【ココロが辛い時の処方箋】楽に生きられるようになる!世界最古の医学「アーユルヴェーダの智慧」

 【ココロが辛い時の処方箋】楽に生きられるようになる!世界最古の医学「アーユルヴェーダの智慧」
Yoko Toyama

自由に外出ができず、大切な人にも会えない日々に心と体が疲れていませんか。どんな変化も受け入れて快適に生きるために、世界最古の医学アーユルヴェーダから自分自身を整える方法を学びます。

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心身のバランスを保ち幸せに生きるための智慧

ヨガと同じサーンキャ哲学をベースにしたアーユルヴェーダ。何を目的とした、どんな智慧なのかアカリ・リッピーさんに伺ってみました。 
アーユルヴェーダにおける人生の目的とは、ヨガと同じモークシャ(悟り)です。そのために八支則を実践し瞑想を深めていくのがヨガ。一方のアーユルヴェーダは、モークシャに至るための土台となる〝健康〞にフォーカスし、『幸せな人生を生きる知恵を得ること』を目指します。アーユルヴェーダの考える健康は、人の生命を構成する肉体・精神・魂・感覚器官が健やかで、肉体と心身のバランスがとれている状態。健康増進のために食事やマッサージやヨガを行い、病気の治療だけでなく健康な心身を病気から守る養生法を実践します」
そして肉体と精神のバランスの目安となるのがドーシャグナ
「肉体にはドーシャという3つの生命エネルギー(ヴァータ・ピッタ・カパ)が、精神にはグナという3つの性質(サットヴァ・ラジャス・タマス)があり、すべてがバランスよく働くと元気に。こうした考えのルーツをたどりサーンキャ哲学を紐解くと、この世界はプルシャプラクリティという2つのエネルギーが結びついて誕生したと語られています。万物の元であるプラクリティは3つのグナを備え、そのバランスが崩れたときに万物の創造が始まり、自然界を構成する五大元素(空・風・火・水・地)がつくられたのもこのとき。ドーシャは五大元素の組み合わせであり人も含め万物は、空と風の性質のヴァータ、火と水の性質のピッタ、水と土の性質のカパで構成されています」
社会の混乱が続く今、アーユルヴェーダ的に物事を見ると、不安に振り回されず穏やかに生きられるとアカリさん。 
「人は物事に過去の記憶など、多くの情報を結びつけて勝手にイメージを膨らませ、過剰に不安に思ってしまいがち。アーユルヴェーダの教えでは、思考で考えすぎるのではなく、感覚器官=五感をよく使い、直感や感覚的に心地よいものを選ぶことをすすめています。すると、不安を感じる自分を客観的に見ることができ、自分の思考が外からの情報に惑わされなくなります」

体と心を健康に整える6つの実践法

アーユルヴェーダのケアは日常的に一人でも行えるのが魅力。バランスを崩しやすいときこそ自分自身と丁寧に向き合い、よりよい状態にコントロールして心身の健康を保って。

1. 五感を刺激して幸せホルモンを出すセルフマッサージをする

肌を丁寧にマッサージして五感を刺激し、生命エネルギーの流れが良くなると幸せホルモンのセロトニン分泌が活性化されます。コロナ禍の今は五感を目覚めさせるセルフマッサージが大事。というのも、人と会う機会が少なくなって誰ともしゃべらず、不安な感情を一人で抱えがちに。加えて自然との触れ合いも減ったことで心が疲れやすくなっています。そんなとき優しく肌に触れてあげると、感情がデトックスされて心がふっと楽になるもの。マッサージに使うのは、老化防止の効果も高い抗酸化物質が豊富で「オイルの女王様」と呼ばれる太白ごま油がベスト。キュアリング(加熱処理※)したオイルで、頭、足、耳をケアすると全身マッサージと同じ効果が得られます。※小鍋などにごま油を注いで弱火にかけ、料理温度計で100℃に熱して 1~10分加熱。完全にさめたら遮光瓶などで保存。1カ月で使い切りを。

行い方●朝、音楽やアロマなどの香りのない静かな空間で行って。マッサージ後は、入浴がベストですが、難しい場合は、頭は夜の入浴前に、足と耳は朝行い、蒸しタオルで拭きとればOK。

楽に生きられるようになるアーユルヴェーダの智慧②
Illustration by  Yoko Toyama

頭のマッサージ

眉上から指8本分のところにあるエネルギーポイント(気の出入り口)を確認。その部分にスプーン1杯分のオイルをつけて右手でこすって刺激。

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スプーン1杯分のオイルをつけて右手でこすって刺激
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爪を立てないように指の腹を頭皮に密着させて、耳の上から頭頂方向へジクザクにマッサージ。

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耳の上から頭頂方向へジクザクに
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今度は頭頂から耳の方向へ。側頭部をまんべんなく刺激したら後頭部も同様にジグザグにマッサージする。

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側頭部をまんべんなく刺激したら後頭部もジグザグに
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最後は、頭頂から外側方向に向けて指の腹で頭皮を動かすようにジグザグを描きながらマッサージ。

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頭頂から外側方向に向けて指の腹で頭皮を動かすように
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耳のマッサージ

耳穴も含め耳全体にオイルを塗る。耳に沿って指の腹で上から下へ円を描きながらマッサージ。下から上も。各1回。

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耳に沿って指の腹で上から下へ円を描きながら
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両耳を親指と人差し指で付け根からつかみ、引っ張りながら前回し、後ろ回しを2回ずつ繰り返す。

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引っ張りながら前回し、後ろ回しを2回ずつ
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耳たぶを中指と人差し指で挟み、顔のエラの部分にある咬筋を押しながら上下に5回動かす。

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顔のエラの部分にある咬筋を押しながら上下に5回
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親指と人指し指で耳を折り曲げる&解放するを5回。痛みを感じたら疲れが溜まっているサインなので念入りに。

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親指と人指し指で耳を折り曲げる&解放するを5回
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足のマッサージ

右内くるぶしの下側から足裏にかけて左親指の腹でマッサージ。外くるぶし側も行い反対側の足も。各3回。

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親指の腹でマッサージ
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両手の親指の腹で指の骨と骨の間を、1本ずつ上下にしごくように3回ずつ刺激する。

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両手の親指の腹で指の骨と骨の間を、1本ずつ上下にしごくように3回
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親指から小指まで順番に、指の付け根を持って1本ずつ左右に各1回まわす。次に指の間に人指し指を入れて左右1回ずつ半回転。すべての指の間を同様に。

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指の付け根を持って1本ずつ左右に各1回まわす
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両手の親指の腹を使い、足裏の真ん中上部のくぼんだところから八の字に3回しごく。最後に拳で足裏全体を上から下に5回マッサージ。

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足裏の真ん中上部のくぼんだところから八の字に、足裏全体を上から下に
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2. 物事を真っすぐ見れるようになるために消化力を高める

不安やイライラがなく物事を冷静に見られる状態を保つには、腸内環境が鍵になります。なぜなら、脳や心の状態を安定させるセロトニンなどの神経伝達物質の多くは腸でつくられるから。運動不足などでアグニ(消化力)が低下し、体の中にアーマ(未消化物)が溜まると腸内環境が悪くなるため、代謝を上げるしょうがやシナモン、大腸のクレンジング作用があるターメリックを料理に取り入れて消化力をアップ。アーマを溜めない生活を意識しましょう。

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しょうが・シナモン・ターメリック
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3. 朝=誕生を祝福するために目覚めたら縁起の良いものを見る

人の細胞は日々再生を繰り返し、肉体と精神も成長を続けています。朝起きたらまず縁起の良いものを見て昨日と違う新しい自分の誕生をお祝いし、前向きな気持ちでスタートすると一日がハッピーに。縁起が良いものとは、すなわち活力が湧くもの。部屋に飾った季節の花やペット、子どもの笑顔など自分が元気になるものなら何でもOK。なるべくネガティブな情報に触れないために、朝一番にスマホを見るのは控えましょう。

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4. 溜まった毒素を取り除くために朝の舌磨きで毒素を取り除く

体の中に溜まった毒素は便や尿だけでなく、舌からも排出されることを知っていますか?寝ている間、体の中ではその日食べたものの大掃除が行われ、消化されずに残った毒素が翌朝舌の上に現れます。朝鏡を見たとき、舌に舌苔 (ぜったい)という白っぽい苔のような付着物があれば毒素が溜まっていたサイン。朝一番に、白湯を飲む前に舌のクレンジングを行いましょう。行い方は大きめのスプーンを裏返して使い、くぼんでいる側で舌苔がなくなるまで、優しくなでるようにこすり取ります。前日の毒素をきちんと取り除くことで、体も心もきれいな状態でスタートでき、免疫力もキープにもつながります。

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5. イライラ、不安にならないためにオージャスの多い食べ物を摂る

体を病気から守るエネルギーを「オージャス」と言います。体からオージャスが減ると病気になりやすく、不安、悲しみ、イライラなど負の感情にもとらわれがち。オージャスは食べ物から補うことができるので、普段から牛乳、ギー、炊き立てのご飯などオージャスを含む食事を心掛けましょう。新鮮な果物や野菜をはじめサットヴァな質の食事もオージャスが豊富なのでおすすめ。それでも気分が回復しない場合は、アグニ(消化力)が弱く十分に栄養を吸収できていないのかも。そんなときは、消化力アップのためにヨガで体を動かし腸の働きを高めて。オージャスを増やすには、十分な栄養と消化力の両方が鍵になります。

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炊き立てのご飯・牛乳・新鮮な野菜や果物
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6. 自然と調和し、つながれるように他人の幸せを祈る

人は自分が独りぼっちと感じると生きるのがつらく思えてきます。そんなときは、家族や友人、その日仕事で関わる人などの幸せを願って、祈ることを習慣にしてみましょう。祈ることを通じて他者とのつながりを実感できると孤独感から解放されるもの。人と自由に会えない時期だからこそ、祈りでつながりを感じ、他者の幸せを願うという目的を持つと、自分の生きる意味も見えてくるはず。また、思いやりを忘れて身勝手な振る舞いに走ったときも、祈ることで心を整えられます。その教えのベースにあるのは、「人は本来、自然の一部」というアーユルヴェーダの考え方です。自然と調和するには神を愛する心を持つことが大切。神に祈ることで「いちばん偉いのは人間」というエゴが消え、まわりの人と支え合って生きやすくなります。

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Illustration by  Yoko Toyama

教えてくれたのは…アカリ・リッピーさん
アーユルヴェーダセラピスト。英国アーユルヴェーダカレッジを卒業。その後本場スリランカのアーユルヴェーダクリニックで経験を積み、現在は都内でサロンを主宰。

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Illustrations by Yoko Toyama
text by Ai Kitabayashi
yoga Journal日本版Vol.74掲載

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