エビデンスを得て、日本の学校教育に「マインドフルネス」を届けたい|瞑想サロン・MELONの挑戦

エビデンスを得て、日本の学校教育に「マインドフルネス」を届けたい|瞑想サロン・MELONの挑戦
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南 舞
南 舞
2021-05-11

マインドフルネス・サービスを提供する、株式会社Melonが【日本の学校教育にマインドフルネスを導入したい】という想いのもと、新たな取り組みを始めます。日本の学校教育を変えるかもしれない、この壮大なプロジェクトについて、株式会社Melon代表・橋本大佑氏にお話を伺いました。

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マインドフルネスは、人間関係や自分を大切にするといった社会的・感情的なスキルの改善にも効果がある

――なぜ今日本の子供たちに「マインドフルネス」が必要だと思われるのでしょうか?

橋本大佑さん(以下、橋本さん):近年、欧米を中心に世界各国で、子どもたちの学校の授業にマインドフルネスが導入されています。日本ではまだそうした試みがないばかりか、マインドフルネスが自体が認知されていないことを疑問に感じていました。例えば、アメリカでは2015年あたりから多くの公立小学校でマインドフルネス・プログラムの導入が始まり、CARE (Cultivating Awareness and Resilience in Education) という教師がマインドフルネスを学ぶプログラムがあるそうです。その他、インドやイギリスなどでも、子供たちのメンタルヘルスの改善、ウェルビーイングの向上を目的にマインドフルネスが取り入れられています。

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日本の子どもたちも学校内外問わず、さまざまなストレスと向き合っていますが、こうしたストレスへの対処や困った時に『助けて』とヘルプを出す方法など、心のケアについての方法を学校ではこれまでほとんど教えてもらえていませんでした。マインドフルネスは、人間関係や自分を大切にするといった社会的・感情的なスキルの改善にも効果があるという研究結果もあります。学力はもちろんですが、人生の中で本当に大切なことはそういったことなんじゃないかなと思っています。

「マインドフルネス」とは、自分の体や心の状態に気づくこと

――そもそも「マインドフルネス」自体を知らない人もいると思うのですが、どのようなメソッドなのでしょうか? 

橋本さん:マインドフルネスとは、『今この瞬間の経験に、評価や判断をせずに意識的に注意を向けることにより、現れる気づき』のことです。これだとちょっと難しいので『自分の体や心の状態に気づくこと』と思うとわかりやすいかもしれません。天気に例えると、晴れの日もあれば、曇りの日、雨の日と、いつも同じではないですよね。自分の体や心も同じ、日によって変化があります。

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そういった変化に注意を向け、自分の状態に気づく。例えば、『今、自分は悲しいんだな、怒っているな』というように。自分の中で感じた気持ちにフタをするのではなく、受け止めてあげるだけで心の健康度はすごく変わると思いますよ。意外と自分の気持ちにフタをしてしまう人は多くて、例えば『怒ってない』と言っているのに、表情はイライラしていたりとかね。気持ちと行動が一致していないですよね。それを続けていくと、心の奥の方に感情が溜まり心身に不調を起こしやすくなるので、時には自分の気持ちに向き合ってあげることが大事だと思います。こうしてお話ししていると、スピリチュアルな感じがして苦手意識を感じる方もいるかもしれませんが、マインドフルネスは脳科学の分野で認められ欧米を中心に広まりつつある脳と心のトレーニング方法です。

もともとは仏教に起源がありますが、そこから科学的に裏付けられた部分を抜き出し、宗教性をなくしたプログラムなんですよ。多くの研究結果からマインドフルネスの実践がストレスや不安の軽減、注意力の向上、感情のコントロールが上手になる、対人関係を改善し、思いやりを育むことができることなどが証明されています。GoogleやYahooなどの企業研修でも取り入れられているのは有名な話です。だから、スピリチュアルが苦手な人にこそ勧めたいですね。

大人だけでなく、子供たちにも「マインドフルネス」を

――日本の小学校に「マインドフルネス・プログラム」を導入するプロジェクトを開始されたそうですが、このプロジェクトが誕生した背景を教えてください。

橋本さん:MELONは大人向けに、このマインドフルネスのサービスを提供してきましたが、大人だけではなく、子どもたちにも届けられないか? とずっと考えてきました。

新型コロナウイルスの影響で、子どもたちの自死やうつ状態の訴えが急増しているのを目の当たりにし、小学生の子どもを持つ親としても胸を痛めています。変えることが難しいこの環境下の中で、子どもたちがストレスとの付き合いかたを学び、自ら対処していくスキルを学んでいくことが大切だと考えています。そこでMELONとしてできることは何か?と考え、弊社のマインドフルネス・プログラムを小学校へ無償提供し、プログラムの導入と効果測定をさせていただける小学校を募集することにしました。このプロジェクトで得られた研究結果をもとに、将来的に学校教育の中にマインドフルネス・プログラムを導入できるよう準備を進めていきたいと考えています。

子供たちにもマインドフルネスを
小学校でのマインドフルネスの実施風景

――小学校へのマインドフルネスの無償提供を思いついたきっかけはあるのでしょうか?

橋本さん:知り合いから、とある公立小学校の校長先生を紹介してもらったことがきっかけです。様々な面白い取り組みしていらっしゃる方で、マインドフルネスにも関心を持ってくださり依頼を頂くことができたので、オンラインや対面を用いながら複数回マインドフルネスの授業を行いました。参加した子供たちからは、『すっきりした!』『気持ちいい!』という感想をもらうことができました。

他にもNPO団体で教員の働き方改革をしている方より、子どもたちはもちろんのこと、教員のセルフケアとして、マインドフルネスを取り入れるのも良いのでは?とご意見を頂きました。マインドフルネスが学校の先生たちにも良いだろうということは分かっていますが、先生たちは多忙で、すでにいろんなことに手いっぱいなので、負担なく実行できることって何だろう……と考えていました。そこで思いついたのが教室という場で子供たちと一緒にやってもらうこと。今考えているのが、1回10分以内の動画を2ヶ月間見ながら実践してもらうこと。アニメーションを使って、子供たちが見たくなるような、でもマインドフルネスの本質と実践を体験してもらえる、そんな動画になる予定です。

今回は動画でのプログラムということもあり、ある程度抽象的な言葉の表現が理解できる4年生から6年生のお子さんを対象に行う予定です。私自身、小学生の子供がいるので、小学生の子どもたちにどんな声がけがわかりやすいのか、どんな表現にするのかなど色々考えながらプログラムを作っています。

子供たちにもマインドフルネスを
小学校でのマインドフルネスの実施風景

マインドフルネスを継続的に実践していく中で、少しずつ心が楽になっていく感覚があった

――橋本さんがマインドフルネスに出会ったきっかけを教えてください。

橋本さん:もともとスポーツが好きで、ラグビーなどをずっとやってきました。その影響もあって、体に対する関心も強かったです。【ウェルネス】という言葉が流行る前から、睡眠、食べ物、運動などを気にする、いわゆる健康オタクで(笑)。だから昔から体のケアは手厚くやってきました。

ある時、個人的な悩みを抱え、軽く鬱になった時期がありました。約15年、外資系の投資銀行などでお金を運用する仕事をバリバリやっていたので、『自分はタフだ』と思っていたのに、仕事が手につかない、ご飯も食べられない状態で。心療内科にお世話になった時期もありました。『体のケアのことは分かるけど、心のケアって分からない。どうすればいいんだろう?』と思い、色々方法を探していく中で、マインドフルネスに出会いました。最初は正直、マインドフルネスに対して『スピリチュアルな感じなのかな?』と苦手意識を持っていましたが、エビデンスがあるものだということを知り、それならと思ってやってみることに。継続的に実践していく中で、少しずつ心が楽になっていくのが分かりました。

友人の死……マインドフルネスを広めなければ、という想い

橋本さん:その後、自分は元気になっていきましたが、今度は仲の良い友人が鬱病を患い自殺してしまったんです。悲しみでいっぱいなのと同時に『友人に対して、何かできることあったのでは?』と、自分に問いかけ続けていました。

当時は30代後半で、『このまま今の仕事で働き続けていていいのか』と、自分の将来について考えている時期でもあったので、それについても悩みましたね。自分自身が心の不調を経験し、心をケアすることの大切さを感じたことや、友人の死を無駄にしたくないという強い想いから、『マインドフルネスを世の中に広げるサービスを提供していく』と心に決めました。周囲からは、『マインドフルネスをビジネスにするのは難しい』と心配される声もありましたが、『頑張ればできる!』と信じて疑わなかったですし、当時は『どうしたらマインドフルネスをする人を増やすことができるのか?』という想いしかありませんでしたね(笑)

アメリカのマインドフルネス・スタジオへの視察。そこで見たものとは?

橋本さん:マインドフルネスのサービスを提供するにあたり、アメリカに視察に行きました。アメリカはマインドフルネスの文化が盛んだと聞いていたので。マインドフルネスのスタジオに行ってみたら、年齢性別問わず、とても盛り上がっていました。マインドフルネスが特別なイベントではなく、ライフスタイルの中に心のケアとして根付いている。それがとてもかっこいいなと思って。日本にもそういったかっこいいスタジオを作り、マインドフルネスをライフスタイルの一部に取り入れてもらおうと決めました。

そこで2年前より株式会社Melon(メロン)を立ち上げました。会社を始めた当時は、週に何回かマインドフルネスのレッスンを提供するという形を取っていましたが、コロナ禍を機に去年の今頃からオンラインスタジオを立ち上げました。今となっては『こっちが正解だったかも』って思います。オンラインであれば、住んでいる場所に関係なく、低価格で継続することができますよね。

今では日本を越えて、海外からも参加して頂けるようになりました。MELONの魅力は、メディテーションサロンとして人々が集まるコミュニティ機能になっていること。人間は個では生きられない生き物なので、関係が遮断されることが毒になってしまうと私は考えています。特に、このコロナ禍で外出が制限される中で、孤立・孤独は避けなければいけない問題のひとつ。そういった中で、オンラインでも集まって話せること、人の気配を感じることに価値があると感じています。

エビデンスを得て、日本の学校教育にマインドフルネスを届けたい

――今後のプロジェクトの展望について教えてください。

橋本さん:今回のプロジェクトは小学校高学年が対象になりますが、今回の効果測定をもとに、未就学児から大学生までなど幅広い層にプログラムを提供していきたいと思っています。ライフステージで感じられることや、価値観なども変わって行きますからね。

また、海外のように、先生たちがマインドフルネスを学び、子どもたちに教えていくというスタイルも作れたらと思っています。学校教育に何かを取り入れるとなると、重要なのは『エビデンスがあるかどうか』です。今回の効果測定でエビデンスが得られれば、学校教育へのマインドフルネスの導入を、国や教育委員会、学校に押しやすくなります。そうなったら、学校教育でマインドフルネスをする日はそう遠くはないかもしれません。そのためにも、今回のプロジェクトに多くの学校に参加して頂きたいと思っています。日本の多くの子供たちにマインドフルネスを届けるために、ぜひご協力をお願いします。

子供たちにもマインドフルネスを
小学校でのマインドフルネスの実施風景

プロフィール:橋本 大佑さん

橋本大佑さん
株式会社Melon 代表取締役CEO。早稲田大学卒業後、15年間の外資系金融機関での勤務を経て、2019年に株式会社Melonを設立。日本初のオンライン・マインドフルネスのプラットフォーム「MELON ONLINE」や法人向けのマインドフルネス研修、個人向けの講演など各方面でマインドフルネスを広める活動を継続中。MELON ONLINE

【小学校へのマインドフルネス導入に伴い、導入先小学校を募集しています】

実施時期 : 2021年5月下旬~2021年12月下旬
対象校 : 全国の小学校
対象学年 : 小学校4~6年
実施方法 : プログラム実施期間の8週間、 対象児童は1日10分以内のプログラム動画を学校で視聴するとともに、 マインドフルネスを実践します。 効果測定はプログラム前後に行います。
プログラム提供 : MELON (プロジェクトの概要はHPに記載)
応募方法 : 指定の申し込みフォームよりご応募ください。

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