生まれつき柔軟性がある人ほどケガしやすい? ヨガに筋トレが欠かせない理由
生まれつき柔軟性がある人ほどケガへの注意が必要
フォーブスは、生まれつきヨガが難なくできるような生徒たち――過可動を来すほど柔軟性のある人たち ――はケガをしやすい、と指摘する。このような生徒たちこそ、無意識にポーズを深めすぎてケガをしないために、とくに関節まわりの筋肉を鍛え、意識を高める必要がある。ウェイトトレーニングは、柔軟性がありすぎる生徒にとって、強さと筋肉への意識を培う効果的な方法となるだろう。それによって、柔軟性も強さも均等に発揮しながら、調和のとれた状態でポーズを練習できるようになるのだ。「常にバランスよく柔軟性を身につけたいと思っています。ただ柔らかくても強さがなければバランスを欠いています。逆に、強さだけで柔軟性がないのも同様です」
ヨガ+筋トレの相乗効果
ヨガの練習とウェイトトレーニングの組み合わせは、加齢とともに低下する体力の維持にも役立つ。無数の研究結果が示すように、運動不足による筋肉量の減少は40歳から始まる。座ってばかりの生活を続ければ、70歳になるころには筋肉の30%を失うだろう。一週間に2、3回ウェイトを持ち上げる機会を持てば、筋肉を鍛え、骨密度を増やし、身体のバランスを保つことができる。ヨガを定期的に練習しても同様の効果はあるが、新しい試みで身体に刺激を与え、停滞期を避けることも大事だ。
イッポリティが証明したとおり、日頃のヨガの練習にほんの少しのウェイトトレーニングを加えるだけで、より力強くポーズに取り組むことができる。とくに、生まれつき身体が柔らかく、なかなか身体が鍛えられない人はなおさらだ。「よりパワフルにチャトランガができるようになったし、立位のポーズでもスタミナがついたと感じます」とイッポリティは言う。また、自分のハムストリングが弱いことにも初めて気づいたという。これらすべての気づきがモチベーションとなって、彼女はしばらく避けていたポーズにも再び 取り組むようになり、ホームプラクティスのマンネリも解消できた。
もしもジムに行くことが耐え難いほど退屈に思えるなら、あるいは、ヨガの練習をさぼりたい気分なら、ヨガの要素をトレーニングルームに持ち込んだフォーブスの取り組みを 試してほしい。意識的にウジャイ・プラーナヤーマ(勝利の呼吸)を行うことが一番のポイントだ。「ヴィンヤサの原則を、ウェイトリフティングに取り入れたのです」とフォーブスは言う。「それぞれ息を吸うタイミングと、吐くタイミングがあります。例えば二頭筋カールを行うときは、息を吸って準備をし、息を吐きながら腕を自分のほうに引き寄せます。もう一度吸って、吐きながら腕をゆっくり下ろしていきます」
呼吸法と合わせて、フォーブスは2種類のバンダ(締め付け)――ウディヤナ・バンダ(飛翔のバンダ)とムーラ・バンダ(根の締め付け)――も教えている。体幹深部の筋肉 を目覚めさせて、背骨をサポートするためだ。フォーブスは、多くのウェイトリフターたちが、主に背筋と腹筋の表層筋を使っていることに気づいた。そのまま続ければ、背中を 痛めかねない。そこで、この微細な腹筋運動を、ウェイトルームに取り入れることにしたのだ(バンダの経験がない場合は、ウディヤナ・バンダから始めると一番わかりやすいだ ろう。詳しい行い方は次のページ「ウディヤナ・バンダで腰痛とケガを防ぐ」を参照)。仕上げにフォーブスは、アスリートたちに、身体のアラインメントについて自分たちが知っているすべての知識を駆使してウェイトを持ち上げるように促す。
イッポリティは、ヨガでの身体への気づきは、ジムでも役に立つと認めている。「ヨギとしての身体への意識は、自分がどれだけ進歩できるかを決定づける資源となります」と イッポリティは言う。
現代にあったスタイルの模索
イッポリティは今でも定期的にジムに通い、パーソナル・トレーナーの指導を受けている。ウェイトトレーニングが身体のバランスを維持し、ヨガの練習を向上させることを 実感しているからだ。イッポリティは、近年ヨガが、フラフープやゴルフ、音楽、ダンスなど、あらゆる分野と融合している点を指摘する。彼女の視点からすれば、これらすべて は、ヨガが私たちを取り巻く世界と常に関わりながら進化し、生き残ってきた表れだという。5000年前、ヨギたちは一日中コンピューターの前に座っていなかった。もしも今日の肉体的な負担に効果的に対処できて、習慣づいた悪い姿勢でマットに立たなくてもすむ方法があるなら、こんな議論は起こらないだろう。「私たちは、他の手法との異花受粉を行っているのです。いいことでしょう? そのおかげで練習全体の深みや効果が増すのだから」とイッポリティは言う。「ひとつのアラインメントを見つけるために、伝統的なヨガに忠実であり続けるか、あるいは、上達や進化のために柔軟に他の色々な方法を試すか、ということなのだと思います」
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