【解剖学の視点から考察】息が苦しい…呼吸が浅い人に知ってほしい!深い呼吸をスムーズに行う方法
私たちは体の特定の部分の痛みなど、何かしらの「負」に悩まされながら生きています。多少の不具合は仕方ない、慢性的で気にしないと見過ごしているうちに積み重なってしまうものです。でも、そんな「負」の積み重ねは何気なく行っていた動作の裏で「〜をしよう」「〜でなけば」といった思い込み作用してるせいかもしれません。 この記事では、体を効率的に使うアレクサンダーテクニークとヨガの実践者が、体にまつわる「負」と根底にある思い込みについて、解剖学的な視点を交えて考察します。今回のテーマは「呼吸が浅い」の第一弾です。
呼吸が浅くなるのは吸気で胸を広げようとしているから
人前で緊張したり、やらなければならないことが山積みで焦ったり、あるいは人混みに押しつぶされそうになったり… 私たちの毎日は様々なストレスにさらされています。そんなとき、「呼吸が浅い」「なんか息苦しい」と感じる人は少なくないと思います。そして少しでも深い呼吸をしようと、一生懸命に息を吐き、新鮮な空気を取り込もうとしているのではないでしょうか。
しかしながらその呼吸をする動作そのものが、呼吸を浅くする一因になっている可能性があります。あまり意識はしていなくても、多くの場合、息を吸うときに胸を広げ、息を吐くときは胸をすぼめようとしていることでしょう。そこには「息を吸うときは胸を広げるもの」という思い込みがあります。その思い込みによって、私たちは自分で自分の体を呼吸が浅くなるようにしているのです。
背中を反らせることによって気道が狭まる
上半身の軸である脊椎は前に向かって弯曲(前弯)している頸椎、後ろに向かって弯曲(後弯)している胸椎、また前弯している腰椎、さらに仙骨・尾骨というように、なだらかなカーブを描いています。ところが胸を広げようとすると、肩を後ろに引いて胸を前に押し出す動きになり、背中を反らせています。鼻や口から取り入れた空気を肺へ送る器官である気道は頚椎と胸椎に沿っているため、背中を反らせて頸椎の前弯や胸椎の後弯を歪ませるということは、気道の通りまでも歪めて狭めることになります。
また息を吐くときに脱力しようと肩を下げて胸をすぼめる動きは、吸う時点で反らせて歪めた脊椎をさらに押し下げ、縮めてしまいます。
頑張って呼吸を深めようと思えば思うほど、呼吸しにくい状態に追い込んでいるかもしれないのです。
ウォーミングアップとして吐気で腕を上げ、吸気で腕を下げる
そこで、「息を吐くときにこそ脊椎は伸びる」と思いましょう。息を吐くことで筋肉が弛緩するという観点から見れば、実際に脊椎をつないでいる脊柱起立筋が弛緩するので、脊椎はわずかながらも伸びているはずです。
ウォーミングアップとして、吐くときに両手を上げて脊椎が伸びるように促し、吸うときに両手を下げるという動作を何回が繰り返してみるのもいいと思います。慣れないといつもの吸気で腕を上げる方にに戻ってしまうこともありますが、そうしたら落ち着いて意識的に繰り返してみて。このウォーミングアップをした後は、それまでの呼吸とはちょっと違うのではないでしょうか?
AUTHOR
ホタカミア
ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く