「命の現場を経て、自分を大切にするヨガを伝えたい」|平野夕貴さんの転身ストーリー

 「命の現場を経て、自分を大切にするヨガを伝えたい」|平野夕貴さんの転身ストーリー
Sayaka Ono

生徒さんから圧倒的な支持を集め、メディアやイベントでもひっぱりだこのヨガ講師たち。そんな彼らに共通しているのは、「セカンドキャリア」としてヨガ講師を選んでいるということ。彼らの転身までの背景を知ることは、「どうしてヨガ講師として成功できたのか」に結びついているに違いない、そんな思いからスタートした企画。異業種からヨガ講師へ転身した彼らの、決意、行動、思いから、「本当に良いティーチャーとは」という講師の素質にも迫ります。

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♯CASE9「看護師」からヨガ講師への転身ストーリー

今も小児医療の現場で働く平野夕貴さんは、懸命に生きようとする幼い命のたくましさと、同時に儚さを目の当たりにしてきました。やりがいとやるせなさが交差する特別な経験は、平野さんにどんな気付きを与えたのでしょうか。フィジカルだけでなく、心にも寄り添うヨガを伝えようと走り始めた26歳の転身ストーリーです。

――ヨガ講師になる前は、どんな職業をしていたのですか?

大学で看護を学び、大学病院のNICU(新生児集中治療室)で看護師として働いていました。NICUは、早産で生まれた新生児や、出生時から障害や疾患を抱えた重症度の高い子どもたちに集中治療を行う部門です。赤ちゃんが大好きでNICUに志願しましたが、小さな体で病と向き合う姿に私の心が折れそうになることも。実際、未熟な自分が幼い命と向き合う重圧や、赤ちゃんを看取る辛さから看護師1年目でうつ病を発症してしまったんです。人を助けたいのに自分が心を壊してしまい、不甲斐なくもありショックでした。

平野夕貴
Photo by Sayaka Ono
平野夕貴
医療ドラマさながらの出来事が日常だった大学病院での一枚。赤ちゃんの体調やミルクの量まで詳細に記録するのも看護師の仕事

――心のバランスを崩し、リハビリのような感覚でヨガを始めたのですか?

ヨガを始めたのは学生時代です。でも多忙で遠ざかり、再開したのはうつ病がきっかけでした。当時は、仕事の前日になるとストレスで過呼吸になり、一睡もできずフラフラになって仕事に行くような状態。それが自分を労わるヨガのおかげで心に余裕が生まれ、ありのままの自分を受け入れられた。段々と仕事が楽しく感じられるようになり、通院と服薬を半年で断つことができたのもヨガのおかげ。私を救ってくれたヨガを本格的に学びたい。そう思い立ち看護師をしながら指導者養成コースに通い始めました。夜勤明けの休日などを利用して講義を受け、大変でしたが新しい知識を得るのが楽しくて充実していました。

――何をきっかけに大学病院を辞めて、ヨガ講師に転身したのですか?

NICUは、とにかくすさまじい忙しさでした。患者さんとじっくり向き合うのが難しい状況にフラストレーションが溜まり1年で退職へ。休息期間を取り看護師以外の道も考えましたが、大学病院時代の同期が頑張っている姿に刺激を受け、もう一度看護師に挑戦しようと思ったんです。同時に、心を壊した時期にヨガによって救われた経験から、ヨガの魅力をもっと伝えたくもありました。それに、スクールでお世話になった先生たちの眩しいほどの笑顔が忘れられなかった。それが緊迫した医療現場とあまりに対照的で、私も笑って仕事がしたいと思ったんです。ヨガを教えたい、看護師に再挑戦したい。両方の思いからWワークを選び、小児科のクリニックで看護師として復帰し、その傍らヨガ講師としても活動を始めました。

平野夕貴
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――Wワークを始めてみた感想はいかがですか?また、2つの職業を両立するコツを教えてください。

Wワークはとても楽しく、私にはこの働き方が向いていると思います。大学病院では目の前の仕事をこなすのに精一杯、正直笑顔を忘れていました。今はヨガがあるからこそ心身のバランスがよく、クリニックでも笑顔でいられる。私にとってヨガはお守りのような存在ですね。気をつけているのは、やりたいこととやれることのバランス。看護師もヨガ講師も中途半端にならないために、仕事量が許容範囲を超えないように少しずつクラスを増やしていきました。仕事の後に充実感が得られず、楽しいと思えなかったらキャパオーバーのサインと判断。納得のいく仕事ができているか、常に自分に問いかけるようにしています。

平野夕貴
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平野夕貴
音楽療法を行うミュージシャンと一緒に、重度障害者の施設でヨガを指導。体の拘縮をほぐすマッサージなどを取り入れたプログラムは、看護師のキャリアがあってこそ

――ヨガ講師になってキッズやベビーのクラスも好評ですね。小児科の看護師をしてきた経験はヨガ指導に役立っていますか?

確かに、看護師をしているから気づけることがあると思います。これまでに、カフェや運動教室でキッズやベビーのヨガクラスを開催してきましたが、小さい子どもは突発的な動きをするし目が離せません。ケガのないよう一人ひとりに目配りできるのは、看護師として子どもたちと接しているおかげかなと。小児科の看護師という経歴がプラスアルファの安心材料になり、お母さんたちの信頼も得られていると思います。子どもと同じ目線に立ち、人見知りの子と心を通わせることも得意なんですよ。

最近は、指導者養成コースの同期や先輩とのつながりで活動の幅を広げ、「心と体に優しいヨガ」をテーマにヨガスタジオやフィットネスジムで指導しています。意識しているのは、命の現場を経験したからこそできる言葉がけや、生徒さんへの共感力です。命の儚さを目の当たりにした私だから、実感として伝えられることがあり、たとえば、「今ある命と、ヨガができる体に感謝して」と、クラスの最後に届ける言葉もそう。生徒さんからは、「先生の言葉で大切なものに気づかされた」と言ってもらったり、瞑想中に涙を流す人がいたり、心に語りかけるヨガができていると思います。経験をもとに発する言葉って、説得力がありますよね。だから私は、現役の看護師であることや、うつ病で苦しんだことなど自分の背景をオープンに話しています。ヨガでは病気や仕事での苦労がプラスに働き、寄り添える指導につながると思うんです。また、主観を押し付けず、生徒さんの思いを尊重できるのは、NICUで患者家族の心情に配慮する向き合い方をしてきたから。私にしかできないことが、生徒さんの心に響いているなら嬉しいですね。

平野夕貴
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平野夕貴
『こころのヨーガ』と『生きていくあなたへ』は、自分の心と向き合いたいときに愛読。印象的な言葉が綴られたページには付箋を貼り、レッスンのヒントにも

――Wワークでますます輝きを増している平野さん、今後の展望を聞かせてください。

今後もWワークというスタイルで、ベビーからシニアまで指導できるヨガ講師になるのが目標です。そして、体や心を犠牲にして頑張るのではなく、もっと自分に優しい生き方をヨガを通して伝えていけたら。私自身、自分を労われなかった経験があるので、なおさらそう思います。生徒さんを見ていると自分が疲れていることに気づいていない人が多いので、フィットネス感覚でヨガを始めた人も、心の変化に気づけるクラスを提供していきたいです。

――最後に、ヨガインストラクターを目指している方たちにメッセージをお願いします。

養成コースに通っている間は、学びに集中できる貴重な時間です。その間にいろいろな先生のクラスに参加し、知識を吸収してください。私もスクールのレギュラークラスやイベントに積極的に参加し、先生の言葉の誘導に耳を傾けメモを取っていました。自分から学び気持ちを忘れずにいてくださいね。

平野夕貴
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平野夕貴さん
ヨガインストラクター。大学病院NICU病棟の看護師を経て、YMCメディカルトレーナーズスクールでヨガ指導者資格を取得。現在は、小児科クリニックの看護師とヨガ講師を兼任。キッズヨガやベビトレヨガの資格を活かし、東京・神奈川を中心にヨガスタジオやフィットネスジムでも指導している。

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Text by Ai Kitabayashi
Photos by Sayaka Ono



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