疲れの原因?夏こそ不足しがち「ミネラル」の上手な摂り方【アーユルヴェーダセラピストに学ぶ】
気温が高く大量に汗をかく夏は、特にミネラル不足に注意が必要です。汗でミネラルが排出されるだけでなく、夏バテで食欲も落ちていると、体は慢性的に栄養不足状態に。なぜミネラルが必要なのか?そしてどうやってミネラルを摂ればいいのか?アーユルヴェーダの暮らし方から学びましょう。
現代人は深刻なミネラル不足?
ミネラルと一口に言っても、様々な種類があり、種類によって全く異なる特徴と働きを持っています。私たちがよく耳にするミネラルは、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウムなどでしょうか。ミネラルは炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミンと並び五大栄養素の一つ。人間の臓器や細胞の活動をサポートしたり、肌や骨の元となっており健康にも美容にも重要な栄養です。
忙しい現代人の食事では、インスタントやレトルト、加工食品を食べる機会が増えていますが、加工食品には鉄、カルシウム、マグネシウムなど、不足しがちなミネラルがほとんど含まれていません。それだけでなく、加工食品の多くにはミネラルの吸収を妨げる「リン酸塩」が添加物として入っています。そのため外食、コンビニ、レトルトに頼ることが多い人はミネラル不足になりがちです。また、日常でよく食べられるパン、パスタ、白米、砂糖などの精製された食品も精製の過程でミネラルが失われるため、それもミネラル不足の一因となっています。
特に夏は1年で最も汗をかきやすく、1日に0.5~1リットルの汗が体外に排出されてるといいます。汗の中には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが含まれていますから、夏こそミネラルの補給を見直してみましょう。
私たちの体を守るミネラルと「ダートゥ」
アーユルヴェーダとは、インド・スリランカ発祥の世界三大医学の1つ。日本ではアーユルヴェーダといえば、オイルマッサージのイメージが強いですが、世界ではホリスティックな健康増進法・病気の治療法として人気があります。ミネラルは、アーユルヴェーダにおいて体の働きをサポートする重要な栄養素です。アーユルヴェーダの概念でダートゥ、という言葉があるのですが、ダートゥとは日本語でいうと「体の組織」のことで、「血漿」「血球」「筋肉」「脂肪」「骨」「骨髄」「精液」の7つの組織が含まれます。簡単にいうと、血液や筋肉、脂肪や骨などの体の「7種類のパーツ」のことを、ダートゥ、と総称し、そのダートゥに含まれる血液や筋肉、骨に密接に関わるのがミネラルです。
アーユルヴェーダにおいては、この7種類のダートゥを浄化し、質を高めることで体の内側から健康を整えることを目指しています。そのため、ミネラルを適切に摂取・吸収・活用し、この7種類のダートゥを浄化し、質を高めることで、体の内側から健康を整えることができると言えます。
ミネラルが、体内でダートゥとどのように関係するか、例を挙げてご紹介します。例えば、ダートゥの1つの血球ですが、人間の体内には約3グラムの鉄分が存在し、そのうちの70%は血液中の赤血球を作っています。そのため鉄が不足すると貧血になるのですが、女性は月に一度、月経で大量に血液を失うため、成人女性の25%は貧血を発症していると言われます。そのため、日頃から鉄不足にならないように摂取することが必要です。あるいは筋肉の働きにはカリウムやマグネシウムが働いていますが、カリウムは体内で細胞を正常に保ったり血圧を一定に保つのに役立っており、不足すると、だるさや疲れやすさ、むくみが起こります。また、マグネシウムが不足すると筋肉のけいれんや、動脈硬化、偏頭痛などが起こります。
闇雲にサプリで摂るのは逆効果。吸収率が重要…その理由は?
「不足するならサプリで摂ればいい」と考えがちですが、ミネラルはそう簡単にはいかない栄養素です。まず、ミネラル全般が体内に吸収されにくい栄養素なので、サプリで飲んでも実際に吸収されているか?というと必ずしもそういうわけではありません。また、ミネラルには適量があり、過剰摂取すると健康を害することがあります。要は、ミネラルはバランスが重要なのです。ミネラルには「拮抗作用」というものがあり、組み合わせによってはお互いの吸収を阻害することがあります。例えば代表的なものは亜鉛と銅です。「亜鉛が増えると銅が減る」という現象が起こるため、「1つの不足している栄養素を補えばいい」という考えだと、拮抗するミネラルの方が逆に不足してしまうかもしれないのです。
そこで重要なのがアーユルヴェーダの「消化力」という考え方です。アーユルヴェーダでは、「栄養素を分解・吸収する消化力」と、「その栄養素を利用してダートゥ(体の組織)を作る消化力」と、2つの消化力を高める治療を行います。東洋医学でいう、栄養素の「吸収率」と「利用率」を高める治療と言い換えられます。いくら口からサプリで栄養を入れても、それを吸収して利用できないと意味がないので、アーユルヴェーダでは多くの場合、あらゆる治療の際に、まず優先して消化力の治療を行います。栄養素が吸収・利用できていないのにどんどん摂取すると、排泄されずに体内に残り、内臓の負担になります。
自然の恵みを食事からいただき、消化効率をアップ!
では、消化力を高めながらミネラルを効率よく吸収するにはどうすればいいでしょうか?まず、重要なのが普段の食事で、少量ずつでもいいので、しっかりミネラルをとっていくことです。ミネラルはバランスが重要ですから、何か一つのミネラルを補給しようとしても逆効果になることがあります。であれば、毎日の食事で様々なミネラルを少しずつ摂り、摂取「量」ではなく「吸収率」を高めることを意識すると良いです。コンビニ食、精製砂糖を使ったお菓子を控えることもミネラルの吸収率を高めることに役立ちます。そして、青野菜、フルーツ、ナッツ、海藻など、ミネラルが含まれる様々な「自然の食べ物」をできるだけ質の良いものを選んで食べます。
特に現代人が不足しやすい鉄・銅・亜鉛・マグネシウムなど、それぞれのミネラルがどういう食材に含まれているかというと、鉄はひじきや小松菜、赤身肉に含まれます。銅はピュアココア、干しエビなどに含まれます。亜鉛はかぼちゃの種や牡蠣、マグネシウムはほうれん草、かぼちゃの種に含まれます。しかし、これらの食材を偏って食べるのではなく、具沢山の味噌汁にしてみたり、デザートはピュアカカオやナッツを使ったヘルシーなおやつにしてみたり、と、食べ方を工夫して取り入れてみてください。また、消化力を高めるには、運動をして早寝早起きをすることが重要です。「何を食べればいいか?」だけを考えるのではなく、栄養素をちゃんと吸収して使える「強い体」を作るよう意識してみてください!
AUTHOR
アカリ・リッピ―
アーユルヴェーダ著者・セラピスト。本場スリランカでアーユルヴェーダ医師のもと修行。帰国後、1万人の体質改善コンサルをしながら講座で実践的なアーユルヴェーダを指導。著書「アーユルヴェーダが教える、せかいいち心地よいこころとからだの磨き方」 (三笠書房)5刷。都内でサロン経営。大手企業の営業マンだった時の経験を活かし、「忙しい人でも無理なくできる」現代的なアーユルヴェーダを発信。
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