どうしてリュックを背負っていると肩が痛くなるの?腕や腕に負担がかからないための思考術

 どうしてリュックを背負っていると肩が痛くなるの?腕や腕に負担がかからないための思考術
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私たちは体のどこかに痛みや違和感など、何かしらの負を抱えています。その要因には、無意識に行なってしまう習慣的な動作やその動作に対する思い込みの存在が大きいです。体に入った過剰な力みを解放し、効率的な動き方を探求するアレクサンダーテクニークの実践者が、体にまつわる「負」と思い込みについて考察し、解剖学的な視点を踏まえて、思考から体の使い方を変える方法を提案します。15回目のテーマは「リュックで肩が痛い」です。

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リュックで肩が痛くなるのは視界の外で背負おうとするから

通勤や通学など、かさばるモノを運ぶためにリュックを愛用している人は多いと思いますが、リュックを背負っていると肩が痛くなるものです。肩に負担がかからないように考えられたリュックであっても、長時間背負い続けていれば痛くなることもあるでしょう。モノがたくさん入るリュックが重くなるのは仕方のないことではありますが、問題は重量だけではなく、リュックを背負う前の姿勢とそれに対する思い込みにあるのかもしれません。

背負うとは、背中という視界の外で行なうことだと思っていませんか?

背中を意識し過ぎて、肩と腕を緊張させながら背負っている

背負うという動作から背中を意識するあまり、目に見えないところで無理に背負おうとしている可能性があります。リュックの背負い方として、まず片手で片方のショルダーハーネスを肩にかける人が多いと思います。この始めの動作で、脇を締めて肩を後ろに引きながらショルダーハーネスを肩にかけるということが起こりがちです。そうすると、肩甲骨を背中に寄せてその位置で固め、胴体よりも後ろで腕を動かすことになるので、肩に負担をかけるうえに、そもそも背負うという動作が苦行になってしまいます。

背負い始めでこのように肩や首、脇の筋肉を必要以上に収縮させ、そこに重量のあるリュックを乗せることになるため、時間が経てば負担が増すのは当然のこと。

腕は胴体の前で動くと思いながら視界の範囲で背負う

次の画像を見てください。

腕は胴体の前で動く構造になっている
photo by Mia Hotaka

肩甲骨は真っすぐな背中に平行についていると思われがちです。でも実際には筒状の胴体(胸郭)に沿って、後ろから前に向かってついています。上から見ると「ハ」の字のようです。これは腕が胴体の後ろ側よりも前側で動かす方が、より動きやすい構造をしていることを意味しています。正面を向いて視界に入るくらいまでが、腕がよく動く範囲です。

これを踏まえて、次のように行なってみてください。
1.「腕は胴体の前で動く」と思いながらショルダーハーネスを持ち、視界の範囲で肩にかける
2. もう一方のショルダーハーネスを後ろ手でかけるときも「腕は胴体の前で動く」と思い、途中まででいいので背中に回す手を目で追う

肩甲骨と腕が胴体に対してどのような構造になっているのかを認識するだけで、脳がそれに見合った動かし方をするように体に指示を与えてくれます。そして動作を視界の範囲で行なうことで、必要以上に筋肉を使わずにスムーズに背負うことができます。動作の始まりをちょっと丁寧に行なうだけで、リュックの負担はかなり変わることでしょう。

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ホタカミア

ホタカミア

ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。



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