研究結果が示唆!幸福感は50歳までにゆっくりと下降する?「どんな年齢でも幸せになる方法」とは?
50代
50代にはたくさんの楽しいことが待っているとローチは言うが、それがすぐにはっきりわかるわけではない。新たな年代に入るときには、自分のことを姿のない、重要でない存在のように感じる人も、若さにとりつかれる風潮の中で、自分を「邪魔者」のように感じるという不満をもらす人もいる。体型が変わり、自分を自分として認められないという不平を持つ人もいる。女性の中には、閉経周辺期の症状や、出産が可能な時期が正式に終わったことを知って苦しむ人もいる。私には、大変そうなことだと感じられるが、スパロウはそうは考えない。彼女は60代は、パワフルで変革をもたらす数々の経験の機会が訪れると言う。自分のケアをしながら50代に入っていければ、身体的なチャレンジを切り抜け、より大きな文脈の中で他者を養い、思いやりを持って堂々と真実を語る自信を見いだす人生のフェーズに、ずっと楽に入っていくことができる、と彼女は言う。
この年代は、ヨガ哲学では、物質的なことをそれほど気にかけず、思索とひとりの時間にフォーカスする第三のステージ、ヴァナプラスタにあたる。この年代は、森の住人期、リタイア期と呼ばれることもある(孫の誕生と関連づけられることが多い)。
心身の面において、不眠、ホットフラッシュ、疲労感、不安などの閉経近辺の不快な症状と闘うには、ヨガが役立つ。とりわけ、前屈、ねじり、後屈は副腎を落ち着かせた後、活発にする手助けとなる。『 Yoga for Healthy Aging: A Guide to Lifelong Well-Being』の著者である医師、バクスター・ベルは、長期間にわたるヨガや瞑想実践者の脳波は普通の人より落ち着いており、意識的な意思決定や記憶を司る脳の部位の働きが良くなり、体からの微細なメッセージと調和する力が高まって、それに対して受け身でなく、積極的に応えようとする力が強まることが研究で示されている、と話す。つまり言いたいのは「プラクティスを続けよう」ということだ。
60代とそれ以降
多くの人にとって60代、70代、80代は、身体症状への不満が長々と続く。骨粗鬆症、心臓疾患、腰や膝の痛み。これらがエンドレスに続いていくようなこともある。もちろん、人生のこの段階は、それよりはるかに多くの意味がある。ヨガ哲学では、これはサンヤサとして知られる。この時期、意識はより深く内側へと入り、神との一体化へと向かっていく。多くは仕事を辞め、自分の持ち物を手放すようになり、思索と他者への奉仕により多くの時間を費やすことを選ぶ。
UCLAの心理学部の教授であり、人間の記憶、認知、加齢による認知機能の変化にフォーカスした独自の研究を行うアラン・カステルは、年齢を経た後の年月がU字曲線のトップにくるのには、生物学的な理由が絡んでいる可能性があると考えている。実際に、私たちの脳は、年齢を重ねるにつれ、ネガティブなことよりもポジティブなこととつながり、思い起こすものだと『Better with Age: The Psychology of Successful Aging』の著者でもあるカステルは言う。これは「ポジティブ・バイアス」と呼ばれる。カストルは、ハッピーな顔と悲しい顔の2つを見せられた時、若者は悲しい顔を見るのに対し、年を重ねた人はハッピーなほうをより長い時間見つめることを示した、ローラ・カールスタンセンの研究を参考にしている。
「これは記憶、そして気分に影響を与える。ポジティブなことに意識を向けていれば、そういう事柄が記憶に留まりやすいだろう」。この段階(どんな段階も)でバランスを見つけ、自分や他者とのつながりをより強く感じるためには、自然の中で過ごす時間を多く取り、自然のリズム(日の出とともに散歩する、日没とともに休息に入る)に合わせた生活をし、他者への奉仕をすることをキストガードは勧めている。ヨガをし、瞑想し、できるかぎり笑おう。人に手を差し伸べ、ともにプラクティスし、つながり、教え、サポートし合えばいい。
どんな年代にも幸福を
当然のことながら、ヨガのプラクティスをし、マントラを唱え、リズムに合わせて呼吸をしたからといって、幸福が保証されるわけではない、とヨガ指導者であるクリスティ・サリヴァンは言う。「プラクティスをすれば、幸せと喜びが魔法の粉のように降ってくるだろう、と期待して出かけていくようなら、決して幸せにはなれないわ。そういう気分は得るものではなく、すでに持っている気分を感じ取ることなのよ」と彼女は言う。「人生のマジックがなくなった理由を考えているのなら、それは私たちが、内側にあるものを表現するのをやめ、自分の外にそれを探してるからなのよ」
では、そのマジックはどうやったら取り戻せるのだろう? その方法は「何かを得よう」とするのではなく、献身と感謝の気持ちを持って人生に向き合うことだと、ヨガニードラの指導者スタンレイは言う。行動に期待値(これを終えたら1から10までの間で、どれぐらい幸せになっていたいか?というような)をつけるようなら、経験の価値が変わってしまう。「何かを探し求めても、そのとおりにはならないのよ」彼女は言う。それは、マインドが考えるのに忙しいからだ。「真の満足を感じるためには、流れに身を任せ、自分は支えられていることを知らなくてはいけないの」
これは、キリングスワースによる現在に集中することについての研究と、再び結びつく。ハーバード大学の博士課程時代に、キリングスワースは幸福感を追跡するアプリを開発し、たとえ、古きよき日々や、未来のよりよい日々を夢想するのであっても、あちこちにさまようマインドは、不幸なマインドであることを見いだした。今の瞬間にい続けるとき、人は最も幸せだということを発見したのだ。
―― 今ここで。今の瞬間を。
渋滞に巻き込まれるような、あるいは40歳になったばかりの人の目前にU字曲線が立ちはだかるような、不愉快な状況だとしても。
文●エイミー・ヘッケルはライターでコロラド州ボルダー在住。詳しくは aimeeheckel.com を確認しよう。
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