマットを押しながら両腕を真っすぐ伸ばす。体重を前に移して四つん這いになり、つま先を立てて太腿を後ろに引いてダウンドッグに入る。頭頂部の下にブロック(あるいはたたんだブランケットやボルスター)を適度な高さにして置く。腿の付け根を後ろに押して、体重を両脚にかける。両手を前方に伸ばしながら、かかとを下ろす。頭の重さをブロックにあずけ、このまま1分間ホールド。このダウンドッグのバリエーションは、グラウンディングの感覚とマインドが安らぐ場をもたらしてくれる。
3.パリヴルッタジャーヌシールシャーサナのバリエーション(ねじった頭を膝につけるポーズ)
椅子に向かって座り、両脚を前に(椅子の下に)伸ばす。左膝を完全に曲げて、左腿を外旋させる。左腰の後ろ側を右に引き込んで、さらに骨盤を左に開く。息を吸いながら、ウエストの両脇を引き上げて背骨を長く伸ばし、吐く息で上体を左側にねじる。上体を右足に向かって真横に倒し、右手で椅子の足を内側からつかむ(どの足でもよい)。左腕を頭上に伸ばし、椅子の背をつかむ。椅子の座面に重ねておいたブランケット1~2枚の上に頭をのせて休ませる。ゆっくりと胸を天井に向け、5分間ホールドする。このポーズは体の側面を開き、広がる感覚をもたらすので、内面のスペースや優しさがより生み出されやすくなる。尾骨が丸まっていたり、曲げた膝が床から浮いている場合は、ブランケットを1~2枚重ねた上に座るとよい。反対側でも繰り返す。
4.ウパヴィシュタコーナーサナ(座った開脚のポーズ)
椅子に向かって座り、足を左右に開く。太腿上部でマットを押して足を活性させ、股関節から前屈し、上体を椅子に向かって長く伸ばす。椅子の座面に置いた1~2枚のブランケットの上に額を休ませ、肘を曲げて手を座面にのせる。このまま5分間ホールドする。椅子に体をゆだねながら、意識を内側に向けよう。ハムストリングが硬い場合や、尾骨が丸まる場合は、1~2枚重ねたブランケットの上に座るようにする。
5.シャヴァーサナのバリエーション(亡骸のポーズ)
椅子の座面にブランケットを1枚のせ、2枚目のブランケットは縦長に半分にたたんで横に置いておく。仰向けに寝てふくらはぎを椅子の座面にのせる。腰を持ち上げて、たたんだブランケットを仙骨の下に入れる。肘を曲げて両手をお腹にのせる。このままポーズに身をゆだねて呼吸をしながら、少なくとも5分間ホールドしよう。支えのあるシャヴァーサナによって、深い解放感がもたらされるだろう。
挫折感に悩んでいるなら、このシークエンスで忍耐力を高めよう
変化には時間を要する。以前の習性パターンに後退してがっかりするのは簡単だ。やっぱり変わるのは無理だ、と失敗を正当化する時もあるだろう。そんな経験があるなら、今こそ忍耐力を養うときだ。自分の不器用さや過ちを許し、気にせずに前に進み続ける方法を学ぶべきだ。やがてその寛容さから自信が生まれ、忍耐強さにつながっていく。ここで練習するのは、すべてバランスのポーズだ。バランスを失って倒れる時ほど、忍耐力を養える機会がほかにあるだろうか?このシークエンスは、足場を失ったときや期待どおりにならなかったときに自分がどう反応するかを観察する機会を与えてくれる。これらのポーズによって、今の自分に対して寛容になる力が養われるだろう。そして、別の人間になろうとしなくてもいいと気づくだろう。とにかく練習あるのみだ。
1.ヴルクシャーサナ(木のポーズ)
マットの前方に立ち、山のポーズに入る。左足に体重をのせ、右膝を胸に引き寄せる。右腿を外旋させて、足裏を左の腿の内側に(難しければ、ふくらはぎに)つける。立っているほうの足で床を押しながら、太腿と腰を引き上げる。右の足裏と左腿の内側で互いに押し合うようにする。胸の前で合掌するか、バランスがとれるなら両腕を空に向けて伸ばす。顔の力を抜き、呼吸をしながら1分間ホールドする。伸ばした手の先に視線を上げたり、ゆっくりと長めに瞬きをしてみよう。反対側でも繰り返す。ポーズを終える時に、自分の反応を観察しよう。倒れないように無事にポーズを実践したか?倒れた人は、自分を責めているか?何が起ころうとも穏やかに落ち着いた態度でいる練習をしよう。
2.ウッティタートリコナーサナ(三角のポーズ)
山のポーズから、両足を左右に開き、腕を横に広げる。右の太腿を90度外側に開き、左足のつま先をやや内側に向ける。両足で床を踏み込みながら大腿四頭筋を引き締めて太腿を引き上げる。息を吸ってウエストの両側を上に伸ばす。息を吐いて右腰の外側を左のかかとのほうに引き、上体を右足に向かって長く伸ばす。右手を右足の外側に置いたブロックの上にのせる。右の太腿を開きながら、右足のかかとの内側と拇指球でマットを押す。左のかかとで床を押してウエストの両脇を均等に伸ばす。息を吐きながら右の肋骨を壁のほうにねじり、左の肋骨を後ろの壁に向かって開く。ホールドして5回呼吸する。
3.アルダチャンドラーサナ(半月のポーズ)
三角のポーズから、右手を腰において視線を右脚に落とす。右膝を曲げ、右手でブロックをつかんで前方に移し、右脚に体重をかける。左足を床から浮かせて伸ばし、後ろの壁を押すようなつもりで、かかとを押し出す。右腰の外側を中心線に寄せるようにする。鎖骨を左右に広げて左腕を伸ばす。胸を天井に向かって開き、視線は左手の指先に向けて、バランスをとろう。ホールドして5回呼吸をしたら、ゆっくりと丁寧に三角のポーズに戻る。重力に負けないように、上げている足の高さをキープしよう。ポーズを終える時、ポーズを慌てて終わらせようとしなかったか、未知のチャレンジよりも慣れ親しんだ安全圏に駆け込もうとしなかったか、など振り返ってみよう。反対側でも三角のポーズと半月のポーズを繰り返す。
4.ヴィーラバッドラーサナⅠ(戦士のポーズⅠ)
山のポーズの姿勢から、ステップかジャンプで足を左右に開く。両腕を頭上に伸ばし、右の太腿を外に90度開く。左足のつま先は内側に45度ほど傾け、左足をやや左側にずらす。左足のかかとの外側でマットを押し、左腿の付け根を後ろに押す。左脚全体の調和を崩さないようにして、右の腰を後ろに引く。重心を下げてウエストの両脇を上に伸ばす。息を吸って胸骨を手のほうに向かって引き上げる。吐く息で右膝を曲げ、右足首よりも前に出ないようにしながら、右の太腿を床と平行にする。右のかかとで床を押し、左脚を伸ばす。顔の力を抜いて呼吸をしながら、1分間ホールドする。
5.ヴィーラバッドラーサナⅢ(戦士のポーズⅢ)
戦士のポーズⅠの姿勢から、上体を右太腿の上に倒す。左足を一歩前に出して、体重を右脚にかける。左足のつま先を床から浮かせ、脚全体を力強く伸ばす。右の腰の外側を中心に寄せながら引き上げ、骨盤が自然に上がるようにする。ウエストまわりを長くして、両腕と胸骨を前方に伸ばす。両手を床(あるいは床に置いたブロックの上)に下ろしたり、両腕を上体に沿わせて後ろに伸ばしてもよい。ホールドして5回呼吸したら、上げている脚をゆっくり下ろして戦士のポーズⅠに戻る。この戦士のポーズⅠとⅢのフローを反対側でも繰り返す。この2つのポーズはバランス力を養うだけでなく、強さや活力も生み出してくれる。この短いシークエンスをホームプラクティスに組み込んでもいいし、これら5つのポーズにゴムカーサナ(牛の顔のポーズ)のようなポーズを加え、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)で終えてもよい。
指導&モデル/クリッシー・カーター
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