【腕を上げると肩が痛い人はやってみて】四十肩や五十肩でも無理なく上がる「腕の動かし方」

 【腕を上げると肩が痛い人はやってみて】四十肩や五十肩でも無理なく上がる「腕の動かし方」
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体を動かしていてどこかが痛いと感じたとき、大抵は本来の体の構造を無視して、無理に動かしていることが原因です。そこには「この動きをするときはこうするものである」というような思い込みが根付いているもの。そこで、体を効率的に使うアレクサンダーテクニークとヨガの実践者が、違和感や痛みなどの体にまつわる「負」とそこにある思い込みについて、解剖学的な視点を交えて考察します。

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四十肩や五十肩の原因は筋肉に無理をさせているから

年を取ってくると悩まされるのが、四十肩や五十肩です。加齢による肩関節の炎症で、40代であれば四十肩、50代であれば五十肩と呼びます。肩が痛くて腕が上がらない、後ろに腕を回すと痛いといった症状は総じて四十肩、五十肩に当たるようです。

ではどうして肩関節の炎症が起るのかといえば、ひとつには肩や胸、背中の筋肉の酷使にあると思われます。女性は20代以降から筋力が衰えると言われているため、以前と同じように体を動かしているつもりでも、20代の頃よりは衰えている筋肉に無理を強いることになるのは仕方のないことなのでしょう。さらに筋肉に無理を強いる要因のひとつとして、肩に対しての思い込みが関連していると考えられます。「肩は胴体の横にあるもの」と思っていませんか?

「肩は胴体の横」と思うとそれだけで腕の可動性が損なわれる

子どもが遊びに使う人形を思い出してください。多くの人形は胴体に腕が付いていて、つなぎ目である肩の部分で回るようにできていますよね。精巧なものは肘などが動くようにできていますが、基本的なパーツは胴体と上腕骨や橈骨、尺骨に当たる腕で、動くのは解剖学上の肩甲上腕関節に当たる肩のみです。この人形の作りをいつの間にか自分の体に当てはめ、「肩は胴体の横」と思い込んでいることがあります。

また、“良い”姿勢を心掛けていると、背中をまっすぐにしようと胸を張って肩甲骨を寄せ、その結果、腕は胴体の横より後ろで動かすことになります。「背中に羽が生えているように動かす」といったイメージが無意識にあるかもしれません。

いずれにせよ、肩は胴体の横から後ろという視界の外にあり、胸や背中を強張らせた状態で腕を動かしているということになるのです。

肩という概念を忘れて「腕は鎖骨から胴体の前で動く」

ところが、腕は上腕骨や橈骨、尺骨だけではありません。胴体の前側にある鎖骨から始まり、背中側にある肩甲骨を通って、上腕骨へとつながっています。

腕の構造
photo by Mia Hotaka

胸の中央にあるネクタイのような硬い部分(胸骨)の上と鎖骨がつながっているところ(胸鎖関節)を片手で触ってください。そして、空いている方の腕を動かしてみて。腕と共に、触っている胸鎖関節で鎖骨が、背中側では肩甲骨が動いているのを実感できると思います。

腕を上げるときの骨格
photo by Mia Hotaka
腕を引くときの骨格
photo by Mia Hotaka

肩という概念を一度忘れることにしましょう。その代わりに、腕を動かすときには「腕は鎖骨から始まっている」「腕は鎖骨から動く」「腕は胴体の前で動く」と意識してみてください。それによって、胸や背中の強張りが解け、腕の可動性が広がることでしょう。

肩関節の炎症の治療は一朝一夕にはいきませんが、腕に対する認識を改めることで、炎症の要因となる無理を強いる動きを変えることは可能です。思考を通じて四十肩、五十肩を自分で緩和する方法、試してみてはいかがでしょう。

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AUTHOR

ホタカミア

ホタカミア

ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。



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