【解剖学的考察】パソコン作業で腰が痛い!長時間座って仕事をしても腰に負担がかからない「座り方」

 【解剖学的考察】パソコン作業で腰が痛い!長時間座って仕事をしても腰に負担がかからない「座り方」
AdobeStock

私たちの日常生活は様々な思い込みによって成り立っています。しかも思い込みの中には「〜しなければ」と体の可動域に制限をかけ、過剰に力を入れるように無理をさせているものもあります。このシリーズでは何気ない動作の中に潜んでいる思い込みにスポットを当て、それによって起こる体の「負」について、体を効率的に使うアレクサンダーテクニークとヨガの実践者が解剖学を交えて考察。思考から体を変えるという視点で解決策を提案します。7回目のテーマは「座り仕事で腰が痛い」です。

広告

座りっぱなしで腰が痛いのは「しっかり座りたい」と思っているから

腰が痛くなるのは立ち仕事だけに限りません。パソコン作業など、長時間座っている場合も腰は痛くなるもの。座りっぱなしで運動をしていないからとよく言われますが、本当にそれだけなのでしょうか?

そもそも座るとは、全ての動きが止まるものではないと思います。呼吸は常に行われているので、その都度、脊椎は伸び縮みし、全身がわずかながらも動いています。ましてや、パソコンのキーボードを打っているのであれば、指先や手首は激しく動き、それに伴って肘や肩、背中、腰も動くはず。汗をかくようなエクササイズやワークアウトではありませんが、全ての動きを止めて体を傷める行為でもないのです。

それでも長時間座っていることで腰に痛みを感じるのは、腰を痛くするような座り方をしているからです。そんな座り方をしてしまう根底には、「しっかり座って腰を落ち着けたい」とか「座面にしっかりお尻をつけた方が安定する」といった隠れた願望や思い込みがあると思われます。

「しっかり座りたい」と思うと尾骨まで座面に押しつけようとしてしまう

座るという行為は、骨盤の一番下の部分である坐骨が座面に着地すれば完了します。ところが「しっかり座りたい」と思うことによって、坐骨よりも先のお尻の方まで座面につけたくなります。より解剖学的に説明すると、尾骨の方まで座面に押しつけようとして、上半身を押し下げるのです。それによって、骨盤が軽く後傾してしまいます。骨盤が背に凭れかかるような状態で固定され、腰から上でパソコンに向かおうとするため、どうしても腰椎だけでバランスの調整を行うことになります。

特に、キーボードの操作をしているときは指を動かすことに夢中になり、肩や背中まで固めがちなので、腰椎への負荷は増すばかり。多くの人は机に向かう際は股関節を動かしていると思っていますが、実は腰の方がより大きく動いているのです。

「太ももに対して骨盤が自由に動く」と意識しよう

それでは次の写真で股関節の仕組みを確認しましょう。骨盤の一部である深めの皿のような部分(寛骨臼)に、太ももの骨(大腿骨)の一番上にあるボールのような部分(大腿骨頭)がはまり込んでで股関節を形成しています。

パソコンの画面やキーボードに上半身が近づくには、この股関節で動きが起こる必要がります。座っているときは大腿骨が座面に固定された状態なので、実際に動くのは骨盤です。

股関節の仕組み
photo by Mia Hotaka

そこで、パソコンに向かって手を伸ばすときや長時間の作業で腰が痛くなったら、次のように思ってみましょう。
「太ももに対して骨盤が自由に動けるから、パソコンに近づくことができる」

太ももに対して骨盤が自由に動く
photo by Mia Hotaka

そのように意識を変えるだけで、後傾して座面に押しつけられていた骨盤が動き始めます。それまで腰で行っていた重労働も、本来行うべき股関節がちゃんと行ってくれるようになります。上半身も軽く感じることでしょう。

広告

AUTHOR

ホタカミア

ホタカミア

ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

股関節の仕組み
太ももに対して骨盤が自由に動く