「食後の眠気」を撃退するヨガの呼吸法【ヨガと睡眠#11】

 「食後の眠気」を撃退するヨガの呼吸法【ヨガと睡眠#11】
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井上敦子
井上敦子
2019-09-04

『なかなか寝付けない』『眠りが浅い』等、睡眠に関する悩みを抱えていませんか?日本では、一般成人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているといわれています。多くの人が抱える睡眠に関する悩み。ヨガの実践が、その睡眠の質を上げることは広く認知されている事実です。ここでは、ヨガ的観点から睡眠の質を向上させていく方法をご紹介していきます。今回は番外編、どうしても眠気を覚ましたい時、シャキッとしたい時におすすめの呼吸法です。

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睡眠不足の日、「食後」に眠くなるのはなぜ?

『睡眠不足でも乗り切らなきゃいけない一日』、そんな日を誰しも経験されたことがあるのではないでしょうか?自らの意思に反して眠気が襲ってくる。その眠気を抑えようと奮闘することは、とても辛いものです。そして、その眠気が特に強くなるのは食後だといわれています。

それではなぜ私たちは、食後に一番眠気を感じるのでしょうか?その答えは、自律神経の働きにあります。私たちの自律神経は、覚醒して活発な状態にあるときには交感神経が優位に働き、ゆったりとリラックスしているときには副交感神経が優位に働いています。食事を摂ると食物を消化する必要があるので、内臓の動きは必然的に活性化されますが、その内臓の動きを活性化するのは副交感神経の仕事です。

つまり、私たちは食事を摂ることで、意識せずとも副交感神経のスイッチをオン!しているのです。副交感神経が優位に立つと、自ずとリラックス状態になります。結果的に、食事の後に眠気を感じやすくなるのです。寝不足の日は特に、食後に眠気が襲ってくるのは当たり前のことだといえます。

現代は、交感神経が優位に立ちやすい生活を送っている方が多いので、副交感神経が優位に立つこと自体はとても良いことです。食事後の眠気も、リラックスするべき時を身体が教えてくれているのですから、その本能に従うことが理想的。しかしながら、『乗り切らなきゃいけない』現実を目の前に、眠気が強く集中力が低下してしまうのはやはり考えものです。今回の【ヨガと睡眠】では、自律神経の働きにフォーカスしながら、眠気の強い局面を上手に乗り切るための呼吸法をご紹介していきます。

交感神経を優位に立たせる呼吸法「スーリヤベーダナ」

頑張らなくてはいけない局面で、眠気が強い。そんな時に優位に立たせたいのは、覚醒を司る神経=交感神経です。ヨガの練習で行う呼吸法(プラーナヤーマ)は、自律神経を調整する働きがあるといわれています。私たちは通常、自律神経の働きによって無意識に呼吸を繰り返しています。ヨガの呼吸法は自らの意志によって、この自然に繰り返されている呼吸を意識的にコントロールする作業。意識的に呼吸をコントロールすることで、通常の状態では調整することの出来ない自律神経を意識的に調整していくことが可能なのです。

ヨガの側面から、呼吸と自律神経に関してもう少し掘り下げてみましょう。ヨガの考え方では、背骨に沿って通るスシュムナーと言う生命エネルギーが通る管(ナディがあり、その周りを螺旋状に陰のエネルギーを通すナディ(イダ)と、陽のエネルギーを通すナディ(ピンガラが、対称的に巡っているといわれています。そして、右鼻腔は陽のナディであるピンガラへ、左鼻腔は陰のナディであるイダへ繋がっています。そして、右鼻腔での呼吸は陽のエネルギーを通し心身を活発にする交感神経を刺激し、左鼻腔での呼吸は陰のエネルギーを通し心身をリラックスさせる副交感神経を刺激します。

この作用を使い、右鼻腔で吸う呼吸を繰り返すことにより、交感神経を刺激していく呼吸法を【スーリヤベーダナ】と呼びます。スーリヤベーダナは、交感神経を刺激するため、体内の熱を高め、消化力を促進するといわれています。また、低血圧の改善にも役立ちます。頑張らなくてはいけない局面、眠気を取り去りたい時、この呼吸法は役に立つといえるでしょう。

「スーリヤベーダナ」を実践してみよう!

それでは、実際にスーリヤベーダナを実践してみましょう。

スーリヤベーダナのやり方

あぐらで座る(オフィス等で行う場合は、椅子でも可)。背筋を伸ばし、骨盤を立てましょう。

②右手を鼻の前に持っていき、両鼻から大きく一息吸って、深く吐き出します。

③右手の薬指と小指で左鼻を押さえ、右鼻から4秒かけて吸います。最初にたくさん吸いきらず、4秒かけて細く長く吸いましょう。

④左鼻を押さえたまま、親指で右鼻も押さえ、1秒とめます(この息を止める作業が苦しく感じる方は、息を止めずに行いましょう)。

⑤左鼻を開き、8秒かけて吐き出します。吐くときも最初にたくさん吐かないように、8秒全部かけて細く長く吐き切りましょう。

⑥5〜10セット程度行い、最後に両鼻の呼吸に戻します。

スーリヤベーダナを行う上での注意点

・呼吸法は本来、先生の元で正しく指導を受けることを推奨されるヨガの練習法です。無理をせず、心地良く感じられない場合はすぐに練習を中止しましょう。
・ここでご紹介したのは、単純化したスーリヤベーダナの練習法です。息を止めるクンバカを含めた正式な練習方法は、先生の元で学びましょう。

ライター/井上敦子
15年間の会社員生活を経てヨガ講師に転身。不眠症をヨガで克服した経験を持つ。リラックスが苦手だった経験から、ヨガニードラを通じてリラックスの本質を伝えるクラスを展開。週に8本のヨガニードラのレギュラークラスを持つ他、指導者養成講座やコラム執筆等ヨガニードラの普及に努めている。Instagram:@yoga_atsuko.inoue

 

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