「前職の経験から肩書きの先を熟考。ヨガを通して、喜びに貢献したい」|キミさんの転身ストーリー

 「前職の経験から肩書きの先を熟考。ヨガを通して、喜びに貢献したい」|キミさんの転身ストーリー
Yugo Numata

生徒さんから圧倒的な支持を集め、メディアやイベントでもひっぱりだこのヨガ講師たち。そんな彼らに共通しているのは、「セカンドキャリア」としてヨガ講師を選んでいるということ。彼らの転身までの背景を知ることは、「どうしてヨガ講師として成功できたのか」に結びついているに違いない、そんな思いからスタートした企画。異業種からヨガ講師へ転身した彼らの、決意、行動、思いから、「本当に良いティーチャーとは」という講師の素質にも迫ります。

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♯CASE8「デザイナー」からヨガ講師への転身ストーリー

ヨガインストラクター育成のためのさまざまなコースの企画やディレクション、指導に関わるキミ先生。監修したアプリ『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』が200万ダウンロードを超える大ヒットを記録したヒットメーカーでもあります。学生時代から憧れていたテキスタイルのデザイナーからヨガ講師に転身するまでのストーリー、前職の経験を生かしたレッスン展開、ヒットを生み出すヒケツ、自身の経験からヨガ講師を目指す人へのアドバイスなど、これからヨガ講師を目指す人に必要な“ビジョン”を教えていただきました。

——ヨガ講師になる前は、どんな職業をされていたのですか?また、ヨガに出会ったきっかけを教えてください。

アパレル業界で、テキスタイルのデザイナーをしていました。アパレルメーカーからオーダーされた洋服の素材や糸、染め方などを決め、生地を完成させていくことが、テキスタイルデザイナーの仕事で、専門的な知識が求められる職人の世界でしたね。デザイナー職は、学生の頃から真剣に目指していましたが、今、思うと、デザイナーという肩書きに憧れていたように感じます。だから、キャリアアップするにしたがい、向いてないって気づいてしまって…。これからの人生、デザイナーとしてクリエイティビティを研ぎ澄ますべきか、あるいはキャリアチェンジするべきか。自分の頭の中を整理して答えを見つけたいと思い、独学で瞑想を始めました。

——ヨガを始める前に、瞑想を学ばれたのですね。キャリアチェンジを決められたのは、瞑想を重ねた結果ですか?

そうですね。でも、デザイナー職が向いてないと気づきながらも、自分から会社を辞めると言い出す勇気がなかったんです。異動の辞令が出たら辞めようと思い、瞑想しながら「異動になりますように」って半年ほど祈っていたら、異動の話が持ち上がり、辞める決心がつきました。ヨガに出会ったのは退職後です。瞑想を深めるために単身インドへ行き、そこで初めて三角のポーズをとって衝撃的でした! 体の中にエネルギーが流れるのを感じ「これはすごい!!」と思い、それから瞑想とともに、ヨガもライフワークになりました。でも、そのときは、自分がヨガ講師になるとは思ってもいませんでしたね。

キミさん
Photo by Yugo Numata
キミ
瞑想を始めたのはデザイナー時代に読んだ本がきっかけ。瞑想を取り入れているアーティストの記事を読み「心をクリアにすれば没頭すべき仕事が見つかるはず」と信じ、5年間独学で練習

——瞑想を経てヨガに出会ったのですね。では、ヨガ講師を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

インドから帰国後、2001年に、欧米のヨガを学ぶためにニューヨークへ行き、そこでテロに遭遇しました。ニューヨーク中が悲しみに暮れていたとき、通っていたヨガスタジオの先生がクラスで聖典を読んでくれ、辛い気持ちの向き合い方などをアドバイスしてくれました。そのときに、心の傷を癒してくれる力がヨガにあることを感じ、また傷ついた人をサポートするヨガの先生の姿が印象的で、ヨガ講師のイメージを持つことができました。実際に、ヨガを教えるようになったのは、親しい友人たちから「ヨガを教えて欲しい」と頼まれことがきっかけです。当時は、インストラクターの資格が一般的ではなく、経験を元に指導していましたが、皆がすごく喜んでくれて、人に喜ばれるって、こんなに嬉しいんだ…と感動しました。

デザイナーの仕事を辞めるとき、新たな人生を生きるために、私は3つのビジョンを考えました。まず、第一に「一生、探求できることを見つける」。第二に「それによって、自分が幸せを感じる」。そして、第三に「それを通して、人の役に立ち、喜んでもらえる」。ヨガの指導を経験して、瞑想とヨガが、この3つのビジョンを叶えることと確信しました。

キミさん
Photo by Yugo Numata
キミ
本誌では、苦手ポーズ克服ヒントや猫背を改善するための方法などの特集を監修。筋肉の動きや関節の構造についての知識も豊富で、読者にわかりやすい指導に定評があります

——2007年からはヨギー・インスティテュートのティーチャーコースの指導にも関わられるようになりましたが、指導者を育成することにプレッシャーはありましたか?

プレッシャーというより、責任を感じました。コース内容を充実させるため、また自分自身のために、さまざまなヨガのアプローチ法や方法論を学びたいと思い、国内外を問わず、たくさんのトレーニングを受けました。新しいアイデアを1つ、生むには、10以上の知識をインプットする必要があります。これは、テキスタイルデザイナーをしていた頃に学んだことです。当時は、どんなに忙しくても、週末になると必ず、デパートやショップへ市場調査に行き、知識を増やしていました。その経験があるから、今も学び続けて知識を増やしたいと考え、毎年必ずトレーニングを受けています。ヨガのコースを受けるとき、私は少なくとも3回、多いものでは5回受講しています。コースを修了することと、コースの内容を吸収して教えられるようになることは、別のことだから。自分の知識の受け皿を広げながら再受講をして、理解を深めています。

キミさん
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キミ
瞑想の基礎から応用までを網羅し、マントラを使った瞑想を行う「メディテーション・インテンシヴコース」をヨギー・インスティテュートで担当。瞑想を深めるさまざまなアプローチ法をアドバイス

——前職の経験が、クラスで活かせていると感じるところはありますか?

プレゼン力が、役立っていますね。テキスタイルデザイナーをしていた当時、売り上げにつなげたい生地があるときにマストだったのが、素材の特徴やトレンドの傾向などが、ひと目でわかる資料作成でした。その有効性を知っているので、クラスでも、特に伝えたいことがあるときは、できるだけわかりやすい資料を作り、生徒さんにプレゼンしています。

——監修のアプリ『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』が200 万ダウンロードを超える記録を打ち立てたられましたが、ヒットを生み出すヒケツはありますか?

『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』は意図的に、ヒットを狙って作ったわけではないんです。私がアメリカで受けたプログラムで、意識を覚醒したまま睡眠をするヨガニードラのクラスを体験し「めちゃくちゃイイ!」と思って帰国後、クラスに導入しました。当時、日本にヨガニードラのCDがなかったこともあり、生徒さんからCDを作って欲しいというリクエストがあったのです。生徒さんの要望に答えることが、私の姿勢なので、スタジオ・ヨギーに相談してCDを作ってもらい、それがアプリになり、気がついたら200万ダウンロードになっていました。数字を目標にしたわけではなく、目の前の人に喜んでもらうことを考えたら、結果がついてきた、という感じです。デザイナーの肩書きを目標に就職し、その先のビジョンを描けずに行き詰まった経験があるから、今はポジションを目指すのではなく、自分が追求したいもの、人が喜んでくれるものに真摯に情熱を傾けています。

キミさん
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キミ
瞑想を深めるインドツアーを実施。ポンディシェリの町でヨガのルーツを説明
キミ
南インド最大のシヴァ寺院を眼下に瞑想を指導。生徒さんに教えながら、自身の学びも深めています

——現在、ヨガ指導に加え、イベント出演、書籍の監修など幅広く活躍されていますが、多方面から求められるヨガ講師になるには、ヨガ以外にどんなスキルが必要だと思いますか?

相手の心を開く伝え方だと思います。例えば、ヨガのポーズで手を上げてもらうときに『風を感じながら、手を上げましょう』というと、手を上げる動作の気持ちが変わると思うのです。生徒さんのポテンシャルを高める伝え方がとても大事ですね。それと、ヨガを深めれば深めるほど、自己満足の演説になりやすいので私自身、できるだけ専門用語を使わないように、わかりやすい言葉で伝えることを心がけています。また、お互いの共通言語を見つけることも大切。ビジネスマンを対象としたクラスで『体を柔らかくしましょう』と言っても、体を柔らかくした先に仕事のパフォーマンスが上がると思えないと、魅力を感じてもらえません。伝えたい相手が日常的に使う言葉に、ヨガの表現を言語化することが、ヨガ講師には必要な能力だと思います。

——生徒さんや周囲と信頼関係を築くために、どんなことを意識していますか?

ご縁のある方を喜ばせることですね。それと、ガッツ(笑)。中学生の頃から、自分の使命を見つけて仕事に没頭して生きるのが夢で、それを実践するために、毎日が本当にトライ&エラーの連続なんです。でも、そうして努力し続けてきたからこそ、生徒さんや周囲の方々との間に信頼関係を築くことができ、それが、今の私の自信につながっているように感じます。

キミさん
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キミ
2017年の「オーガニックライフTOKYO」では、太陽礼拝のマントラを指導。マントラが響く神秘的な雰囲気のクラスが展開されました

——今後の目標を教えてください。ヨガを通して、どのように社会貢献していきたいですか?

今まで、インストラクターを目指す人たちに、ヨガの指導を行ってきましたが、これからは、ビジネスマン向けの瞑想プログラムを作るなど、ヨガを知らない人に瞑想をしてもらったり、体がうまく使えない人にヨガのエッセンスを体験してもらったり。瞑想とヨガの裾野をさらに広げ、より多くの人の喜びに貢献したいと思っています。また、そうすることで、育成に関わったインストラクターの活躍の場を広げていきたいとも考えています。

——最後に、ヨガインストラクターを目指している方々にメッセージをお願いします。

「なぜ、ヨガを教えたいと思うのか」を自分自身に問い、ビジョンを明確にすることが大事だと思います。どんなに実力のある先生でも、タイミングなどによってはいつも生徒さんが満員とは限りません。そういうときに気落ちして、活力のないレッスンをしてしまったら、それはヨガではありません。私の場合は「ヨガを通して人の役に立ち、喜んでもらう」というビジョンがあるので、たとえ生徒さんが1人だったとしても、その人が喜んでくれれば、私のビジョンはコンプリートです。インストラクターになって大変だなって思う局面を迎えても、明確なビジョンがあれば、それが心の支えになってくれます。また、自分が進む道に確信を持ち、情熱を持って打ち込むことも大切ですね。そして、瞬間瞬間の感覚を研ぎ澄まし、直感に従って一歩を踏み出す行動力を持つこと。ヨガ業界はまだまだ新しいフィールドなので、前例のない新しいことにチャレンジしてこそ、道が開かれると思います。

キミ
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キミさん
スタジオ・ヨギー/ヨギー・インスティテュート エグゼクティブ・ディレクター。瞑想をライフワークに2000年よりインド、日本、アメリカでさまざまな流派のハタヨガ、ヨガ哲学、呼吸法、瞑想を学ぶ。監修したアプリ『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』は200万ダウンロードを突破。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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Text by Minako Noguchi
Photos by Yugo Numata



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