無理なポジティブ思考が仇に【慢性化する心の疲れ】どう対処すべきか|精神科医・川野泰周さんに聞いた
相手の感情、怒りをトーンダウンさせてやろうとすると、なかなかうまくいかないものです。まずは相手と関わっている自分自身が今、どんな状態になっているのかを客観的に観察してみることが効果的です。
――客観的な視点を持つことが、自分はもちろん他者の心の疲れにも有効なのかもしれませんね。
川野さん:自己洞察することで他者が見えてくるんです。自分自身を観察することを深めていくと、自分を通して人間を見る目が養われていくので、相手に対しての共感性が上がります。これは、心理学的な実験でも証明されていますが、マインドフルネスを続けている人は共感性や洞察力が高いんです。例えば、相手の表情からその人が今どんな感情を持っているのか、それをより正確に言い当てることができるようになるんですね。
テレワークが主流になった今、画面上からの情報で相手の心を読み取るというのはすごく難しい。脳のエネルギーを使います。マインドフルネスを習慣にしてゆくと、そういう限られた情報のなかでも、非言語的なメッセージを読み取れるようになっていきます。共感性はマインドフルネスのコアになるものだと私は考えています。
無理にポジティブに考えようとせず、ありのままの自分を受け入れる
――他者との関わりという部分では、周りのネガティブな思考に巻き込まれないようにしよう、ポジティブに考えなくちゃダメだと思ってしまう人も少なくないのかなと感じます。
川野さん:これは私の持論なのですが、本来の心のメカニズムから考えると無理にポジティブになろうとすると、かえってネガティブになってしまうものです。ポジティブに考えようとするのではなく、あるがままの自分を受け入れるような姿勢、そういった心のスタンスを身につけることで、自然とポジティブな心の状態も取り出せるようになっていく…というのが、マインドフルネス的な見解です。
近年、ポジティブ心理学に注目が集まっていますが、根本的にネガティブな状態にある人には実践が難しいものです。ポジティブ心理学自体は大変画期的で、多くの人に希望を与える心理技法です。でも極端にネガティブな思考に支配されてしまっている方は効果を感じられず、挫折してしまうケースもあります。「こう考えればポジティブになりますよ」ということをやっても、全然ポジティブになれないわけですから。やればやるほど自己嫌悪になってしまう。高い教材を買って、有名な先生の講義も聞いたのにポジティブになれない……と自分を責めてしまうんです。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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