ヨガ中、肩が痛くなる人へ。知っておきたい肩帯のこと|ヨガ解剖学
ダウンドッグやチャトランガなどをしたとき、肩に違和感を覚えたり痛みを感じたりしたことはないだろうか。肩を安定させて損傷から守るために、肩の筋肉について知っておくべきことを紹介しよう。
肩帯の可動性は、機能的建築の研究対象だ。何かに登ったり、木からぶら下がったり、這うこともできるように設計されているのだから。ただ、今はほとんどの人に、肩関節を一方向だけに使う傾向がみられる。前に出す動きだ。考えてみれば、私たちはコンピュータや携帯電話を使ったり、車のハンドルを握ったり、ショッピングカートを押したりしながら一日の大半の時間を過ごしている。その結果、日常的に可動域全部を使って肩を動かさなくなり、前に出すことの繰り返しで肩関節の一部の筋肉が過度に張り、一部の筋肉が弱くなっている。このため、時間が経つと肩のさまざまな筋肉に慢性的なアライメントのずれが生じて、いずれ痛みや損傷が引き起こされることになる。マットの上で肩関節に体重がかかるときには、特にそれが顕著になる。
肩まわりの組織
最も多い肩の損傷とは
残念ながら、回旋筋腱板(かいせんきんけんばん・下の図を参照)は「怪我」の同義語になっている。最も多い肩の損傷2つと、それが発生する理由を説明しよう。
回旋筋腱板滑液包炎(かいせんきんけんばんかつえきほうえん)/衝突
通常、肩鎖関節のすぐ下を通っている棘上筋腱が過剰に刺激されることによって起こる炎症のことを指す。ダウンドッグ、アップドッグ、チャトランガなど肩に体重がかかるポーズで、繰り返し肩のアライメントが乱れると、棘上筋腱とその滑液包(液体の入った袋。腱の摩擦を和らげる)が、肩鎖関節の下の狭いトンネル状のところで衝突(インピンジメント)。そして、 痛みが生じる。
回旋筋腱板の損傷を防ぐには、プランクなどのポーズで、肩帯全体を安定させることがきわめて重要だ。プランクを効率的に行うと、さまざまな筋肉が動員されて肩帯を安定させる。肩甲胸郭関節のところで肩甲骨を胸郭に対して安定させている主な筋肉は、前ぜん鋸きょ筋きん(肩甲骨を前に押し出し、背骨から引き離す)と菱りょう形けい筋きん(肩甲骨を後ろに引き、背骨のほうに引き寄せる)だ。前鋸筋と菱形筋は正反対の動きをするが、いずれも肩甲骨が羽のように動き他の関節や筋肉に惨事が起きないように働いている。
上腕二頭筋腱炎
上腕二頭筋には2つの腱が付着している。一方は、上腕骨頭を越えて肩甲上腕関節に接続し、もう一方は、烏口突起(肩甲骨の突起部)に付着している。ヨガの生徒が肩の前面に痛みを訴えていたら、2つの腱の一方か両方が炎症を起こしている可能性がある。考えられる原因のひとつが、チャトランガを行うときに肩のアライメントが整っていないことだ。体を下げていくときに、上腕二頭筋の腱は簡単に伸びすぎ、断裂する可能性もある。
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